渋谷らくご 七月の配信も、全部観ちゃいました(≧▽≦)(下)

オンライン配信で「渋谷らくご 七月公演」を観ました。(2020・07・10~14)

12日(日)17時

立川談洲「明烏」神田鯉栄「甕割試合」柳家わさび「券売機女房」隅田川馬石「船徳」

談洲さん、吉原を舞浜にある「夢の国」で比喩。花魁の語源の一つと言われている「尻尾がない」のは、ネズミキャラクターもそうだと。祭礼で赤飯を5杯食べた時次郎をビンタする父の英才教育。でも、源兵衛と太助が「俺らが悪の権化なら、親父さんは悪の親玉」。浦里花魁が「可愛いじゃない!」と自ら時次郎を部屋へ力づくで連れて行く演出も可笑しい。翌朝、源兵衛の「まさかと思いますが、坊ちゃん」の問いに、時次郎は「やったよ!申し訳ありませんが、私は坊ちゃんではない。昨日までとは空の色が違って見える。朝というのは、こんなにも輝かしいものなんだ」。

鯉栄先生、剣術の道の厳しさと師匠の涙の決断。わさび師匠、カーナビ頼りのタクシー運転手とタッチパネルに慣れた寿司職人をマクラに振って。コミュニケーション不全の若者や国際化による日本文化の誤解など、社会風刺も何気なく入っている秀作。券売機の中に入って汗だくで対応するおばあさんが身に浮かび、愛おしい。

馬石師匠、前にあがったわさび師匠が「時そば、そば清、青菜がつきます」と言っていたと(笑)。一人前の船頭を気取る徳さんが、次々と情けないことをやらかしていくと、四万六千日の参拝の二人組同様、徳さんを応援してあげたくなる。

13日(月)18時

立川こしら「やかん」入船亭扇里「お菊の皿」

こしら師匠、2か月前のシブラクを体調不良でキャンセルした理由をきちんと述べ、迷惑をかえたのにまた呼んでもらえることに感謝の気持ち。鰻の名前の由来から、ずっと他の名前の由来を「鵜」にこじつけるところ、すごい。中世ヨーロッパの巨大龍の退治からはじまる「やかん」の名前の由来も、ちゃんと「鵜」が。

扇里師匠、幽霊と茄子の煮たのは嫌いという表現が好き。最後は10日間の興行が許された千穐楽という設定。だから、18枚数える理由は「明日、休むからだよ」に合点がいく。なるほど!ルーティーンだったわけだもんね。

13日(月)20時

柳亭市童「蛙茶番」春風亭昇羊「置き泥」立川吉笑「道灌」橘家文蔵「笠碁」

市童さん、「ガマガエルをくじの中に入れたのか!」という旦那に合点。天竺徳兵衛は国立劇場の通し狂言で観たなぁ。定吉の舞台番の説得力、「人の嫌がる役をあえてやる立て引きの強いところが好き。素人が白粉塗って、ギックリバッタリなんてみっともない。そこを舞台番に逃げるところが、さすが半ちゃん」とミー坊が言っていたよ。「町内広しと言えども、これくらいのモノを持っている奴はいないだろう!目方があるんだ。霜が立っているんだ」と、見栄を切る半ちゃんが可笑しい。

昇羊さん、「石田ゆり子のクローゼットの中」という本。透けるブラウスに心動いたと。これが深田恭子だと動かない、哲学ですと。うん、うん。泥棒に入られた貧乏住人が泥棒から金を巻き上げる逆転が面白い噺。それを脅しではなく、情けない弱々しいキャラで、理詰めで愚痴を構築して説得してしまうのがいい。威圧感がなく、優しい貧乏住人なの。イイネ。

吉笑さん、古典の前座噺をしっかり。オウム返しのテンポの良さ。文蔵師匠、わがまと強情の意地の張り合いに一日の長。「傘は貸しません」という婆さんに、「お前は道灌か」。

14日(火)18時

雷門小助六「佃祭」柳家小八「船徳」

小助六師匠、本寸法。本来のサゲのために、きちんと歯痛の戸隠様の願掛けでアリの実(梨)を川に放り込む風習を仕込む。次郎兵衛さんの女房こまの悋気もいい感じ。

小八師匠、旦那が「皆、呼べ!」と命じられた下女のおたけがいい。「熊さん、八っつぁん、クマンパチァーン!」。黒門町。「燃えているよ!燃えているよ!」で、慌てて駆けつけたら、「へっついの下が燃えているよ」。洗っていた褌、流しちゃった。

14日(火)20時

橘家文吾「夢の酒」田辺いちか「敵討母子連れ」古今亭志ん五「甲府い」瀧川鯉八「長崎」

文吾さん、久々のオフと思い込み映画「ミッドサマー」を観たしくじり話から。文蔵組配信の現場に慌てて駆けつけたら、正楽師匠が紙切りしていた。自分のスマホに文蔵師匠が太鼓叩く画像が送られてきたときは頭が真っ白だったろうなぁ。悋気のお花、カワイイです。

いちかさん、実力ある証明。ぶばった読み物だが、締めるところは締め、母親の女性らしい部分は柔らかに、硬軟自在に人物を描き分け、ストーリーがイキイキと躍動して脳内に広がる。期待の星。

志ん五師匠、競歩競技の魅力を語るマクラが面白い。誠実な善吉が真面目に働き、女性客に贔屓にされるのも合点がいくし、それを豆腐屋の娘お花が惚れるのももっとも。最後の甲府に向かう夫婦は、まるで芝居の道行のようというのが目に浮かぶ。

鯉八師匠、中島敦「山月記」を読んだ感想が深い。尊大な羞恥心と臆病な自尊心という分析、鋭い。長崎名所と名物ぶらり散歩だけでも楽しい。だけど、そこに微妙な男女の心の機微が描かれ、何度聴いても秀作だなぁと思う。純喫茶ツル茶んのトルコライス。喫茶冨士男のミルクセーキとフルーツサンド。ニューヨーク堂のカステラアイス。イイネ!