【プロフェッショナル 料理家・栗原はるみ】料理の力を、信じている(上)
NHK総合の録画で「プロフェッショナル 仕事の流儀 料理家・栗原はるみ」を観ました。(2011年10月24日放送)
はじまりは、ごく普通の主婦だった…。僕でも知っている料理家が栗原はるみさんである。料理本の発行部数は2200万。でも、料理研究家とか、レストランのシェフとかではない。普通の主婦が得意だった料理がメディアに知られるようになって、いつの間にかカリスマ的存在になった栗原さん。それは「100人が作ったら、100人が美味しく作れる」レシピにカギがあった。そこまでは耳学問で知っていたが、こんな才能の持ち主で、こんな努力とサクセスストーリーがあるとは。記録しておきたい。(以下、敬称略)
本格的に料理を学んだわけではない。主婦として自分の経験を生かした工夫を基に実践的なレシピを世に送り出しているのが栗原だ。
鶏肉を使ってご飯に合うグラタンを作ってみる。鶏肉を照り焼きにしてみる。オーブンで焼く時間を短縮しつつ、新たな味付けも狙う。そこに加えるのがホワイトソース。タマネギを入れるのがポイントだ。「タマネギを一緒に炒めるとホワイトソースがダマにならないの」。和風の味付けにした具と合わせるとどんな味になるのか。鶏と生のほうれん草を和え、チーズをかけて焼く。わずか20分ほどで豪華なグラタンの完成だ。
こんな献立を10種類、雑誌用に作って、撮影した。いずれも30分以内、繰り返して使える、奇を衒わない料理だ。栗原はそこからレシピを練り上げる。そこには高いハードルがある。「100人が作ったら、100人が美味しく作れるレシピ」。試行錯誤が続く。
例えば、エビと玉子のチャーハン。中華鍋を持たない人のために、フライパンでもパラパラ感が出るためにどうしたらいいか。初心者には難しいフリップの技術を使わないでもできる方法は。厳しい条件を自分に課す。
栗原が語る。
初めて料理を生まれて初めてやってみたいと思った人とかに、一番最初に私の料理をやって失敗しちゃったらね、私のこと嫌いにならない?やっぱり料理やって難しいかなって思わないように、裏切らないようにしたいな、ってことだけですね。あなたのレシピは信頼できると、それで料理が好きになったと言われたら最高のプレゼントですよね。
およそ一カ月。油を入れる量とタイミングのポイントを掴んだ。挽肉などを炒める油の量を大さじ2分の1単位で微調整。ヘラでかき回すだけで、パラパラのチャーハンができてきた。「フリップしなくて、これだけだったら…いいと思います」。
「油少々」をちゃんと明記して、「大さじ2分の1」。分量や時間を何度も精査する。もっと良い作り方はないか。レシピ作りはいつも締め切りギリギリまで続く。栗原が語る。
私は自分のレシピを決して信じないようにしているんですよ。何回もやって、絶対だとは思っていない。もっと簡単な道がきっとあるんだろうなとは、いつも思っていますけどね。
年4回発行の編集にも加わる雑誌への掲載。2011年は特別な年になった。東日本大震災。「普通の暮らし」とは何か、今回ほど考えたことはないという。足元を見つめ直した。「普通の暮らし」こそ、幸せ。人生で一番大事なことではないか、と。
つづく