「自分が好きなものは、自分から行かないと、人生は動かない」 石田ゆり子著「LILY‘S CLOSET」から勇気をもらった

マガジンハウスから出版された、石田ゆり子著「LILY‘S CLOSET」を読みました。(2020・07・29)

インスタグラムのフォロワーが238万人。50歳になった石田ゆり子さんの最新刊を読んだ。「アラフィフ」という言葉はもう古いのかもしれないけれど、同世代だけでなく、その下の世代も含めて「憧れのライフスタイル」が人気の秘密だと思う。ある意味、50歳を迎えると、自分に素直というか、正直というか、「自分の思うように生きることが、イキイキと生きる秘訣」という答えが出ると僕自身も思っていて、それは石田さんとは月とスッポンなのはわかりきってのことだけど、男性である僕も共感できる生き方だなぁと思った。それは、もしかすると「作られた、あくまでもイメージとしての石田ゆり子」なのかもしれないけれど、その実なんてどうでもいい。そのイメージに憧れて、自分自身を見直すことのモチベーションが上がればいいのでは、と思う。

帯には「石田ゆり子のクローゼットを開けてみた!」とあるけれど、そこにはスケベ心は微塵もなく、むしろ、紹介される衣類や鞄やアクセサリーに対する思いから、彼女の生き方に対する考えみたいなものを読み取れることができる。特に、色(カラー)に対する短い文章は印象的だった。いくつか、抜粋して考えてみる。

赤という色に対して、私はなぜかモノトーンと同じような感覚を持っています。白と黒、と同じくらいの定番として捉えているところがあります。かのココ・シャネルも、定番の色は5色で、白、黒、ベージュ、ゴールド、そして赤。それを知ったとき、なんだかふっと、やっぱりそうなんだと心の奥で深く納得したのです。赤は血の色。生きている色。野性的で情熱的、感覚的にワードローブに必要な色です。それはとても本能的なもの。理屈ではなく、そこにあるだけで、身に纏うだけで、体全体にふっと生気がみなぎる感覚がするのです。(「赤い服」から抜粋)

自分にとって赤はモノトーン。野性的、情熱的。身に纏うと生気がみなぎる。これらの表現に、自分自身の確固たる曲げない信念があり、それを鼓舞する石田さんを感じる。勇気をいただいた。つぎは「黒」についての抜粋です。

実のところ「黒」という色にずっとコンプレックスがありました。20代の頃から黒よりは茶、濃紺、チャコールグレーを選んできたように思います。理由は、自分には強すぎる色だから…素顔のそばに黒を持ってきたときの強さや潔さに負けてしまう。呑み込まれてしまう。そんなふうに感じてきました。(中略)

時は過ぎ、40代に入ったあたりから不思議なもので「黒」が別の色に見えてきた。なんというか、「透明感を含む色」に見えてきたのです。これは一体どういうことなのか?つまりは人が皆持っている天然の「白」、歯の白と白目の白。これを引き立てることにより、黒を纏う人に透明感を与える色なのだと感じるようになりました。私も年齢を重ね、全ての色を内包している「黒」のパワーに負けない何か…を内面に持つようになったのでしょうか。そうだといいけれど。でもきっと年齢を重ねる喜びって、こういうところにあるのかもしれません。(「黒のバッグ」から抜粋)

若い頃にもっていた固定観念やコンプレックス、そういうものを無理やり剥ぎ取るのではなく、歳を重ねると、自然とそういうものから解放され、新しい発見が飛び込んでくる瞬間があるということでしょうか。いつまでも、ガチガチに縛られず、ゆったりと考えてみると、あれほど難題で、自分には不可能と思って諦めていたことが、するすると紐が外れるように解決することがあります。それは意固地になるのではなく、発想を転換する柔軟さが大切ということかも。時間が解決してくれることもある。それも相当長い時間をかけて。人生って、だから面白いのかも。そして、「白」についての抜粋。

白は色の王様だと思っています。沢山の色がある中で白ほど試される色は無い。(中略)何かの区切りや、決意表明、節目。そんなとき人はみんな意識的にも無意識的にも、白という色を選ぶのではないだろうかと思います。

白い服を着るとき、それが濁りの無いまっ白であるとき潔さの中に勇気を感じます。白はその魅力と同時に当然ながら汚れやすくそして膨張する色でもある。その色をボトムに持ってくるというのは、この人は中途半端な気持ちで服を着てないなと思わせる…。私にとって、憧れの白いボトムスは、ホワイトデニムです。デニムって、その人自身と一体化するアイテムであり、その人の体の線をどうしたって表してしまうものでもあるので。(「ホワイトデニム」から抜粋)

人生、ある決断をしなくてはいけないときがある。というか、決断を嫌がって、遅らせると、後悔することがある。後悔ばかりの人生でも、勇気をもって決断すれば何かが開かれてくるような気がします。力むことはない。「濁りのないまっ白である潔さ」があればいい。石田さんの「白」に対する表現に、ちょっとシンクロさせるとそういうことでしょうか。白って、実は力強い色なのかも。

最後に、「LILY‘S CLOSET」(マガジンハウス)から「シャネルのジャケット」より抜粋して締めます。

「自分が好きなものは、自分から行かないと、人生は動かない」。そんな言葉を最近自分のなかで何度も繰り返す。ドアをたたけ、されば開けてもらえるであろう、という幼い頃に祖母の部屋で見た聖書の言葉を思い出す。

大げさなようだけど、服を着ることって、この言葉に通じるようなところがある。自分が何が好きで、どんな自分でいたいか。それはきっと、自分だけを見つめ続けることでは無く、むしろ自分を取り巻く世界の中に美しさを見いだすことに通じるように思っている。その世界の中のひとつぶ、として自分らしく、少しでも素敵でいたい。(「シャネルのジャケット」より抜粋)

石田ゆり子さん、生きる勇気をありがとうございます。