【渋谷らくご しゃべっちゃいなよ】プレゼンター林家彦いち、今のコロナ禍の先を読んだSF的高座に創作落語の可能性を見た。

配信で「渋谷らくご 2月興行 しゃべっちゃいなよ」を観ました。(2021・02・16)

「森羅万象クイズ王決定戦」三遊亭青森

落語という枠にとらわれない新しい発想や形式にチャレンジするのはとても良いことだと思う。青森さん以外の声も何種類か録音で流れ、時々効果的に照明を落とす演出もあり、かなり計算して作りこんできていて、その意気やよし。噺のメッセージがクイズ番組風刺だとしたら、若干弱い気がした。

「そのおんな」立川談洲

この日の5席の中では、僕は一番良かったと思う。店長と一筋縄ではいかぬ女性・凛子の会話は一言一言に納得がいく。ヨガをしながら朝日を浴びて嗅ぐ香り。叔母さんが叔父さんだった頃。彼氏はいないけどパートナーはいる。この手の女性には関わらない方が良いと思っていても、とっても気になる男性は多いのではないか。食べられないパンという「なぞなぞ」から回答するものが、途上国の貧困問題、アレルギー、パンの耳。それがサゲにつながるとは。

「いただ気」柳家花いち

喜寿のおばあちゃんと孫のマサミの会話で笑わせようとしているのかもしれないが、残念ながら笑えなかった。浜松産のウナギを食べたおばあちゃんは満足していて、その後にマサミが持ってきたスーパーのウナギが食べられないという一点突破はキツイ。

「落語病棟」笑福亭羽光

落語マニアあるある。僕は面白かったが、あまり落語に詳しくないお客さんはどう受け止めたのかが知りたい。「饅頭こわい」や「芝浜」はメジャーだが、「初天神」の冒頭や「一人酒盛」はどうだろう。精神的に病んだ噺家が、キーワードをきっかけに何でも落語の世界に入ってしまうという発想は面白いので、寄席のお客さんに受けるための改良が必要かもしれない。

「アンダーザヘルツ」林家彦いち

さすが、彦いち師匠だ。現在のコロナが収束して、さらに「新新コロナ」なる疫病が発生したら…。常に先、先を読んでいる。これはSFといってもいい。今度は飛沫感染ではなく、耳からの音感染。外出にはヘッドホンが必須という。そのウイルスは周波数によって細分化され、岡晴夫とライオンキングとホイットニーヒューストンが同じ抗体を持つという。その感染音は落語や浪曲にも波及し…。また聴きたい!