【落語一之輔三昼夜】春風亭一之輔「二階ぞめき」ヒートアップする一人三役が実に愉しい!
よみうり大手町ホールで「落語一之輔三昼夜」仲日夜の部を観ました。(2021・11・16)
春風亭一之輔師匠のこの日のネタおろしは「二階ぞめき」だった。これも廓噺の範疇に入るのだろうか。吉原が好きで好きで堪らない若旦那の噺だが、実際に花魁と遊ぶのではなく、素見(ひやかし)が好きという噺。これがいかにも落語という感じで僕も好きな噺だ。
一之輔師匠は前日に「明烏」を演じた。その主人公・時次郎が吉原が好きになりすぎて、このようになってしまった噺が「二階ぞめき」という設定にしたのが面白かった。
マクラで素見を「ひやかし」というようになった語源について丁寧に解説しているのが良かった。紙漉き職人は紙を作るのに、古紙を水に浸けて、ふやかして、もう一度原料に近い形にしてリサイクルした。「ふやかし」が江戸言葉で「ひやかし」になって、その「ひやかし」をしている時間に吉原の店の女郎を柵越しに見て時間を潰したことが、語源になったという蘊蓄である。
よく吉原をテーマパークに喩える人がいるけれど、大金を使って豪勢に遊ぶのもよし、こうして金を使わずに「ひやかす」のもよし、色々な遊び方ができたのが吉原という遊郭の魅力だったのかもしれない。
で、毎日の吉原通いが止まない若旦那に、番頭が馴染みの花魁を身請けして囲ってしまえば吉原通いも収まり、旦那様も黙るだろうと提案すると…。俺は花魁が好きで吉原に通っているんじゃない、吉原そのものが好きで通っているのだと若旦那。
そこで番頭は考えた。吉原を身請けしてしまえばいい。すなわち、家の二階に吉原を作ってしまおう!と。これには若旦那も大賛成。そして、出来上がったミニ吉原。この発想が何とも落語らしいではないですか。
そして真骨頂が、若旦那が若い衆と花魁も兼ねて一人三役で演じる喧嘩。しかも、花魁は浦里という設定。上がっておくれよ、と懇願していた浦里だったが、若旦那・時次郎が渋っていると、最後には、どうせ上がらないんだろう、銭無し野郎!と憎まれ口をたたく浦里。その喧嘩に仲裁に入る、若い衆の喜助。喧嘩はますますヒートアップして…。この一人気違いを一之輔師匠が演じると実に愉しい一席だった。