【SWITCHインタビュー 阿川佐和子×ふなっしー】(上)謎に包まれた人気ご当地キャラにインタビューの達人アガワが迫る!
NHK―Eテレの録画で「SWITCHインタビュー達人達 阿川佐和子×ふなっしー」を観ました。(2014年11月15日放送)
これまで何度か、このブログでも「SWITCHインタビュー達人達」を取り上げてきたが、この回は異色中の異色である。作家でエッセイストの阿川さんが、ご当地キャラのふなっしーと対談するというのだから。現在もこの番組は続いているが、こんな面白い取り合わせを考えたプロデューサーはすごいと思うし、実際に非常に面白かった!
放送当時、阿川さんが「聞く力」という新書を出しベストセラーに。第二弾の「叱られる力~聞く力2」と合わせて累計180万部(放送当時)の売り上げがあった。「週刊文春」で連載している「阿川佐和子のこの人に会いたい」は93年に始まって、放送当時21年続いているとあったが、現在も連載は継続中で、28年間続く「週刊文春」のメインコンテンツだ。それは一重に阿川さんのインタビューの技術力の高さによるところが大きいと、長年の愛読者である僕は思う。
その阿川さんが、社会現象となっているご当地キャラのふなっしーに切り込む。謎が多い部分にどう迫るのか。これは非常に興味深い。僕なんか、船橋市が町おこしのために作ったキャラクターだと勘違いしていたくらいで、そこからはじまって個人で勝手に作ったキャラクターの内面を色々と引き出してくれたのは、さすがインタビューの達人、阿川佐和子だと思った。その記録を、若干の感想を添えながら残していきたい。そして、阿川さんの歩んだ道についても興味深い発言がいっぱいあったので、そのあたりも。(以下、敬称略)
ふなっしーは謎に包まれた存在である。はっきりとわかっていることは、本名:フナディウス4世、生年月日:138年7月4日、274人兄弟の4番目、職業:梨の妖精、身長:90センチ、体重:35キロ、特技:2段ジャンプ。
インタビューの前半は船橋市の梨園でおこなわれた。30分以上インタビューを続けると「ドライフルーツみたいになっちゃう」ので、30分という時間制限が設けられた。下手すると救急車で搬送されるケースが・・・。
――一番暑かったのは?
台湾の観光局に呼ばれたとき。気温38度、湿度70%。小籠包が食べたくて。
――その衣装?は何着ある?
4号機まである。ローテーションで回している。こまめにお風呂に入っている。(服はクリーニング?)服と言われると困るなっし。梨皮と言ってくれると助かる。
――中身は何人いる?交代要員的なものは?
オカルト的な話なっし!阿川さんの中に何人、入っている?というのと同じ。
――デビューは?
元々はツイッター上だけの生き物だった。2011年11月22日。地上の人たちとコミュニケーションしているうちに、向こうの世界に行ってみようと。だけど、意外と世間は厳しくて、誰も相手にしてくれない。完全に不審者扱いだった。
2012年4月7日に動画デビュー。動画がネット上にアップされた。喋ったり、飛んだり、跳ねたり。だけど、喋りはたどたどしかったという。
――くまモンみたいに他のキャラは喋らないでしょう?
それは喋らないのじゃなくて、人間の聴力では聞こえない周波数で喋っているなっし。ふなっしーの声は人間の声に届く心地よい高さがあるから。
ふなっしーが初めて喋ったのは、2012年6月30日。今とは違う口調なのが、聴いてみるとわかる。一人で活動していると、やむなく喋らなくちゃいけないことが多くなったのがはじまり、とか。
――ブレイクしたのは?
イベント会社も、ショッピングモールも、市も取り合ってくれなかった。(事務所はどこ?船橋市の職員じゃない?)勝手にやっているなっし。違う地域のご当地キャラのイベントに呼ばれて、ガンガン飛び込んでいったなっし。武器とか、目立つとか、そういうのはなくて、「何をしたら、目の前の人が笑ってくれるか」しか考えてなかった。
ときどき、ぶるぶる震えているのは、「暑がりだから、呼吸していたら、『ぶるぶる震えておもしろーい』となった」だけ。ゆるキャラサミットに出たかったが、出場条件が「自治体や観光協会などの推薦状」が必要で出られなかったという。
船橋市長の松戸徹が語る。
突然お見えになって、「公認してください」。役所的にいうと、お墨付きを与えるためには正式にきちんと仕事をするから役所は成り立っている。行き違いはあったのかなと思います。こんなにブレイクするとは思いませんでした。
ちなみに今も、船橋市非公認である。
2012年11月、ご当地キャラのフェス会場で声をかけてくれたのは秋田のニャジロウ。デザイナーのやなぎはらともみさんは語る。
「推薦状がほしくて市役所に行ったけど、たらい回しにされているんだ」と言うので、「ニャジロウのブースでアルバイトをしない?」と声をかけたんです。
ブレイク前には地道な下積み時代があったのだ。ゆるキャラでなくて、あくまでご当地キャラ。税金で動いているキャラクターじゃない。有志でやっているキャラ。全国にはそういう非公認キャラ、勝手にやっているキャラが結構いるそうだ。
ふなっしーが語る。
根底にあるのは郷土愛と人を喜ばせること。コミュニケーションを取ると皆が喜ぶ。「私のこと、覚えている?」とか訊かれて、98%ぐらいは覚えていないんだけど、「ちゃんと覚えている」と言っちゃう。皆が喜ぶポーズはないか、考えて、マンボウ!とか、プリッ!とかポーズが増えた。皆、お尻が大好きなっし。風邪はひいても、このテンションは落とせないから、たまに動き悪いときは「ちょっと体調悪いんだな」と思ってくれると、これ幸い。
ふなっしーの大ブレイクで船橋市へのふるさと納税が急増。船橋市から感謝状が贈られた。人気は海外にも飛び火し、各国メディアが紹介している。日本には3000以上のキャラクターが存在し、空前のキャラクターブームと言われている。
――ご当地キャラが文化みたいになってきたね
日本はこれがないと活性化ができないみたいになっている。
――ふなっしーになる前は?
!?どういうこと?梨の妖精としてインターネットの仕事をしていたなっし。
――このデザイン?顔立ちとブルーのパンツは?
船橋の特産は魚のスズキやホンビソス貝があったけど、農産物で出荷高が高かった梨にしたなっし。梨というと鳥取のイメージが強いけど、梨の発祥は千葉と言われていて、20世紀梨も松戸で最初に作られた。特産物と地名からふなっしー、梨神様が考えたなっし。梨の色をリアルに表現すると、近寄り難いので、黄色にした。パンツのブルーは港のイメージ。唇はマウスで描いたらぶれた。梨神様いわく「お前の表情は30分くらいで作れた」
――一番つらかった仕事は?
喉元過ぎれば、で忘れちゃう。長時間拘束するのに、「コレ?」みたいなテレビの仕事がたまにある。8時間撮影して、5分とか。本当はつらいことあるんじゃないかと訊かれるが、喜ばれているうちは頑張ろうと。迷いはあまりない。やりたいことやっている最中に死ねればいいかな。
――あと何年ぐらい?
ペースは落ちていくと思うけど、やれる範囲でやっていきたい。(ペース落ちる?)テレビが取り上げるのも、そんなに長い期間じゃないと思う。(ブームが)終わった後も、学校とか幼稚園に気楽に行ければいいな。喜ばせるという活動は続けていきたい。
――結婚は?好きな異性のタイプは?
戸籍がないから。(船橋市の)住民票もなかった。タイプは洋ナシかな。くびれ具合がたまらない。外タレみたいなものかな。レディガガ的存在。
ここで、前半の阿川がふなっしーにインタビューするパートが制限時間30分を超えて、終わった。ふなっしーが感想を語る。
結構優しい顔して、ギリギリのライン攻めてくるなっし。危なかったなっし!うっかり夢を壊すようなことを言っちゃいそうで怖かったなしな。大丈夫だなっしー!セーフ!」
つづく