幕末、戦後、そしてコロナ。求められる「ニューノマル」は演芸の世界にも。こういう時期だからこそ、新しい発見を楽しみたい。

7月16日の「月例三三独演」のライブ配信のプログラムがハガキで届きました。(このブログのサムネイル画像)柳家三三師匠の直筆です。配信を購入した人全員に送られてくるものです。師匠の丁寧なお人柄が伝わってきます。

また、三三時代の会報も届きました。8月20日の月例三三独演も配信で届ける旨とともに、柳家三三よりの挨拶が添えられていました。師匠が今のコロナ禍をどう見ていて、それに対して噺家としてどう捉えているかが、よくわかる文章なので、全文を書き写します。

「落語はナマがいちばん」。少しずつ寄席やホールでの落語会が再開されて、聞かれる声です。僕もそう思います、異論はありません。けれども、今はみんなが心の底からそう言える環境ではないのもまた事実です。実際に公演をやるとなると、お客さまにもスタッフにも通常にはない負担をかけていることがわかり、なんとも悩ましい思いを抱きました。

そういう理由があり「月例三三独演」はまだお客さまにおはいりいただいての公演は再開できません。じゃあその代わり、どうにかしてみなさんに落語を楽しんでいただく方法はないのかと頭をひねった結果、配信という形を選びました。お客さまのいないカメラの前だけでおしゃべりするのは最初は違和感を拭えませんでしたが、やってみると驚いたことに、カメラの向こうに落語を楽しみにこちらを見ている大勢のかたがいてくださるんだと、ハッキリ感じることができました。

登録や手続きに慣れないかたもいらっしゃるでしょうが、そこを乗り越えて特等席で会いましょう!また心おきなく劇場で聞いていただける日が来るまで最高の「月例三三独演」をお届けします。

これだけは断言します。演じている私はビックリするほど楽しんでいます。

柳家三三

本当に大変な世の中になってしまいました。幕末、戦後、そしてコロナという言われ方もしています。国民一人一人が、自分のこれまで当たり前だったライフスタイルや価値観を見直す大きな時代の転換点なのでしょう。落語などの演芸含め、エンターテインメントにも、「ニューノーマル」が求められています。三三師匠のように、「配信は配信で演じていて楽しい!」という噺家さんも大勢います。そして、僕も一人の演芸ファンとして「こうやって配信中心に楽しむのも悪くない」と思うようになってきました。

古今亭志ん輔師匠が東京かわら版のアンケートにこう書いていました。「なんでもむさぼるのがいい時間じゃないですか。こんな時だからこそ、他人に勧められて選ぶのではない自分が本当に知りたい、聞きたい、見たいものはなんなんだろうと考えれば当たり構わずむさぼり食っていくにはもってこいの時間でしょう」

御意。僕も新しい発見ができる毎日をむしろ楽しんでいます。この時代の荒波をおだやかな気持ちで乗り切りたいと思っています。