【プロフェッショナル 動物写真家・岩合光昭】猫を知れば、世界が変わる(5)

NHK総合の録画で「プロフェッショナル 仕事の流儀 動物写真家・岩合光昭」を観ました。(2017年5月29日放送)

きのうのつづき

岩合はボスニアヘルツェゴビナにいた。「世界ネコ歩き」の撮影で世界を股にかけてきた岩合だが、ボスニアは初めて訪れる土地だった。1991年のユーゴスラビア戦争が終結して、20年。今のボスニアをネコを通してどう伝えるか。

気になるネコを探し求めて2日間歩いた。

岩合が言う。

ファンタジーの世界。破壊された部分ばかり注目されているけど、僕としては穏やかな世界を描きたいな。そういった意味で、おとぎの国にした方がいいと思う。

岩合の言うおとぎの国。それは現実を離れると意味ではない。内戦という絶望から立ち上がったボスニアに生きるネコ。その営みを逃さず見つめることで、現実の奥にある希望まで描けないか。

岩合が語る。

ネコって基本的にすごく平和的な動物だと思います。何回も僕が感じていることなんですけど、風をすごく感じる動物なんです。冬に暖かい所にいて、夏は涼しい所にいますよね。それはやっぱり風を感じる力だと思うんですけど。平和な場所は平和な風が吹いているんですよ。それはすごい感じ取る。

例えば家庭内で喧嘩を誰かしていたとすると、いち早く空気を感じて、パーッと安全な所へ行くじゃないですか。何事もなかったような、これは平和な空気だなってときに現れるんですね。そういうことからすると、やっぱりネコって平和を感じるんですよね。

街から少し離れた村に向かった。牧場に居ついているというネコ。子羊たちと一緒にミルクを飲んでいる。

今回の撮影で目指すべき方向が見えてきた。

動物たちの触れあいとか、僕は1画面に10種類くらいの動物たちと一緒にネコがいるという、そういう「おとぎの国の世界」をどこかで憧れているんで。他の動物とうまくやっていけるネコってステキじゃないですか。

さらに内戦の跡が今も残る山間の村へ。

迎えてくれた2頭の犬。メッドは5か月。ミッツアは4か月。放し飼いにされている。そこにネコのマルグッド、10歳。人間でいうと、60歳だ。この自然な仲の良さを狙いたい。そう思って、ロケハンを終え、翌日の撮影日に備えた。

ところが、翌日は季節外れの雪。内戦の被害を展示した写真展を見に行った。なぜ、自分は動物写真を撮り続けるのか。

(展示写真は)記録ということで大切だけど、僕はそちらの面ではなくて、ブライトサイド、明るい方を描くことによって、この動物とか自然が、今残っていることが、とても素晴らしいことじゃないかと。それを保たなきゃいけないということを言っていきたい。ネコを通して平和を見たいですね。

そして、撮影日。マルグッドにメッドがいつものようにじゃれつかない。遊ぶ気分ではないのか。イヌとネコのからみ。地面を這いつくばる動物写真家という仕事。66歳の今もその最前線に立ち続けている。

もう一頭のイヌ、ミッツアにマルグッドが近づいた。離れて、じっと見守る。ネコは希望。「乗っかる?」イヌの上にネコが乗った!「フミフミしている!」。小猫がお乳を母親におねだりする行為だ。岩合はゆっくりと距離を詰める。岩合が思い描いた以上の穏やかな世界がそこにあった。

「まさに“おとぎの国”です。ファンタジー」。渾身のカットが撮れた。「最高!」。

岩合にとって、プロフェッショナルとは?

自然との一体感を覚えることができる人がプロフェッショナルだと思います。人間が自然の一部だということを、感じるということですね。それが一体感を感じることにつながると思いますね。それができると何か仕事がやったことにつながるんじゃないかと思いますね。

ブラボー!である。