【プロフェッショナル 料理家・栗原はるみ】料理の力を、信じている(中)

NHK総合の録画で「プロフェッショナル 仕事の流儀 料理家・栗原はるみ」を観ました。(2011年10月24日放送)

きのうのつづき

栗原の歩みは決して順調なものではなかったという。昭和22年、静岡県下田の生まれ。家事が完璧な母の元で育った。料理のいろはを教わった。短大を卒業して、家事手伝い。その下田に遊びに来ていたテレビの人気キャスターと恋に落ちる。住む世界が違うという両親の反対を押し切り、結婚した。

夫は選挙に出馬し、落選。収入はピタリとなくなった。心労が重なり、結婚2年で体重が14キロも減った。「何も決められない女性」は暮らしを楽にする方法を考えた。家族が笑顔になる料理をせっせと作った。すると、夫の知り合いのテレビ関係者がその料理に感激し、「働いてみないか」と誘われた。テレビや雑誌に料理を発表、出す本はヒットし、一躍時の人になった。

栗原の生活をまるごと紹介するプライベートマガジン「すてきレシピ」が創刊され、20万部が売れた。

栗原が振り返る。

1冊で100点のレシピ。1年間で400点。1年は365日。それより多い。最初のときにレシピは出し続けられる?と思っていたんですけど。

昼も夜も、旅行先でも、レシピを考え続ける日々。次第に迷いを感じるようになる。料理がビッシリ並ぶ誌面。料理の楽しさが表われていない気がした。しかし、その思いを口に出すことが出来なかった。

自分の気持ちを抑えたまま、仕事を何年も続けた。葛藤の矛先は次第に自分に向かいはじめた。一体、自分は何をしているのだろうか。悩み、迷う日々が続き、50代も後半を越えたある日、覚悟を決めた。

自分の進む道は、自分で決める。

人気雑誌の打ち切りを切り出した。自分のやり方で料理を伝えてみたい。ずっと頭にあったのは、家族を喜ばせるために作った料理の楽しさだった。自分の原点を見つめ直す。自らも編集に参加する雑誌をはじめた。

より大事にしたのは、料理にまつわるエピソードだ。夫の大好物のかき揚げ、休日に家族と取り分けて楽しいパスタ、暮しを彩る料理の魅力を語っていった。

栗原は今、自らの意思で料理と向き合う。晴れ晴れとした笑顔がそこにある。

つづく