渋谷らくご 七月の配信も、全部観ちゃいました(≧▽≦)(上)

オンライン配信で「渋谷らくご 七月公演」を観ました。(2020・07・10~14)

ハイブリッドという言葉をよくわかっていなかった。辞書で調べると、①生物学で異なる種類・品種の動物・植物を人工的にかけ合わせてできた交雑種。「―のバラ」②複数の方式を組み合わせた工業製品など。「―車」。そうか、ハイブリッドカーというのはガソリンと電気をうまく使い分けて動力にする自動車だからね。なんかハイソとか、ハイテクな車みたいなイメージを持っていた。

で、コロナ禍で配信落語が増える中、最初は無観客だったのが、少しずつお客様を入れて、その上で配信をするものが出てきた。それをハイブリッドと呼んでいたのは、そういうことなのか。ガソリンが観客で、電気がオンライン視聴者ということかしらん。いいとこ取りでいいと思う。

やはり、大概の演者さんはお客様がいないと反応がないから演りづらいとおっしゃっていて、その意味では定員の半分以下でソーシャルディスタンスを保って開催する落語会も増えたのは演者にとっても、演芸ファンにとってもありがたい。その上で、配信は東京開催のものが全国津々浦々、いや海外にまで届く。また、高齢や病気などで外出がままならない方にも観ていただける。もっと言うと、夜7時開演の落語会が主流なので、その時間に間に合わない仕事をされている方も多い。24時間でもアーカイブがあると、時間をスライドして深夜などに観ることができ、ありがたい。

コロナ禍はいみじくも、ハイブリッドという新たな落語会のスタイルを世の中に提案してくれた。色々と分析すると功罪あるが、そのことは別の機会に考えたい。

10日(金)18時

隅田川馬石「浮世床~本・夢」入船亭扇辰「ねずみ」

馬石師匠、「バーバーなのに、ジージーがやっている」、このフレーズは生涯大事にしようと思っている。イイネ!盃洗の中でお猪口が二つ浮かんでいて、梯子段を上がるとぶつかり合う。トントンテ、チンチロリン、チンテンチリンツ、トッテント、シャン!「あたし、あなたのことを好きになってしまうそうだわ」「あっちも好きになっちまいそうです」。江戸弁!

扇辰師匠、「浮世床」の本を読むところ、学校寄席で吃音の生徒がいるからやめてくれと注意された噺家さんがいると。「よっぽど、姉が瓦毛、妹が毛深いの方が教育上良くないのでは」と。ガッテン!鼠屋主人の身の上話含め、人情味あふれる甚五郎旅日記。

10日(金)20時

立川寸志「強飯の女郎買い」玉川太福「豆腐屋ジョニー」橘家圓太郎「かんしゃく」蜃気楼龍玉「子は鎹」

寸志さん、後に金看板、大看板が続くので、私は墨田区土建業組合入会の電柱の看板と謙遜。弔いで配られた辨松の別誂えの弁当のディテールがいい。竹の包みで強飯は赤飯、半月が切ってあって、ガンモドキがこってり煮てあって、蓮が斜に構えていて、その脇に日光唐辛子に茄子の辛子漬けにアチャラカ巻ときてる。こりゃ飲めるなぁ。

太福さん、白鳥作品に二代目勝太郎の天保水滸伝の外題付け。利根の川風袂に入れて 月に棹さす高瀬舟 人目関の戸たたくは川の 水にせかれる水鶏鳥(くいなどり) 恋の八月大利根月夜 佐原囃子の音も冴え渡り 葭(よし)の葉末に露おく頃は 飛ぶや螢のそこかしこ 潮来あやめの懐しさ 私しゃ九十九里荒浜育ち というて鰯の子ではない~。

圓太郎師匠、旦那に怒鳴り散らされ、暇をもらって里に帰った静子を、父親が優しく諭すところがいい。辛抱のしどころだよ。内助の功とは…。アイスクリームとは気が利いている!

龍玉師匠、寸志さんを受けたのか。亀ちゃんが生意気だったり、こまっしゃくれていたりする場合が多いが、この亀ちゃんは純朴で素直なところが気持ちいい。「お父ちゃんが言っちゃいけないと言うから言わなかったんだ」「三人でまた一緒に暮らそうよ」。うん、うん。

11日(土)14時

三遊亭兼太郎「堪忍袋」立川談吉「師匠殺しのサイゾー」柳家小里ん「青菜」柳亭小痴楽「佐々木政談」

兼太郎さん、嫌味の本当の使い方をしっかりと。障子の桟を指でなぞり「埃が溜まっている」ではなく、「綺麗だな」が嫌味。よく漬かっていないキュウリを食べ、「ナマのキュウリか」ではなく、「食べ頃だな」が嫌味。

談吉さん、独自ワールドの新作が可笑しい。サイゾーは情報収集能力に長け、「伝統の味や技や芸を途絶えさせる」という使命を請け負っている忍びの者。絵描きの卵白先生は「弟子を取ると師匠になる。見習いならいいだろう」と防御するが。西ノ森犯科帳より、と締めたのもイイネ!

小里ん師匠、植木屋夫婦の馴れ初めの見合いがちゃんと入っているのが好き。上野動物園のカバの檻の前で待ち合わせ。ずっと、あくびして餌を食うカバを見てた。キリンの檻の前で甘食を食べた。婚礼で女房はドジョウ掬いをしたって。

小痴楽師匠、コロナ禍で「世知辛い世の中」と。自粛警察、しゃらくさい。御礼詣りされるのがオチと。ものおじしない四郎吉。頓智頓才、お茶の子さいさい、屁のカッパ。

11日(土)17時

春風亭昇々「生徒と先生」柳家小せん「夜鷹の野ざらし」春風亭百栄「桃太郎後日譚」古今亭文菊「ねずみ」

昇々さん、タカシ君の学校復帰の新作。小せん師匠、愛川晶脚色。烏が休みでムクドリ代演。手向けの句ならぬ間抜けの句、野を肥やす骨に狸がポンポコポン、御神楽大好きトッピキピッノピッ!

百栄師匠、マクラたっぷり。カレーうどんやで、無意識に無銭飲食しそうになった。そろそろ高座で噺が回るかもと。寿司占いの話をして、18年前のマクラを強引に引っ張り出してきた、だって持ち時間が30分もあるんだもん!気弱な桃太郎とタチの悪い三匹の家来が可笑しい。人遣いの悪さは「小林多喜二の蟹工船の方がまし」。

文菊師匠、謙虚で心の広くて温厚な甚五郎が印象的。「子どもは正直で素直が一番。あれくらいがちょうどいい」。「泊まった者が父子の面倒を見る仕組みですな」。年寄りの愚痴話に熱心に耳を傾ける様子も含め、名人の人物像が浮かぶ。

12日(日)14時

柳家あお馬「やかん」立川笑二「もう半分」三遊亭遊雀「反対俥」古今亭駒治「ロックウイズユー」

あお馬さん、知ったかぶりのマクラ。前座修行を5年もしてたから、大概の師匠の高座をマクラで演目を当てることができた。それで配信落語で演芸ファンが「チャット機能」で落語イントロドン!をやっていたので、これは俺が勝てると思い、誰かが「持参金」と書き込んだから、いやいや「不動坊」だよと書き込んだら、「たらちね」だった!(笑)

笑二さん、居酒屋主人の独白で貫く独自の型。ネタ下ろし以来、何回か聴いているが、いつも新鮮で、画期的だなぁと感心する。ご自身は「使い勝手が悪い」のでなかなかかけられないとおっしゃるが、独演会だけでなく、こうした他の噺家さんとの共演で、「立川笑二」の存在感を示してほしい。

遊雀師匠、若手への温かい目線をいつも感じる。駒治師匠の創作能力を高く評価し、「前に回って聴きたいくらい」と。同じ乗り物好きという共通点にも触れ、「新幹線でビール5杯いける」。飛行機の南風ルートの着陸経路を熱弁。新宿と渋谷の間の下北沢上空でのギアダウンのタイミングを発見した喜びを語る。

駒治師匠、自粛期間中に曲ができた。それをそのままやるのは頭の悪い人になってしまうので、落語にしてみましたと。飛び道具としてエレキギターを使うのではなく、演奏を前提に落語を構築している素晴らしさ。単純に「関東平野の歌」が面白いというだけではなく、青春の甘酸っぱい物語に仕立てているのが真骨頂だろう。