【英雄の哲学 イチロー×矢沢永吉】③オーディエンスには矢沢が30だろうが、50だろうが、関係ない。ステージの良し悪しで勝負する。

BS―JAPANの録画で「英雄の哲学 イチロー×矢沢永吉」を観ました。

きのうのつづき

矢沢はイチローに「ヤザワの若いときに似ている」と言った。

矢沢 初めてイチローさんにお会いしたんですけど、失礼な言い方かもしれないけど、矢沢の若いときに似てますよ。違うのは、僕はガラが悪いけど、イチローさんはちゃんとしている。けど、若い頃は僕が自分だけで言っていることがありましたから、誤解されまくってましたけどね。イチローさん、50までやると思いますよ。誰のために?誰のためでもないですよ。自分ですよ。自分がそうしていたいんですよ。イチローさんもいっぱい色んな人に言われると思う。こういうときはどうだったんですか?イチローさんの気持ちを訊きたいですって。そんな面倒くさいことないですよね。

イチロー 説明できないこと、いっぱいありますよ。

矢沢 ただ野球が好きだからってありません?高校時代のあの頃と変わっていないこと、いっぱいあるんだよねというところありますよね?僕もそうですもん。ビートルズを聴いて、俺、東京に行くって思った気持ち。今もありますもん。それ、一緒ですよ。

話題はイチローが活躍するアメリカのことに移った。

イチロー 最初に行った1年、2年と今ではちょっと印象が違っていて、最初はすごいなあ、こいつら同じ人間と思えないと思いました。日本にいたときなんか、あいつらは怪獣だと思っていましたから、大リーガーって。とても僕なんかが行っても太刀打ちできないと思っていたのが、行ってみると、彼らも人間だったと感じたんですね。持っているポテンシャルはすごいと思いましたけど、(頭を差して)こっちの方が(笑)。

矢沢 僕もそう。海の向こうは本場中の本場。出る音、出る音、なんでこんなにすごいんだと。一緒に飲んだり、レコード作ったりするうちに色々見えてくるんですよ。ネゴシのこととか、欧米の方が進んでいますからね。日本人みたいに言いたいこと言わないで、あとでグシャグシャもめるっていうのはない。むこうは逆で、最初にピシッと言うからね、ネゴシの話は。決まったら、後は仕事の話。はっきりしてますよね。

こっちも負けないよ、っていうのもありますよ。もっと進むと、ちょっと待てよ、クライアントは誰なんだ?俺だ。金を払っているクライアントがイニシアティブを持つべきだ。あるとき、イエス、ノーをはっきりしなきゃいけないじゃないですか。ノーをハッキリ言うと、尊敬してくるんですよ。普通に話さないと通らないなって認識するんですよ。

イチロー だから僕らがここ(頭)でカバーできるのかな、と思います。彼らがそれを使いだしたら、それはかなわないと思います。

矢沢 日本人の勤勉さじゃないかな。外に行くとわかりますよね。

イチロー オフに日本に帰ってくるだけでも、迎えてくれる航空会社の人が頭を下げて「ありがとうございました」と。あの行為はすごいな。あれだけですごいことが伝えられている。日本の文化というのが、日本にいたときは思いもしなかったのに、あっちに5年いて、日本が大好きになりましたね。

話題は住む家のことに。

イチロー シアトルという田舎にいるんで、外に出て気分転換が出来ないんです。家の中をどれだけ充実させるかを考えると、多少無理をしてでも投資してしまう。結局、その場所が快適にならないと、グラウンドに立てないわけっですから。身体のケアと同じように家のケアというのはやっている。それが50まで野球をやるのに大事なことだと思っているので。それに必要なものだったら、ある程度無理をしてでも手に入れるのが僕の考えですね。

矢沢 僕は家にいないなあ。結局はホテルの方が落ち着くんだと言ってますけどね。それだけ、町から町、レコーディングスタジオと、どちらにせよ、仕事やってんですよ。

イチロー マイクをバーンと蹴飛ばして、滅茶苦茶熱いじゃないですか。アレが終わって、幕が閉じたとき、「ああ、しんどいなあ」とかならないんですか?

矢沢 バリバリ、なるよ。終わって、シャワー浴びて、背中触ると、血が出ているの。マイクターンで背中にめちゃめちゃ当たっているのね。打ち身だからね。グッタリ。30代の頃は、さあ飲みに行くぞ!だったけど。いいステージだと、シャワーが心地よい。50代になると、一個一個の仕事が渋くなりますよ。

イチロー でも、そういう姿は見せないわけでしょう?

矢沢 もちろん、もちろん、見せる必要ないし。オーディエンスは矢沢が30だろうが、50だろうが、関係ない。終わったあとに思うんじゃないですか。すごい良いステージだった。ところで、矢沢、今、50いくつなんじゃない?って。本人はシャワーでへばってる。ハァーハァー、いっている。でも、心地よいへばり。それは他人には見せない。スターだからね。

つづく