【プロフェッショナル 仕事の流儀 小倉智昭】老兵は、去るや去らざるや(上)

NHK総合の録画で「プロフェッショナル 仕事の流儀 小倉智昭」を観ました。

フジテレビで22年間続いた「とくダネ!」が今年3月いっぱいで終了した。同一司会者の情報番組の放送回数日本一を誇る歴史の幕が閉じた。

小倉智昭さん、74歳。舌鋒鋭いコメントで、激戦地帯である午前8時台に並ぶ各局の情報番組の中で、長年トップを走り続けてきた。その最終回までの3週間の小倉さんを「プロフェッショナル」のカメラは追った。テレビで喋ることとは何か、を考えるのに興味深い番組だった。その記録を残したい。(以下、敬称略)

午前8時からの生放送のために、6時に楽屋に入る。番組スタッフが用意した資料のほか、スポーツ新聞含む12紙に目を通し、その間、テレビもつけて耳で聴き、チラチラと見る。そうやってチェックした情報を番組の合間にタイミングよく挟み込む。

小倉が語る。

どんなニュースでもわかりやすく、誰でも見て考えられるような番組が、僕は朝の情報番組だと思っているんですね。こういう話もあれば、こういう話もありますよ。どれだけ説得力のある映像を見せて、そこにどんな言葉をのせていくかっていうのが勝負だと思うんですよ。

力があるとは思わないから、いつも努力したり、勉強したりする時間が必要になっちゃう。スタジオに入るときには、俺は大丈夫だよって、一番司会やらせるとうまいよって思いながら。出てくるときは、やっぱりダメだったなって、反省して出てくるっていう日々の繰り返しです。

放送後も情報収集は怠らない。毎日、書店へ足を運ぶ。自宅ではライバル番組の録画を観る。それを22年間続けてきた。

フリーアナウンサーの羽鳥慎一は語る。

小倉さんは憧れです。言葉で自分の思いとかを世の中に伝えられるっていうのは、僕にはちょっとできなくて、憧れだなっていうのは思います。当たり前ですけど、引き出しがすごいんですよ。無駄な話をできる人ってすごいなと思うんですよね。例えば時間がちょっと予定より余りましたっていうときに、自然とこれってこういうことだよねとか、この子ってこうだよねとか、たぶん小倉さんってその無駄な話が自然に本当に上手に驚異的に上手にできる。

北京オリンピックに、私も「ズームイン!!」で行かせてもらったときに、小倉さんがいて、いつもスーツのイメージがありますけど、もちろん外だから、ちょっとラフな格好で(取材に)すごい動いていたんですよ。これなんだな、「とくダネ!」の好調の理由は、とちょっと感じたことはあります。やっぱり現地に行くんだ、動くんだ、この人はという。いつまで動くんだろうと思っていたら、結果、最後まで動いていましたけど。そこはすごいなと思います。

小倉が自分自身のことを分析して語る。

僕は決して第一印象が良くはないんです。テレビに出ている表情も生意気だしね。態度も結構でかい態度に見えることもあるだろうし。なんでも知ったかぶりするやつだとか、例えば歌手の話が出てきて、「この人のレコード全部持っていて、聴くけどさ」とかっていう話が、そんなこと言わなきゃいいのに、この人のことはよく僕は分かっているんだよと言うために、そういう言葉を使いがちなんですね、僕。それが偉そうに見えたりするところが、僕は絶対あるんです。自分でもビデオ見ていてわかりますから。

いつの日か、小倉の世間の評価は悪い言い方をすれば、「うんちくオヤジ」「自慢話好き」「知ったかぶり」というところに定まった。

ディレクターとのやりとりにも垣間見えた。

――印象としてはアクの強い人という

よく(取材を)やるって言ったよね。だいたい受けないと思った?

――小倉さんって、どういうところを撮ってほしいと思いますか?

結構なんでも一生懸命にはなる方ですよ。何をやるにしても、一生懸命やる。欲張りなんだ。

つづく