田辺いちか「カナリアと軍人」明治の軍人の純愛が実を結んだかに見えたが…連続モノは続きが気になる!
道楽亭ネット寄席で「春風亭一花・田辺いちか二人会」を観ました。(2021・03・07)
田辺いちかさんの「カナリアと軍人」が良かった。「仁礼半九郎」という連続物の序開きの一席で、今年1月に講談協会の初席で聴いたのが最初だったが、この日、配信でもう一度聴けて嬉しかった。人の心に春が訪れる季節です、といちかさんは言っていたが、まさにその言葉に相応しい高座だと思った。
舞台は明治5年。西郷隆盛に寵愛された陸軍中尉の仁礼半九郎は身長180センチあるというガッシリとした男。だが、女嫌いというのが難点だ。その代わりというと変だが、小鳥が好きで、菓子屋の二階に下宿している部屋には籠にカナリアを飼っていた。菓子屋の主人が良い縁談を持ってきても断るばかりで、「わしには言う事を聞くこのカナリアがいる」と言って、号令に従って動き、飛ぶカナリアと戯れるばかりだった。
ある日、そのカナリアが隣家の庭に紛れ込んだ。隣家は醤油問屋の長谷部家の別荘で、市ヶ谷小町と呼ばれた、今年十七になる由起子という娘がそのカナリアを見つけて返してくれた。深窓の令嬢とはこの娘をいうのだろう。薩摩隼人の半九郎は彼女を一目見たときからブルブルと震え、寝ても覚めても彼女のことが気になった。食事も喉を通らない。一目惚れというやつだ。
彼の上司である岡本少佐は、ぼんやりしている半九郎を心配し、事情を訊く。なんだ、恋煩いか。長谷部家は私も知り合いだ、掛け合おう、と言ってくれた。そして、岡本少佐が長谷部家を訪問し、部下で今度大尉に昇進する男がお宅の娘さんに惚れまして、と話しをする。長谷部氏も名誉なことと喜び、本人である娘・由起子に気持ちを訊く。
もじもじしていた由起子は、蚊の鳴くような声で、「あの仁礼半九郎さまという軍人さまであるならば・・・」。結果を聞きたい半九郎をじらす岡本少佐。半九郎は「女というものはこのように優しいものだと知りました。目が開きました。娘さんが嫌だというなら諦めます」と言うと、岡本少佐は笑って、「こちらから望んでも嫁ぎたいくらいでございます、と言っていた」。安堵する半九郎。
吉日を選んで祝言となったが、ここで西郷隆盛が権力闘争に敗れ、薩摩に下るとの知らせ。半九郎も薩摩に同行しなければならない。祝言を前に離れ離れになってしまうのか?さて、二人の運命は?というところで読み終わり。
さあ、この後はどうなるのか?続きが聴きたい、巡り合える日を楽しみにしたい。