ナマの浪曲はいいね! 玉川太福「地べたの二人」シリーズは続くよ、どこまでも 

百年長屋オンラインで「太福・隼人二人会」(2020・06・21)、高円寺ノラやで「鍛耳會」(06・23)を観ました。

6月から一部再開した寄席で玉川太福さんの高座を何度か拝聴しました。木馬亭六月定席で「不破数右衛門の芝居見物」、浅草演芸ホール六月上席で「銭湯激戦区」、新宿末廣亭六月中席で「恋する寅さん」。おなじみの演目ですが、「やっぱり、ナマがいい!」と実感してとても嬉しかったです。

大坂朝日放送(ABC)による配信、百年長屋オンラインは「さすが、テレビ局!」と思える、画質と音質の高さと安定度はもちろんですが、大阪での公演ということで、トリを後輩の真山隼人さんに譲ったのですが、隼人さんの新作「ビデオ屋の暖簾」は、太福さんのドキュメント浪曲と通じるものがあって面白かったし、「円山応挙の幽霊図」は確か、1回だけどなたかで聴いている?と思って調べたら、2017年に旭堂南湖先生が2日に分けて講談で聴いていることがわかりました。落語の「応挙の幽霊」とは随分違う、ノンフィクションぽい感じで、とってもよかったです。

太福さんは「鹿島の棒祭り」と「地べたの二人~おかずの初日」。「おかずの初日」はね、「おかず交換」が有名だけど、むしろ、齋藤と金井のあの絶妙なやりとりの面白さは、こっちが上かも。年配の齋藤が最新型の3段式保温弁当箱を持ってきて、ちょっと誇らしげな感じとか、後輩の金井がいつもホットモット系なのに、珍しく「手作り弁当」を持ってきていて、「彼女?」「違います!母親です!」と何度もやりあうところの表情も含めたユーモラス。キュウリの漬物の「漬かり具合」で、どれくらいの年齢かわかると、齋藤がボリボリと食べるところ、堪らないです!

そして、久しぶりのナマの独演会「鍛耳會」。まず、マクラで再開した寄席の出演エピソード。6月下席浅草演芸ホールの初日の21日。曲師は伊丹明師匠だったんですが、出番30分前に楽屋入り(今はコロナ対策で楽屋滞在時間も制限されている)すると、明師匠が来ない!で、携帯に電話が入った。「間違えて、末廣亭に来ちゃった!」。もう、間に合わない!落語芸術協会の事務局に電話すると、「なんとかしてください」。うわぁー、どうしよう!一人で高座に上がるしかない。でも、浪曲は曲師との二人芸。「なんでもいいから、適当に音を入れていただけませんか」と、楽屋のお囃子の師匠に頼んではみたが、それは極めて難問で、曲師の仕事への敬意もあるし、太福さんの邪魔をしちゃいけないという配慮もあるから、うすーく遠慮気味に三味線を鳴らす程度。でも、なんとか乗り切りました!太福さん、すごい!

演目は「梅ケ谷旅日記」も聴き応えあったけど、「地べたの二人~愛しのロウリュ」は初めて聴いた!面白い!太福さんの銭湯好き、サウナ好きは有名で、コロナ自粛中も、サウナは「貸し切り営業」のみはやっていて、「ソーゾーシー」のメンバー+小痴楽師匠で体験したというのを聞いたが、そのサウナが舞台の齋藤と金井の物語というか、日常というか、いや、非日常ですね。以前、ラジオ番組「すっぴん!」の「ギョーカイ大図鑑」というコーナーで、サウナの業界誌の編集長から「熱波師」というプロの方がいて、その技量を競う選手権まであるというのは聞いていたが、その熱波師のキャラクターが面白いの!

サウナストーンに柄杓で水をかけ、蒸気があがったら、それをタオルで風をおこし、お客様へ送るという仕事。この熱波師さんが、滑舌が悪くて、何を言っているのか、さっぱりわからない齋藤と金井のそれぞれの戸惑いぶりが、なんとも可笑しい。サウナの中は94℃。タオルを振り回して風を送るわけだけど、それを太福さんは演台の上にかぶせてある「テーブルかけ」を使ってリアルに描写する。

何度かやったネタで、これまでは座りの高座だったが、きょうは本来の浪曲のスタイルである、立ちの高座。これは初めての試みだと言っていたけど、テーブルかけをビュンビュン振り回しての熱演。だが、あまりに振り回しすぎて、天井のエアコンのホースにひっかかり、小さな器具が外れて、落ちてきた!びっくりする、太福さん。幸い、お客様に怪我などはなく、拍手喝采で終わったけど、太福さん、平謝り。ま、それは置いておいて、「愛しのロウリュ」、面白いです!

こうやって、「地べたの二人」シリーズは今後も続くことを期待しています!