白鵬は誰が何と言おうと、大横綱だった(5)
NHK総合テレビの録画で「NHKスペシャル 横綱白鵬“孤独”の14年」を観ました。
きのうのつづき
2021年6月。名古屋場所を前に、右膝の状態は思わしくなく、部屋の力士とは別メニューで調整を続けていた。実践的な稽古は場所の5日前。
立ち合いで、これまでにない変わった動きを見せていた。両足で軽く跳んで当たる。膝への負担を減らすため、新たな形を模索していたのだ。勝つためには手を尽くす。そうした姿勢は、ときに批判の的になることもあった。
白鵬は30歳を過ぎた頃から、横綱らしからぬ取り口を見せるようになる。強烈な張り手。かち上げ。20代の頃のような圧倒的な力を失った白鵬は、なりふり構わず勝ちにいく相撲が増えていった。
孤独や葛藤が深まるにつれ、白鵬は記録ばかりを追い求めるようになったという。
白鵬が語る。
自分に何ができるのか。優勝しかできない。優勝するには何が必要か。結果を出さなきゃいけないプレッシャーの中で最後まで手を抜かない。
当時の横綱審議委員長はこう言った。
美しくない。見たくない。こういう取り口は相撲とは到底言えないだろう。
たびたび厳しい声があがった。
横綱にはその地位に相応しい品格と抜群の力量が求められる。白鵬が問われたのは、横綱の品格だった。しかし、品格とは何か明文化されているわけではない。北の富士も稀勢の里も「品格とは曖昧で、難しいもの」と困った顔をした。
白鵬はこう言った。
鬼のように、気持ちで勝ちにいって、土俵を降りれば優しさがある。これが私にとっての品格なのかな。
そして、横綱相撲とは?の問いには、こう答えた。
若くしても、何歳になっても、優しくても、いい横綱でも、土俵の上で結果を出せなかったら引退だと。「勝つことが横綱相撲」だと私は思っていますね。
つづく