桃月庵白酒「御慶」爆笑かつ安定感ある高座は確かな技術力に裏打ちされている

本多劇場で「桃月庵白酒独演会」を観ました。(2022・01・04)

「家見舞」「親子酒」「御慶」の三席。白酒師匠の技術力の高さに感服する。

特に「御慶」は他の噺家さんで僕は聴いたことがないが、難しい噺だから演じ手が少ないのかもしれない。それを白酒師匠は「落語らしい落語」として演じ切るからすごいと思う。

夢判断で「鶴の千八百四十五」だと興奮する八五郎が、富くじを買い求めるために女房の半纏を無理やり脱がして質に入れ、こしらえた一分で湯島天神に行くところから、八五郎という愛すべきキャラクターが活写されている。

思いこんだ番号が売れてしまってなかったが、占い師に「梯子は下から上に昇るときに使うものだろう」と諭され、八五郎は「そうか!」と再び湯島天神へ。「見料を」と呆気にとられる占い師の表情もいい。

で、千両富が当たった八五郎。即金で800両受け取ると、袂に入れるだけだと入り切らないので、股引きを脱いでそこに入れ、背負って帰宅する様子も実に愉しい。

で、八五郎がしたいのは、新年の挨拶回りというのだから、親近感が湧く。甘酒屋という古着屋で裃を購入し、大家さんから教わった「御慶」と「永日」の二つの言葉を振り回して、町内中を挨拶回りする様子が漫画でいい。ギョケーィ!の甲高い発声がこの噺の肝かと思わせる。なんだか、聴き手のこちらまで幸せな気分になってくる。

「東京かわら版」1月号の巻頭インタビューが、白酒師匠だったが、「ネタおろしはしないのですか?」という質問に、「大概の噺は二ツ目前期で仕込んでしまったので、後はその棚卸し、蔵出し」というようなことを答えていた。

なるほど、白酒師匠の技術力の高さは二ツ目時代の研鑽にあったのか。真打になって、桃月庵になって、喜助時代の面白さが一段とパワーアップしたと思っていたが、「二ツ目で仕込み、真打で棚卸し」というホップ、ステップ、ジャンプ!はそこに秘密があったのか。

してみると、この「御慶」などはその象徴といえるだろう。