【NHK新人落語大賞】桂二葉「天狗刺し」米朝一門縁の噺を独自にアレンジして見事な優勝

NHK総合の録画で「NHK新人落語大賞決勝戦」を観ました。(2021・11・23)

令和3年度の新人落語大賞は上方の桂二葉さんが「天狗刺し」を演じて、見事に優勝した。50年近い歴史を誇る、若手落語家の登竜門で女性落語家が優勝するのは何と初めてのことだそうである。ちなみに1972年、第一回は当時の柳家小三太さんが「時そば」を演じて優勝している。のちの柳亭小燕枝師匠、去年改名して柳家さん遊になった師匠である。

桂二葉さんが優勝したというのが実に感慨深い。去年、笑福亭羽光師匠(当時は二ツ目)が優勝した決勝戦にも二葉さんは出場していた。そのとき、審査員の柳家権太楼師匠が二葉さんに対し、「ネタはどれくらい持っているのか?」と訊き、言葉に窮すると、「稽古を積んで持ちネタを増やしなさい」と厳しい助言をしていたのが印象に残っている。

二葉さんもそのことはよく覚えていて、それが今回は5人の審査員が全員満点をつけるというパーフェクトな優勝を遂げた。そして、権太楼師匠も「一年でこんなに成長するとはすごいですね。よく頑張った」と優勝を讃えた。二葉さんも「何より権太楼師匠に褒められたことが嬉しい」と泣きそうになった。

演目の「天狗刺し」は米朝師匠が掘り起こした上方ネタである。研究熱心な米朝師匠はサゲの「わしは五条の念仏尺(ざし)だ」の念仏尺の言葉が分からず、あちこち調べて回って、竹の物差しであることがわかったというエピソードのある米朝一門縁の珍しい噺だ。

今回、米朝師匠の孫弟子に当たる二葉さんは、難しいサゲをわかりやすく変えて、決勝戦に臨んだのが功を奏した。同じ一門の雀太さんから色々と指導を受けたとも聞いている。雀太さんもまた、二葉さんとは違う形でサゲを変えて演じている。米朝マインド、ここにあり。

二葉さんの良かったところは、牛肉のすき焼きは珍しくないから、天狗のすき焼き屋をやって一儲けしようと考えるアホな男のテンションの高さと、それを聞いて「天狗をどこで仕入れるんだ」と返す甚兵衛さんの冷静さのギャップがまず面白い。

で、天狗の本場は鞍馬だろうと、男は出向いて行く。たまたま奥の院で深夜の行を終えた坊さんを男は天狗と間違えてしまう。扉を開ける音が、天狗の鳴き声だ!とする男の発想の奇抜さが何とも可笑しい。狂気だ。

で、その坊さんをふん縛って、京の町に降りてくる。坊さんを担いでいる男を見て、町の人たちはビックリ。男も自分が坊さんを担いでいるのにビックリして、「すきやきじゃなくて、天ぷら屋にするわ。衣を着ている」でサゲ。

堂々と演じる二葉さんの高座はとても頼もしいものだった。全員満点に納得の一席だった。