【2021年回顧】春風亭一之輔の51席

下北沢シアター711で「下北のすけえん」を観ました。(2021・12・31)

2021年の聴き納めである。去年のこの会は、僕は配信で聴いたので、2年ぶりだ。この日は「うどんや」と「甲府ぃ」の二席。数えてみたら、今年は一之輔師匠の高座は51席聴いた。うち、2席は配信だから、生の高座は49席。

いつもトップは喬太郎師匠なのだが、今年は77席。しかしながら、配信で聴いたのが29席あり、生の高座は48席。だから、生の高座だけで言うと、一之輔師匠の高座を一番聴いたことになる。

印象に残った高座を振り返ってみる。

1月の本多劇場の「おせつ徳三郎」通し。中入りを挟んで、「花見小僧」と「刀屋」だったが、おそらくネタおろしだったのではないか。最近の一之輔師匠は、ネタおろしでも相当高いクオリティで高座に掛ける。本人は納得いっていないかもしれないが、僕のような素人の観客からすると、十分に質が高いと思う。この「おせつ徳三郎」もそうだった。

勉強会である真一文字の会で掛けたネタも、印象に残っているものが多くある。8月の「鼠穴」、9月の「豊志賀の死」、10月の「猫定」と大きなネタを見事に磨きをかけて聴かせてくれた。これらのネタも過去にネタおろしして、久しぶりに掛けたものもあり、そのときよりも一之輔カラーに染めて、素敵な高座にしているのが手に取るようにわかる。

11月に三夜連続でよみうり大手町ホールでネタおろしした高座も良かった。「うどんや」、「二階ぞめき」、「淀五郎」。「淀五郎」は12月の練馬で再演を聴いたし、「うどんや」はこの日のシアター711で再び聴いたが、さらに良くなっているのがよくわかる。日々の研鑽があるのだろう。

12月に同じ練馬で聴いた「芝ノ浜所縁初鰹」は、一之輔師匠の新作の中で「団子屋政談」と並び傑作だと思うが、これも実に愉快だった。一之輔師匠がノリノリで演じているのが客席に伝わってくる。これほど至福な時はない。

一之輔師匠いわく、今年も800席以上高座に上がったそうだが、自らご機嫌で演じている高座に巡り合えるのが、一之輔ファンとして一番幸せなときである。