【プロフェッショナル 新浪剛史】さらけ出して、熱く語れ(下)

NHK総合の録画で「プロフェッショナル 仕事の流儀 コンビニ・チェーン経営者 新浪剛史」を観ました。(2006年10月19日放送)

きのうのつづき

新浪は危機感を募らせていた。毎日寄せられる加盟店からの声。年を追うごとに厳しさが増してくる。

新浪には数年前から温めていたプランがあった。幹部会議を召集し、これまでに話したことのないそのプランを、突然口にした。

看板の色を変える。

驚くべき提案である。31年間使われてきた青の看板は、ローソンのシンボルだ。それを変えることは、過去のやり方と決別することを意味する。

2日後、四国の松山へ。加盟店の賛同は不可欠である。松山ブロックのオーナー10名が集まったが、看板の色に関しては強固に批判的だった。新浪はそれ以上、何も言えなかった。前に進むべきか。撤退すべきか。

3日後、厳しい報告が寄せられた。収益がだんだん落ちてきている。従来の加盟店だけでなく、新規店舗まで落ちている。

新浪は毎日、仕事帰りに他社のコンビニに立ち寄る。日々変わる品揃え。新たに並べられる独自の開発商品。どのコンビニも客の心を掴もうと懸命だ。生き残るためには、どうしたらいいのか。

新浪の決断に会社の未来と加盟店16万人の生活がかかっている。

まもなく、1つの方向に踏み出すことを決めた。看板の色を変える。そのために、加盟店のオーナーを説得する。看板も品揃えも一新した実験店を作ることを提案した。

生鮮食品を幅広く取りそろえ、主婦や高齢者を呼び込む。この実験店でオーナーたちに改革のモデルを示す。選んだ看板の色はオレンジ。

新浪は話す。

ものすごく怖い。不安もあるし、失敗したら、どうしよう。人生で初めてじゃないかな、こんなに意思決定に苦しくなるなんて。

自ら一つの仕事を課した。加盟店のオーナーを自分の言葉で説得する。

会社発祥の地、大阪へ。歴史もあり、オーナーたちの会社への愛着も深い。説得できなければ、プランを白紙に戻す覚悟だ。正面から切り込んだ。

オーナーたちの青い看板へのこだわりは想像以上だった。新浪は不安を赤裸々に語り出した。こうなりたいという夢をもって経営をしたい。皆さんの家族に良かったねと言われたいじゃないですか。そのためには、今のままじゃ駄目なんですよ。

場の空気が変わり始めた。夢があるから頑張れる。初めて賛同の声があがった。

一週間後、徳島へ。実験店を訪ねた。オレンジ色の看板を見つめる新浪。店内には主婦の姿が多かった。まずはここはスタート。もう少し時間がかかる。

全国を回り、オーナーへの説得を続ける。2年以内に2500店舗の看板と中身を変えること。試練はこれからだ。

新浪にとって、プロフェッショナルとは。

ぶれなく信じて率先するという人だと思います。信じたことを常にぶれずに率先する。常に率先してやる人。それがプロフェッショナルだと思います。

ローソンは一部のナチュラルローソンや100円ローソンを除いて、看板は現在も青色のままだ。それでも、新浪さんの「ぶれない」マインドは生きているような気がする。