【英雄の哲学 イチロー×矢沢永吉】②矢沢さんは子どものような気持ちをもっていまだに歌を歌っている。だからこんなに輝いているんだ

BS―JAPANの録画で「英雄の哲学 イチロー×矢沢永吉」を観ました。

きのうのつづき

矢沢永吉とイチローは24歳違い。2回りの差がある。

矢沢 世代も違うし、だけど何か一本共通のものがあるとしたら、僕はまだ現役なんですよ。お陰様でね。現役をやっていると、今年どうしてやろうかなあ、去年はああしたし、今年はどうしようかなあという部分はちっとも変わっていないんですよ、20年前とね。すると、上だ下だ、右だ左だなんてこと、ありゃあしないんだよね。教えてやろうかと言った段階で熱くないんです。実はひょっとしたら、現場にいないのかもしれない。メモリーになっているのかもしれない。現場にいたいな、現場っていいな。僕はだからリタイアしないって言ったんですよ。昔、30くらいのときはまだ見えない、20年先のことだから。クソー、誰もやったことないのか。50でも武道館に立って、今と変わらずマイク蹴飛ばして、よし、俺、50までやるからよろしく!と言ったときに、20年先じゃないですか。本当に確信があるのかと言ったら、確信なんかありゃあしないよ。ありゃあしないけど、言い出しっぺだから、風呂敷畳まなきゃいけないところまでもってっちゃう。ちょっと酔ってる自分がいるわけ。俺、言っちゃったなあ、やべえなあ、と思いながら、でもタッタカ、タッタカ、35、40、45…おいおい、本当に50まで来ちゃったよ。

万単位の客を前に「アイ・ラブ・ユー、OK」を歌いたい。それは本当に横浜国際競技場で実現したんですよね。50歳のバースデーライブで。そしたらね、別に背負ってるわけでもなんでもないんですけど、セカンドバースのところで、「長いつらい道をお前だけと歩いてきた」の「お前だけ」のところで涙で歌えなくなっちゃって。客もそれを感じたんでしょうね。5万人がウワァーとなっちゃったんですね。もし、イチローさんが50になって、200安打の1発の日があって、本当に打ったら、それ、泣いちゃうんじゃないかな。誰にかわからない、自分になのか、この時間になのか、わからないけど。

イチロー 僕は野球をやって、これまで泣いたことがないので、二軍に落とされて泣いたことはあったけど、そういう時間に巡り合いたいですね。酔って泣いたことがないので、14年間プロ野球をやってきましたけど、そうなるためには、子どもみたいな気持ちで野球を続けられないと、達成できないんだろうなって。子どもがどうしてあんなに楽しそうに野球をしているように見えるかというと、そんなに上手でなくても、それが楽しいから、好きだからだと思うんです。でも、プロ野球の選手になると「あいつ、楽しそうじゃない」という人が多くなってしまう。でも、矢沢さんは子どもなんでしょうね、失礼な言い方ですけれども。子どものような気持ちを持っていまだに歌を歌っている。だからこんなに輝いているんだと思う。

矢沢 昔ね、はっきり言ってました。金持ちになりたいって。初めてのインタビューで、「どうして、歌手になろうと思ったんですか?」という問いに、「お金が儲かると聞いたから」と言っちゃったもん、つい。(質問者が)怪訝な顔してたから、「音楽も好きです」って言っちゃったの。バカというか、素直というかね。まんざらその気がなかったわけでもないんです。これもきっかけとしてはいいと思うんです。ビートルズが好きだ。ジョンレノンのようになりたい。当たったら、ビートルズは何を教えてくれたんだろう。「こんな俺たちだって、一攫千金を狙えるかもしれない」とビートルズは教えてくれたんですよ。

ビートルズの本を読んだときに、どういう契約を(レコード会社と)交わしたとか、ブライアン・スタインの取り分はどう決めたのかとか、そういうところをギラギラしながら読んでいた自分がいた。だけど、現実ってそんなもんじゃない。いかにいいステージをやるか、いいレコードを作るか、町から町へ説得し続けていかれるかということ。もっとどうやって上に行かれるか、それは当たり前のこと。やっぱり音楽が好きなんですよ。いいステージがしたいんです。ステージに立って、客がアンコールをして、きょうは最高!という自分がいるわけですよ。

50まで歌いますと言って、50過ぎました。僕、歌をやめないです。何でやめないか。僕、わかるんです。ミックジャガーとか、ローリングストーンズとか、もうお金のために歌っていませんよ。とっくにそれはクリアしてますよ。なぜ、やめない?もうやめられないんですよ。そこにはずっと音楽と遊んでいたい自分がいるんですよ。今を楽しんでいるんだ、やることがあるから嬉しいんだという人は、理屈なんかないんだよ。ひたすらやっているんですよね。やれるものを持っていることへの感謝。今、世の中で皆が何を探しているか?追えるものを持っているかの戦いでしょ?

そう思ったときに、俺はついてるな、最初はビートルズに憧れて、女の子にキャーキャー言われたくて、いい格好したくて、スタートしたんだけど、本当に僕は音楽が好きだったんですよ。上っ面のことだったら、神様はとっくに終わらせてますよ。もう辞めな、と言っていると思うね。

つづく