【名人戦 森内俊之vs羽生善治】最強の二人、宿命の対決(4)

NHK総合の録画で「プロフェッショナル 仕事の流儀 森内俊之vs羽生善治」を観ました。(2008年7月15日放送)

きのうのつづき

第三局の痛恨の敗戦から4日後、森内はまだ一度も将棋盤に向かえずにいた。

この日、森内は将棋会館の近くにあるバッティングセンターに向かった。森内は大事な対局に負けると全く将棋のことを考えない時間を作るという。ただ、無心になる。

森内が言う。

失敗したことというのは、簡単には払拭できないんですけれども。その中で、ミスをすることを恐れずに自分のことを信じてやっていけるかどうかだと思いますね。逃げるんじゃなく、攻撃するつもりでやりたいと思います。

森内は自分自身と向き合っていた。

第四局は森内が後手。負ければ後がなくなる。序盤、森内は前回の敗戦を微塵も感じさせない果敢な手に出た。14手目。2二飛車。未知の局面へと誘いこむ挑発的な一手だ。

局面は誰にも読めない混沌へと向かった。互いに牽制しながらの神経戦。

対局開始から18時間半。突然、羽生の手が震えはじめた。アッという間に森内の王を追い込んだ。

「負けました」

1勝3敗。森内はついに後がなくなった。

そして、第五局。絶対に負けられない森内は驚くべき手を指しはじめた。何と痛恨の大敗を喫した第三局と同じ戦法に出た。

20手目。羽生が第三局とは違う手で返した。森内はさらに思い切った手で畳みかける。失敗すれば取返しのつかないリスクの高い手だ。

森内が振り返る。

厳しい状況になればなるほど、大胆にいった方がいいと思っているので、チャンスがあれば動いていこうと。

長考に入った。

羽生が振り返る。

こういう大きな一局でもメンタル的な安定感とか、森内さんはブレが少ない。さすがだなと思いました。それに対して自分もベストの手を返したい。

羽生は対局中にもかかわらず、外に出た。1時間47分の長考。結局、この日は羽生の封じ手で終わった。

翌日。再開。羽生が指した一手は見る者の度肝を抜く強気な一手だった。

この日の森内はすさまじかった。羽生の渾身の一手にも全くひるまない。強気の攻めで羽生との差をグイグイと広げていく。

「負けました」

森内の圧勝。次の一戦へ可能性をつないだ。森内の強さを見せつけられた羽生。言葉なく去った。

羽生は名人戦の合間も、他の対局に追われていた。この時期、対局に集中したいと、取材カメラを遠のけた。

つづく