春風亭百栄「イタチの留吉」(三遊亭円丈作)表情や間で百栄カラーに染め上げた高座に爆笑!

スタジオフォーで「もちゃ~ん 春風亭百栄勉強会」を観ました。(2021・10・31)

三遊亭円丈作品の「イタチの留吉」が、見事に百栄カラーに染められて実に愉しかった。

懲役4年6カ月を刑務所で間違えられて、46年服役してしまった留吉の親分がシャバに出たときのカルチャーショックが「モモエちゃんらしい」ユーモアで彩られているのが良い。

マクドナルドに入店したときには、「マケドニア料理?」と思いこむ表情とか、メニューを出されたときの「お品書きと言え」という台詞廻しとか、もちろん台本は円丈師匠のものなのだが、すっかり百栄落語になっている。

真骨頂はマニュアルで働く店員に対する風刺の効いたリアクションだろう。マニュアルはすっかり「エマニエル」となり、どこかの外国人に支配されているかのようだ。

新米アルバイトがマニュアルを覚えられずに店の裏で勉強しているのを、一緒になって付き合っている留吉の親方からは、温かささえ感じる。マニュアルに支配される現代社会を揶揄した作品が、いつの間にか人情噺になっている気すらする。もちろん、滑稽噺なんだけども。

「お持ち帰りですか?」と訊く店員に、「お前は、ここでマケドニア料理を食わせないのか?」と食いつくところや、メニューの選択に悩む留吉にコースメニューを進める店員に誘導されて、いつの間にかベジタリアンな健康志向の選択をしてしまうところも面白い。

柳家喬太郎作品の「寿司屋水滸伝」も、もはや完全に百栄版「寿司屋水滸伝」が出来上がっているように、この「イタチの留吉」も百栄版「イタチの留吉」が完成する日も近い気がした。

ところで、百栄師匠の弟子である枝次さんが、このところ、めきめきと腕を上げている。この日は何と「松曳き」をきっちりと演じて、大いに笑わせてくれた。訊けば、白酒師匠から習ったのだという。来年には二ツ目に昇進するであろう枝次さんの今後にも注目である。