立川吉笑「乙の中の甲」“理屈っぽい”ことが誉め言葉になる。論理的思考で惹き付ける魅力

表参道ラ・パン・エアロで「立川吉笑ひとり会」を観ました。(2022・01・15)

来年には真打なんだと思う。去年暮れに、「渋谷らくご」で2021年の「渋谷らくご大賞」と「創作らくご大賞」のW受賞を果たした。これまでに受賞していなかったのがおかしかったくらいで、実力も折紙付きだ。

前座を2年経たずに、二ツ目に昇進して、「立川流に吉笑あり」と言われ始めてから随分と経った。積極的な勉強会やデジタルの試みをして、常に前を向いて精進して来たのは落語ファンなら皆、知るところだろう。

最近でも、スタジオフォーで即興の三題噺の会に何度も挑戦したし、「渋谷らくご」でも同様に三題噺を創った。鯉八、昇々、太福と4人で「ソーゾーシー」というユニットを組み、全国ツアーを敢行、CDも発売された。ノリに乗っていると言ってもいいだろう。

この日は「明晰夢」「手動販売機」「乙の中の甲」の三席。吉笑さんの落語の最大の特徴は「理屈っぽい」ことである。この表現はネガティブに使われることが多いが、そうではない。「理屈っぽさ」を徹底させることで、理路整然とした「理屈っぽい」笑いを生み出している。その「理屈」をマシンガンのような喋りで展開するから、聴き手はある種の麻薬患者的な心地よさを感じるのだ。

「明晰夢」。八五郎と熊五郎が寄席に行って、聴く落語が八五郎と熊五郎が寄席に行く噺で、その落語の中の寄席で展開する落語がまた八五郎と熊五郎が寄席に行く噺で…マトリョシカのように永遠に続く展開に、え!?となるが、冷静に考えると、一番最初に出てきた八五郎と熊五郎も立川吉笑が喋っている落語の登場人物なわけで。

「手動販売機」。省エネで電気を使わないために、飲み物の自動販売機の中に社員が入って、お金を受け取り、商品を出す。新入社員はそのマニュアルを販売機の中で上司に伝授され、実行する。リアリティーを大事にするために、商品を出すやり方に一工夫、二工夫加えるのが優秀な社員。なんでも便利になってしまった世の中を皮肉でくるんだ楽しい一席だ。

そして、「理屈っぽさ」の極みは、トリで演じた「乙の中の甲」だろう。熊五郎が八五郎に貸した金を返してくれという。ところが、八五郎は「お前は返してくれとは言わないはずだ。俺の中のお前は言わない」と反論し、「俺の中のお前」に会ってくるが、「やっぱり、返さなくていいと言っていた」。

なんだかわけがわからない熊五郎だが、貸した金は返せと何度も繰り返すうちに、じゃあ、「俺の中のお前」は返すと言うに違いないと、今度は熊五郎が「俺の中のお前」に会いにいく。ところが、留守だった。何度行っても、留守。これには困ってしまう。

屁理屈という言葉があるが、そういう段階を超越してしまっている世界がそこにある。「屁理屈」は「屁理屈」で対抗しなくちゃいけない。それも論理的思考からするとありなのかもしれない。