神田桜子「固定概念にしばられない講談をめざして」

3月28日開催予定の「音曲師・桂小すみ なんじゃこりゃあ!」にゲスト出演する講談師の神田桜子さんにインタビューしました。(以下敬称略)

神田桜子は大阪で生まれ育った。幼少時代に母親から本の読み聞かせをしてもらうのが大好きだった。成長してからも、自分で本を音読するのが楽しかったという。それが関係しているかはわからないが、小学校で演劇クラブに入って以来、中学、高校、大学と演劇部に所属していた。また、明石市立天文科学館のプラネタリウムで星座の物語を読むというボランティアをしたのも良い思い出になっているそうだ。

地元の大学を卒業し、「しゃべる仕事がしたい」と思って上京した。漠然と「しゃべる」と言っても何をしていいのかわからない。OLをやりながら、紹介された俳優の新藤栄作さんの主宰する劇団で発声の基礎などを勉強していた。そのうちに、新藤さんから「あなたは良い声をしている。声の仕事が向いている。良い先生を紹介してあげよう」と、神田陽子先生を紹介された。

お江戸広小路亭で開かれている講談教室に通い、後に師匠になる陽子先生の講談に惚れた。「なんて素敵な女性なんだ。華があり、人情もある」。新作講談の「カルメン」(二代目山陽作)を読むのを聴いたとき、古典伝統芸能の固定概念が取り払われた気がした。こういう素敵な女性になるにはどうしたらよいのか?ずっと近くにいたい。ならば、弟子にさせてもらえないだろうか。桜子は考えた。

2015年8月に入門を志願した。寄席の前座修行は厳しいこと。ましてや、日本講談協会と落語芸術協会の両方の前座を務めるのは並大抵のことではないこと。経済的に食べられない覚悟が必要であること。など色々と親切に説明してくれて、最後に「よく考えなさい」と言われた。

桜子は熟考し、講談師になる決断を2か月後にした。陽子先生は二代目山陽没後に京子を預かり弟子にしたのみで、これまで弟子を取ったことはなかったが、初めて弟子の入門を許し、翌年5月に正式に前座となった。(現在は下に陽菜と子太郎がいる)

前座修行は見るもの、聞くもの全てがこれまでの桜子にないもので、人と人とのつながり、上下関係の厳しさと温かさの両面を知った。なにせ落語の知識は皆無だったし、邦楽にも触れたことがなかったので、高座にかかっているネタの演目名がわかるようになること、師匠たちの出囃子を覚えること、すべてゼロからの修行だった。

桜子は前座生活4年の中で、4人の講談師の真打披露のお手伝いを経験している。2016年のきらり改メ鯉栄先生、17年の紅葉先生、18年の蘭先生、そして20年の松之丞改メ伯山先生だ。特に当時の松之丞さんがどんどん人気を得て売れていく様子を横から見られたのは貴重な経験で、勉強になったという。彼の芸に対する気迫、情熱。講談を幅広い層に広めようという意欲。桜子は足元に及ばないながらも、師匠や伯山先生のように講談に貢献できる人になりたいと熱く語る。

去年5月に二ツ目に昇進。コロナ禍での昇進だったが、温かい先輩たちに支えられ、春風亭吉好さんの主催でオンライン披露目を同期の三遊亭遊七さんと一緒に5日間おこなった。同時に、春風亭昇輔さんと二人でネットラジオ「桜前線上昇中」をスタート。毎週更新し、現在も続いている。春風亭吉好さんとは「ヨシコサクラコ」という同じテーマでヲタク的新作を創る勉強会をはじめた。少女漫画をテーマにした「ときめき☆注意報」や、ミステリーをテーマにした「東雲ねねの事件簿」など、果敢な挑戦をしている。

落語の三遊亭遊七さん、音曲師の桂小すみさんとともに、女性ユニット「CommeSeau」も結成。それぞれの分野の高座とともに、大喜利として演奏コーナーを設ける演芸会を開催し、切磋琢磨している。ピアノ演奏を幼い頃からやっていた桜子は、ここでも新しい一面を見せている。

さて、「音曲師・桂小すみ なんじゃこりゃあ!」では、講談の「安政三組盃 お染と間抜けな泥棒」を、小すみの音曲とセッションで読む。ただ読むだけでなく、演奏も挑戦したいと意欲満々だ。講談を身近に感じてもらうため、固定概念に縛られてはいけない。桜子はそう考えている。

音曲師・桂小すみ なんじゃこりゃあ!

3月28日(日)14時開演@西巣鴨スタジオフォー

木戸銭 事前予約2500円(当日精算)

ご予約・お問合せ オフィスひざふに yanbe0515@gmail.com