【春の新真打五人の会】“コロナ真打”の5人だったからこそ、一致団結してできたことがある。その結束力に拍手だ。

深川江戸資料館で「春の新真打五人の会」を開きました。(2021・05・31)

今年3月21日の上野鈴本演芸場初日を皮切りに、5月20日の国立演芸場千穐楽まで、緊急事態宣言の影響で5月11日のみ休止となったものの、春の新真打昇進披露興行がコロナ禍の中、様々な障害を乗り越えて、おこなわれた。粋歌改め弁財亭和泉、市江改め柳亭燕三、小太郎改め柳家㐂三郎、正太郎改め春風亭柳枝、めぐろ改め三遊亭れん生。以上の5名である。

会の冒頭に5人による披露口上が行われたが、その時にも彼らは言っていたけれど、「コロナ真打」と生涯言われることになるだろう。披露パーティーが出来ない、興行も人数を制限しての開催、それも緊急事態宣言で中止になるのか、ならないのか、薄氷を踏む思いでの興行になるなど、色々なことがあったが5人は一致団結した。その結束力をもって乗り越えたといっていい。

今回のこの会も、本当だったら披露興行中に寄席で販売するはずだった、5人連名の三点セット(口上書き、扇子、手ぬぐい)を作ったものの、販売できず、大量に残ったため、この会場で販売しようという目的も一つににはあった。お陰様で来場された沢山のお客様にご購入いただき、ありがとうございました。

このコロナという災いがいつまで続くか、わからない。ただ、これまで普通にできていた真打披露もあれこれと知恵をめぐらせなければならなくなった。この5人も何度もどういう対応をすればいいのか、さまざまな課題を話し合う機会も多かったと聞く。その分、これまで以上にこの同期の結束力が高まったというプラス思考もできるのではないか。

たまたま1日だけ休止になったれん生師匠の国立の披露目を補おうと、この会では主任という形でれん生師匠が最後に高座を務め、終演後も彼を真ん中に座らせての三本締めとなった。とても温かい会に立ち会えたことを嬉しく思う。

柳亭燕三「黄金の大黒」

おめでたい席にはおめでたい噺を、ということであろう。時間の関係で途中までであったが、店賃未払い自慢や、羽織の奪い合い、ずっこけ口上など、笑い沢山で、トップバッターとしての役割を見事に務めた。

弁財亭和泉「家庭内クラウドファンディング」

さすが!旬の話題を題材にした新作を披露。ニッポン放送の「ラジオビバリー昼ズ」に出演したときに即興で作った三題噺を、さらに新作落語のユニット「せめ達磨」でバージョンアップしてネタおろしし、さらにこの会でかけてきた。結局は妻が夫より立場が強いというのも、女流としての創作ならでは、だ。

柳家㐂三郎「リアクションの家元」

「古典3、新作2のバランスの良い5人組です」とマクラで振っておいて、な、なんと百栄師匠の新作をかけるサプライズ!熱湯をかけられる、サブマシンガンをぶっ放される、といった家元の過酷な課題に命がけでリアクションをとる若旦那は、百栄師匠とは違った大袈裟な楽しさが㐂三郎師匠らしい。

春風亭柳枝「たがや」

九代目!と声を掛けたくなるような本格本寸法でありながら、正太郎時代から変わらないリズムとメロディの心地良い高座で、ますます将来が楽しみだ。特に、雑踏に馬で乗りこむ殿様に対して、噛み付く職人の啖呵の鮮やかさは気持ちいい。だから、首を撥ねても嫌な気持ちにならず、喝采できる。

三遊亭れん生「コトブキ」

結婚披露宴のスピーチの代役を急遽頼まれた男が引き起こすドタバタ喜劇が楽しい。また、50日間、師匠の円丈が口上に並べず、司会が手紙を代読する形を取ったことを逆手にとって、笑いに昇華させたマクラも愉しかった。