【プロフェッショナル 楽天イーグルス・田中将大】大好きな野球だから、どんなことがあろうと戦い抜く(2)
NHK総合の録画で「プロフェッショナル 仕事の流儀 楽天イーグルス投手・田中将大スペシャル2021」を観ました。(2021・12・06放送)
きのうのつづき
原点に威力あるボールが投げられない。ならばと、メジャーで磨いた変化球で勝負しても、日本球界特有のある技術に阻まれる。ファウルだ。
元メジャーリーガーの斎藤隆は語る。
兎に角、日本のバッターは選球眼とか、ファウルにする技術というのがあるので。
西武の呉念庭との対戦。10球粘られた末、最後はスライダーで三振を奪った。しかし、次の打席。前の打席で何度も投げたスライダーを打たれた。
引き出されているんです。思うつぼで。ファウル、ファウルで球数を増やして、「甘くなるよ」って。どれも決め球になっていないということですよ。どの変化球をとっても、真っ直ぐあっての変化球なので、まずは真っ直ぐを復活させてほしいですね。
田中が語る。
アメリカに行って7年間必死に向こうの野球にアジャストしていかないといけなかった。慣れないといけなかった。こういう野球だっていうのを。それがあって、そこに今、慣れていた状態でまた日本に戻って来て。野球自体が全然違うんですよね。
今シーズンの田中の戦い。それは外角低めのストレート、原点を取り戻すこと。そうすれば、メジャーで磨いた変化球も生き、より強くなれる。いわば、シン・マー君への模索だ。
柔軟性の改善に取り組み、投球フォームの立て直しを図る。そして、何度も投げ込みをおこなった。だが、体に染みついているフォームを変えるのは容易なことではない。
試行錯誤が続いていた、この日の試合。日本ハム戦。出だしは最悪だった。ストレートが捕まり、初回から失点。すると、2回。田中がある行動に出た。マウンドの立ち位置をおよそ15センチ左側に変えた。そして投げたのは、変化球のツーシーム。ストレートに見えて、バッターの手元で右に曲がる。
15センチ左に立つことで、バッターが打ちにくい軌道を通る、より効果的な球になる。このツーシームを軸に、息を吹き返し、2回以降をしのいだ。田中の田中たる由縁はここにある。
田中が語る。
調子は悪いけど、その中でもベストを尽くす。うまくいかない日もありますけど、その中でも何があっても最後まで戦い続ける、戦い抜くってことは絶対にやめちゃいけないなと思う。チームに対しても失礼だし、試合を観に来てくれているファンの方々にも失礼。どんだけボロボロになりながらでも、最後まで戦う。そこは絶対やめちゃいけないなと思う。
そんな田中の姿を見守っている人たちがいる。宮城県南三陸町にある居酒屋「鷲巣」(イーグルス)。店主の三浦さんはかつて家族でクリーニング店を営んでいたが、10年前の震災で流された。そのとき、懸命に戦う田中の姿を見て、もう一度やり直そうと思った。
震災のことを考えてどうしようかなと。そういうのも、ぶっ飛びましたね。あの優勝は力になりましたね。
常連客も言う。
被災地にとって、マー君って希望の星だったんだと思いますよ。町が全部潰れてなくなってしまって、家が流されたんだ。唯一、ナイターのときだけ、楽天を見て、今の現状、今の現実をちょっと逃避できる。逃げられる時間が楽天の試合だったんだよね。
シーズン前半戦、最後の登板。田中は7回1失点の力投で勝利。チームは2位で前半戦を終えた。
つづく