【池袋演芸場 12月下席昼の部】「富Qまつり」が年末の恒例興行になってきた

池袋演芸場で「12月下席昼の部」を観ました。(2021・12・22)

主任の三遊亭白鳥師匠が「富Qまつり」と銘打って、8日間(だだし、24日は代バネ一之輔)トリで自身の新作落語「富Q」を演るという興行である。演目名からもお察しの通り、古典落語の「富久」を下敷きにした白鳥ワールド満載の作品を毎日演じる。僕は初めて行ったのであるが、好評のようで、今年で4年連続の恒例になっているそうだ。

そういう「お祭り」興行だから、他の出演者も新作ばかりかというとそうではなくて、古典もあってバランスが良く、落語ファンなら誰もが楽しめる流れになっている。平日の昼間だというのに、9割は座席が埋まっていて、なるほど毎年の恒例になっているのも頷けた。

弟子の三遊亭ぐんまさんは栃木、群馬、茨城の北関東3県が争う「新・北三国志」で客席を大いに沸かせる。高座をリングのように暴れ回るかの如く元気いっぱい、やる気満々の高座は空回りすると悲惨だが、ぐんまさんの場合は噺運びも上手だし、噺の作りも巧みで、将来が楽しみな若手二ツ目である。

三遊亭丈二師匠はお決まりの小田原丈時代の名前の由来から、水疱瘡になったときの経験、尿管結石で救急車で運ばれたことなど、ずっと漫談を続け「持ち時間がきました」と高座を降りたのには閉口したけれど、いつも寄席でこの人に当たると大体こうだから慣れた。あとでネットで調べたら、「119」という演目名が付いているようだ。

柳家喬之助師匠の「寄合酒」で口直しをした後、風藤松原の漫才はレベルの高さを感じた。知的な言葉遊びが心地いい。センスの良さに加えて、二人の掛け合いの独特のテンポが良いのだと思う。これからどんどん伸びていく期待感を持たせる高座だった。

馬遊師匠は「猫の皿」。冒頭、「昨日、来た方はいますか?」と客席に訊いたら、一人手を挙げる人がいたので、「本当は誰もいなかったら、昨日と同じネタをやろうと思っていたのだけど」と言っていた。ちなみに、前日は「手紙無筆」だったらしい。

柳家小ゑん師匠は先日亡くなった圓丈師匠の作品「フィッ!」を。小ゑん師匠はよくこの噺を寄席で掛けるが、圓丈師匠らしい不条理が混じった秀作だ。改めて、三遊亭圓丈という落語家が新作落語の新しい形を開拓し、後進の新作落語家に多大な影響を与えた功績に敬意を表したい。

中入り後は、弁財亭和泉師匠の「匿名主婦 只野人子」。今年春に真打に昇進し、ますます独特の新作世界を構築しているのを頼もしく思う。この噺は女性にしか作れない切り口の新作落語だが、彼女の守備範囲はもっともっと広く、そして現代社会の風刺が効いているのがいい。10日間主任を務める興行もそう遠くはないだろう。

古今亭文菊師匠は「千早ふる」。師匠独特のフラが生き、定番の噺も新鮮に笑えるからすごい。途中、千早太夫と竜田川の再会のところで、浪花節が入るのが最高に面白かった。

アサダ二世の奇術を挟み、トリの白鳥師匠「富Q」。変わった新作ばかり掛けるので寄席を出入り止めになり、極貧生活を送る金銀亭Q蔵の喜怒哀楽。池袋西口一番街が火事になり、演芸場に見舞いに行って詫びが叶うが…。なけなしの300円で買った宝くじをめぐって泣き笑い。破天荒で荒唐無稽な白鳥落語が、ひとつの人情噺に聞こえた。