柳家三三「ハワイの雪」幼なじみの男女の恋心は永遠に褪せることがない

あうるすぽっとで「三三三席三夜」千穐楽を観ました。(2021・10・28)

柳家三三師匠の「ハワイの雪」を聴いた。言わずと知れた柳家喬太郎作の名作である。それを三三師匠は老いても変わらぬ男女の愛の物語として、しっかりと感動させてくれた。

ハワイにいる千恵子さんの孫から届いたエアメールを孫娘の恵が読むのを聞いた留吉の反応。「知らん!何を今さら」と言いながらも、青春の日々に未練が残る様子をよく表現している。

ちいちゃん、とめちゃんと呼び合う幼なじみだった。2つ年下だったが、大きくなったら、とめちゃんのお嫁さんになるのと言っていた。長ずるに思いは固くなり、「雪かきを一緒にしよう。添い遂げよう」と誓った。

だが、進歩的な女性だった千恵子さんは、アメリカに渡った。やがて戦争が起きる。この人の笑顔が見たいと思った。いまでも会いたい。この空はつながっている。同じ空の下で、二人はつながっていると思っている。

市主催の腕相撲大会で、積年のライバルだった清吉の温情で優勝を遂げ、留吉は恵とハワイに行けることになった。忘れてならないのは、留吉が結婚した、先にあの世に行ってしまった女房のことは愛しているということ。それと、清吉も千恵子さんが好きだったけれど、千恵子と留吉の仲には勝てないと八百長をしたことは、この物語の中で大切な要素になっている。

ハワイに着いた留吉は、青い芝生の庭で車椅子に乗った千恵子と再会する。「もうそろそろ」という千恵子は「お迎え?」と言うと、留吉は「ちいちゃんを送りに来た」と答える。

「お久しぶり」「懐かしぶり」「悔しいわ。私の方が2つ年下なのに」「わしもそのうち後を追うさ。素敵な人生だったらしいな」「幸せでした。子どもや孫に恵まれて。とめちゃんは?」「わしもいい人生だった。お前さんみたいなじゃじゃ馬と一緒にならなくてよかったわい」。

「ごめんなさい。雪かきの約束、果たせなくて」。留吉の粗忽で葛籠に入れた上越高田の雪は全部解けてしまった。「相変わらず、粗忽がなおらん」。

と、空から雪がちらほらと降ってくる。ハワイでもたまに雪が降ることがあると説明する千恵子。掌を広げ、そこに雪を積もらせる留吉。「一緒に雪かきしよう」。指で雪をかく二人。「約束は果たせたな」。

安らかな顔で眠るようにあの世に召されようとする千恵子。「わしもおっつけ逝くからな」と留吉。「今度生まれてきたときは、一緒になろう」。

ハワイの雪は降り続くのであった。幼なじみの男女が最期まで気持ちを通じていたことの素晴らしさに涙を禁じえなかった。