【SWAクリエイティブツアー】10年ぶりに、あの4人の男たちが帰ってきた。新作ネタおろしを引っ提げて。
シアタートラムで「SWAクリエイティブツアー」を観ました。(2021・03・12)
SWAが帰ってきた。04年に結成し、11年に活動を休止したSWAは、そのときに「解散ではなく、休止です」と昇太師匠が力強く誓っていたのを覚えている。そして、19年12月によみうりホールで「SWAリターンズ」を開催し、翌20年から9年ぶりの活動再開を宣言したが、横浜にぎわい座と本多劇場で予定していた公演はコロナ禍のために開催を断念。ようやく、このときがやってきたという感じだ。
今回のために新作ネタおろしを意気込み、4人で集まって知恵を絞ったが、なかなか作品ができずに挫けそうになったこともあったという。今までの作品のブラッシュアップでも良いか、という発言も出る中、一人気を吐いたのが白鳥師匠だったという。「そんなことじゃだめだ!」と、他の3人のメンバーに具体的に「こういう噺を作れば」と提案もしたという。そこでメンバーは奮起し、今回は全員新作ネタおろしを掛けることができたというわけだ。
SWAはSWAであり続けた。4人がそれぞれのカラーを生かした新作を披露し、自分の存在感を示してくれたのは嬉しかった。喬太郎はやっぱり喬太郎。昇太はやっぱり昇太。彦いちはやっぱり彦いち。そして、白鳥はやっぱり白鳥だった。優劣などなく、それぞれの個性が光る作品たち。こうやって刺激をし合いながら、彼らは何歳になっても創作をし続けるのだろう。ありがたい限りだ。
林家彦いち「恋の山女」
「青畳の女」の主人公・トモエちゃんの甘酸っぱい恋物語。憧れのマサルさんの心を掴むために、キャンプ場と山を丸ごと買ってしまったというのが可笑しい。キーワードは「恋は先廻り」。これを忠実に実践するトモエちゃんの乙女心が愛おしい。三島由紀夫「潮騒」を彷彿させる、その火を飛び越えてこい!心理学の「吊り橋効果」も飛び出して、聴いているこちらまでドキドキしちゃう。
柳家喬太郎「愛犬注意」
可愛がっていた愛犬のペスがいなくなってしまい、悲しんでいるさっちゃん。お母さんが落語「元犬」の絵本を読み聞かせしてあげるが、ペスのことが気になって仕方がない様子が伝わってくる。そして、ヤクザのテツが組を追われて、ひょんなことからペスの犬小屋に逃げ込み、さっちゃんのためにペスを演じる姿が愛くるしい。お手!おかわり!チンチン!追いかけてきた組の連中に、さっちゃんが「ペスをいじめないで」と懇願する姿になぜかジーンとした。
春風亭昇太「シャレ侍」
江戸庶民の間で「算学」が遊びとして流行っていたことと、ダジャレばかり連発して町人たちが迷惑している藤田という侍の存在をうまく絡ませて面白い噺に。三升と五升の升を使って四升の水を割り出すには?26歳の男が8歳の娘と歳が自分の半分になったときに結婚できるのはいつ?子ども時代を懐かしく思い出した。目安箱に沢山の陳情があった「藤田氏のダジャレ迷惑問題」を三太夫とお殿様が上手に解決する様子も実に愉快だった。
三遊亭白鳥「桜の夜」
売れない噺家・藤田が昔の思い出話を展開して噺を転がすのは、白鳥師匠お得意の実体験を投影させる手法。故郷の上越高田の高田公園の夜桜の美しさと、中学時代にヤスコちゃんに初恋して失恋した思い出が交錯し、さらには禁断のタイムスリップの手法も飛び出して、独特の白鳥ワールドが展開。他の3人とは全く違う方法論で創作する新作落語が懐かしく思えた。