【沢村豊子を祝う会】豊子師匠の素敵なところ・・・いっぱいありすぎて書ききれません!

木馬亭で「松尾芸能賞功労賞受賞記念 沢村豊子を祝う会」を観ました。(2021・06・21)

沢村豊子師匠は84歳にして、現役バリバリの曲師である。その豊子師匠が長年の浪曲界への貢献が認められ、浪曲の世界ではとっくに尊敬されていたのであるが(笑)、松尾芸能賞の功労賞を受賞された。めでたいことである。

何がめでたいか、と言うと、浪曲は浪曲師と曲師の二人芸とよく言われ、二人の阿吽の呼吸で繰り出される話芸であるが、どうしても浪曲師の方が目立ってしまうし、マスコミなどの取り上げ方も浪曲師が前に出てきてしまう。いやいや、曲師・沢村豊子はすごいんですよ!と一般に知らしめる役割を果たしたという意味ですごいと思う。

今年は豊子師匠の一番弟子である沢村さくらさんも、上方の舞台裏方大賞と大坂文化祭奨励賞のW受賞をされていて、俄然、曲師が注目された。そして、去年あたりからバタバタとお弟子さんが入門されて、豊子師匠には現在、6人の弟子がいる。さくらさん、美舟さんはもはや第一線で活躍しているし、まみさんも奈々福さんが徹底的に指導して成長してきている。そして、去年入門したのが、順番に道世さん、理緒さん、博喜さん。大所帯になった。

豊子師匠が曲師になったきっかけについて、日本浪曲協会のホームページにはこうある。

端唄を習っていたが、11歳のとき、九州に巡業に来ていた佃雪舟の楽屋に連れていかれ、「お三味線弾いてごらん」といわれ、身体より大きい太棹を弾いてみたところ「東京に行く気はないか」と聞かれ、踊りのお師匠さんになれるかもしれないと東京に来たら、浪曲の三味線を習うことになりました。

よく奈々福さんの会のお喋りコーナーで、「私、騙されて、この世界に入っちゃったのよ」と言っているが、本人は日本舞踊などの三味線弾きになるつもりだったらしい。

でも何より曲師・沢村豊子の功績として大きいのは、国友忠先生の相三味線を務めたこと。昭和27年に文化放送でスタートした連続ラジオドラマ「銭形平次」は日曜を除いた月曜から土曜まで毎日放送され、国友先生が創作して唸る浪曲をしっかりと曲師として支え、何と5年間も続いたのだ。

豊子師匠はのちに演歌歌手になる三波春夫、村田英雄、二葉百合子の曲師も務めている。また、未来を嘱望されながら若くして亡くなった国本武春や、現在の浪曲ブームの牽引役を務める玉川奈々福らを育てた功績も大きい。奈々福さんの相三味線となって19年目というお付き合いだそうだが、今回の祝う会は奈々福プロデュース、とても面白かった。

港家小ゆき「ベートーヴェン一代記 歓喜の歌」/曲師:沢村美舟

彼女の自作で、僕も聴くのは2回目だが、交響曲第9番「合唱付き」創作秘話。特に歓喜の歌を三味線に乗せてドイツ語で熱唱するところは圧巻だった。これも豊子師匠のアドバイスがあってできた作品だそうだ。

玉川奈々福「銭形平次捕物控 雪の精」/曲師:沢村豊子

国友忠・沢村豊子の名コンビを讃える意味をこめて、「銭形平次」のほんの一部を聴かせ、丁度時間となりましたぁ~。推理ミステリーのような作品の魅力に惹かれ、僕は去年「雪の精」通し口演を聴きにいきましたよ。

真山隼人「狐絵師」/曲師:沢村さくら

隼人さんは上方でバリバリ活躍している若手筆頭。さくらさんとコンビを組んでいるのが良い相乗効果を生んでいるようだ。この日の演題は、初めて聴いたけれど、とってもわかりやすくて、面白かった。隼人さんいわく「狐の恩返しですよ」と、狩野義信の出世譚を。

玉川奈々福「豊子師匠の素敵なところ」/曲師:沢村豊子

今年、「喬太郎アニさんをうならせたい」という企画で奈々福さんが創作した、タイトル通りの作品。豊子師匠にまつわるエピソードを絡めて、素敵なことを羅列していく構成なんだけど、沢村豊子84歳の可愛さ満点な内容がこの会の趣旨に相応しく、拍手喝采!