【鈴本初席第3部】コロナ3年目の寄席、そして演芸界はどこへいくのだろう

鈴本演芸場で「正月初席第3部」を観ました。(2022・01・03)

ストレート松浦 ジャグリング/鈴々舎馬るこ「平林」/古今亭志ん橋「からぬけ」/ぺぺ桜井 ギター漫談/宝井琴調「赤垣源蔵 徳利の別れ」/柳亭燕路「幇間腹」/米粒写経 漫才/桃月庵白酒「つる」/五街道雲助「勘定板」/柳家小菊 粋曲/柳家権太楼「志ん橋をよろしく」(仮)/中入り/太神楽社中 寿獅子/春風亭一朝「湯屋番」/江戸家小猫 ものまね/柳家喬太郎「華やかな憂鬱」/林家正楽 紙切り/柳家三三「権助提灯」

緊急事態宣言が解除され、寄席もほぼ通常営業に戻っての正月興行である。芸人さんに言わせると、「お客さんが戻っていない」。この鈴本第3部に限って言えば、満員札止めだったのだが、それは特別で他の寄席や時間帯などは客席が淋しいそうだ。

お正月興行は、一年に一回、初詣と同じ感覚で「寄席に行ってみるか」というお客さんもいて、いわば「縁起物」として賑わってきた。一人の持ち時間が短くても、「これは顔見世ですよ」ということで、華やかなお正月の恒例行事だったと言ってもいい。コロナ以降、そこにお客さんが来なくなってしまった。

去年の末廣亭12月中席夜の部は二階もいっぱいになるほどの連日大入り満員だった。神田伯山先生が主任の興行である。この日の鈴本第3部もそうで、三三師匠が主任で、喬太郎師匠や権太楼師匠が出る芝居なので、満員札止めなのだろう。

これはホール落語にも言えて、一部の人気者はチケットが即完売になるけれど、そのほかの落語会など演芸の会はお客様の入りが芳しくない。大手プロモーターも苦戦していると聞く。

端的に言えば、芸人の人気の格差がコロナによって広がったということだ。もともと演芸ファンというのは限られた層なのだが、その演芸ファンがコロナ以降、行く寄席や演芸会を厳選、取捨選択しているという現象が起きている。

これは他のエンターテインメントにも言えることで、コロナが収まるのがいつになるのか先行き不透明だが、当分この状態が続くのかもしれない。

この日の感想に戻ろう。馬るこ師匠の歌にしないと覚えられない平林、面白い。森昌子、前川清、氷川きよし…。古典に一ひねり加えるのが上手だ。米粒写経、久しぶりに聞いたが、スピード感があって笑いが途切れない。居島一平先生の何をやっても平泉成というのに爆笑。本能寺の火元取り扱い責任者というのも可笑しい。

白酒師匠の「つる」に落語の技術力の高さを感じた。前座噺を特に現代的くすぐりも入れずに、人物を演じることで笑わせられるのはすごい。権太楼師匠の漫談、僕は仮に「志ん橋をよろしく」としたが、巣鴨のババアの「ホルモン打った?」から絶好調。補聴器のテレビショッピングの件も爆笑で、何十回も喋っているうちに完成したのだろう。「ジャンバラヤ」みたいな定番になりそうだ。

小猫先生の「初春のウグイス」での登場がお正月らしくていい。干支の虎を豪快に鳴いた後、「来年から3年は地獄なんです」(笑)。ヌーも鳴いてくれて、嬉しい。喬太郎師匠、オミクロンの語感について。イヤミが「オミクロンでざぁます」と言いそう、機動戦隊オミクロンなんていうのもありそう。

正楽師匠が「獅子頭」の注文に苦戦。「素直に獅子舞と言っていただければ簡単なんですが」。三三師匠の「権助提灯」、久しぶり。本妻の意地と妾の立場の激突、なーんてことではなく。旦那が二人の女性に翻弄されている様が可笑しい。それをシニカルに見ている権助の存在も良かった。