【弁財亭和泉・春風亭柳枝ひざふに二人会】新作の和泉、古典の柳枝。お互いに切磋琢磨する場として、この二人会はずっと続けたい

江戸東京博物館小ホールで「弁財亭和泉・春風亭柳枝ひざふに二人会」を開きました。(2021・06・19)

50日間にわたる真打昇進披露興行が終わり、初めての二人会だ。

弁財亭和泉の師匠である歌る多は口上の席で、舞台上手に飾られている招木(まねき)は、彼女の夫である柳家小八が本名で贈ったものだと明かした。この興行期間中、ずっと見守ってきた夫婦愛がそこにあると。しかし、芸の上ではライバルであり、今後の精進を促しているのが印象に残った。

春風亭柳枝の出身大学の落語研究会の大先輩である権太楼師匠は、「柳枝」という名跡がいかに大きいかを説いていた。初代から八代までの重みをしっかりと受け止めて、一段と高いレベルの九代目を目指してほしいと𠮟咤激励。未来の落語界の看板を背負ってほしいと期待を述べた。

新作の和泉、古典の柳枝。お互いに切磋琢磨していける会として、この二人会はずっと続けていきたい。

さて、今回は「お祝いの巻」と題して、ゲストに古今亭菊之丞師匠と江戸家小猫先生をお招きしての豪華版をお届けした。新真打の二人は長講一席。披露目でかけなかったネタをやろうと意気込んだ。その意気やよし、である。

古今亭まめ菊「狸札」

化ける噺は縁起がいい。可愛い子狸を巧みに演じて、寿いでくれた。

江戸家小猫 ものまね

おめでたい会ということで、冒頭と締めに二回、江戸家伝統のウグイスを鳴いて頂いたのが嬉しかった。フクロテナガザルの鳴きまねは全国の動物園を取材に回っている成果の賜物。それにユーモアが加わって実に愉しい高座だ。

春風亭柳枝「井戸の茶碗」

この二人会の第1回で「甲府ぃ」を演ったときもそうだが、登場人物がほとんど善人という噺は柳枝師匠の人柄とマッチしてとても良い。屑屋仲間が清正公様の茶屋での噂話、父の敵を狙っているのではないかという作り話をするところ、手裏剣をシュッシュッと上から攻撃するというクスグリを無邪気に演るところなども柳枝師匠らしさが出ていて楽しかった。

古今亭菊之丞「長短」

気の長い長さんが上方の人間という演出。これがこの噺によく合っていて面白い。気の短い江戸っ子の短七さんとの対比が実にくっきりと浮かび上がって、客席を沸かせる腕はさすがである。

弁財亭和泉「落語の仮面第二話 嵐の初天神」

もう何度も聴いているが、もはや白鳥師匠のオリジナルから離れて、和泉師匠の「自分の噺」として確立している感がある。三遊亭花の真っ直ぐなところ、月影先生の独特の世界観、ライバルの立川あゆみのエリートとしての負けず嫌い。女流落語家の宝物として、「落語の仮面」全10話を真打昇進前にすべて習得したことは彼女にとって大きいと思う。