寄席興行、一部再開 やっぱり、寄席はいい!でも、心のソーシャルディスタンスを保って楽しみたいです

「六月上席興行」を新宿末廣亭と浅草演芸ホールで観ました。(2020・06・03&08)

5月25日の緊急事態宣言の解除を受けて、都内の寄席が6月から一部再開しました。落語協会、落語芸術協会と上野鈴本演芸場、新宿末廣亭、浅草演芸ホール、池袋演芸場が入念討議を重ね、しっかりとした指針を作っての再開です。新型コロナウイルス感染拡大防止に関する気のゆるみがあると、また第二波、第三波と揺り戻しがおこらないとも限りません。とにかく、人数制限でソーシャルディスタンスを保つことはもちろん、アルコール消毒や検温、マスク着用義務、中入りを増やし、換気を励行するなどの努力をして、娯楽としての演芸が息を吹き返すべく、芸人さんとお席亭、そして演芸ファンも含め、待ちわびていた寄席を楽しんでいければと、僭越ながら個人的に思っています。

まず、3日に浅草演芸ホールに行きました。SNSなどの情報によれば、再開初日に朝9時から並ぶお客様がいたので、末廣亭は昼夜入れ替えにして、夜の部を希望する人には整理券を配って、開場前に再び並んでもらう方策を翌日から取ったと聞いたので、一応、昼夜入れ替えなしなのか、混雑状況はどうなのか、前日に電話で問い合わせてから、13時に伺いました。

(昼の部)神田紅「髪結新三」三遊亭円馬「青菜」仲入り ナオユキ/漫談 幸丸「昭和三十年代」三遊亭円遊「松山鏡」古今亭今丸/紙切り 古今亭寿輔「ぜんざい公社」仲入り 小痴楽「真田小僧」宮田陽・昇/漫才 桂竹丸「間の悪い男」笑福亭鶴光「紀州」ボンボンブラザーズ 太神楽曲芸 柳亭楽輔「ちりとてちん」

紅先生、当然抜き読みで弥太五郎親分が新三に白子屋のお嬢さんを渡せと脅すが、新三は少しもひるまずに啖呵を切り、追い返したところで大家・源七が出てきたところまで。円馬師匠、季節ネタですね。ここでプログラムにはない「換気のための仲入り」。入場時の検温とアルコール消毒もしっかりと。ナオユキ、ボソボソとユーモアとアイロニーが混ざったポエムが大好き。「子を連れ道行く人がいた」シリーズ、クスクス笑った。

幸丸師匠、「帰ってきたヨッパライ」「老人と子供のポルカ」「ドリフのズンドコ節」…全部、僕の幼少時代!円遊師匠、ファンタジー。今丸師匠、夕涼み、七夕祭り、三社祭、川開き。おぉ、コロナで全部中止の風物詩。寿輔師匠、火器使用許可書、健康診断書、履歴書…今もマイナンバーカードで国民を管理しようとしている政府の意向への抵抗が。また、ここで、本来の中入り。

小痴楽師匠、寄席芸人の空気感がある。ホール落語より寄席の方がイキイキしている印象。若いのに、「パソコンとか、わかんねぇから」と昔ながらの江戸っ子気質があるのが面白い。陽先生はフェイスシールドを着用して登場、そのまま漫才やり続ける。定番の北海道から順番に昇先生の出身地・広島までの都道府県を日本地図を描くように南下するネタ、感染者数付き!自粛警察、東京アラートならぬ東京ア・ラ・モード、3密はせんだみつお、あいだみつを、よしだみつお、「密だ」を10回言わせて、俺の好きな女優は壇?・・・蜜!違う!檀れい!

竹丸師匠、コロナ前と変わらぬ漫談。鶴光師匠、地噺たっぷり。家継後任の件で、次に松鶴を継ぐのは惣領弟子の仁鶴だろうけど、と松鶴一門と米朝一門の違いについて、笑い沢山。ボンボン先生、鉄板。楽輔師匠、新型インフルエンザの特効薬で富士フィルムの開発した素材が注目されたが駄目になった・・・「写るんデス」だから。フフフ。古い洒落だけど、コロナ禍では受けるね。

(夜の部)神田松麻呂「井伊直人」春風亭柳若「動物園」桂小すみ/音曲 三笑亭可風「寿限無」三遊亭遊之介「長短」ねづっち/漫談 三遊亭歌若「看板のピン」桂富丸「雲上の恋」北見伸&ステファニー/奇術 玉川太福「銭湯激戦区」三遊亭遊喜「熊の皮」東京ボーイズ/ボーイズ 神田松鯉「河内山宗俊 玉子の強請り」

松麻呂さん、明るく元気に成長。柳若さん、独特の味。小すみさん、タネ尽くし、さわぎ、サノサ、さつまさ。相撲甚句の「明日はどの手で投げてやろ」がイイネ!可風師匠、食べ食べしゃぶ放題、「私、オートバックスにコーヒー飲みに行ってくるわ」、雷竜太?富澤梅男?言葉遊びが面白い。遊之介、気の長い長七さんが好き。ねづっち先生、黒川検事長ネタ、賭けマージャンで不満もツモる。寄席再開と掛けて、大都会と解く、待ち(街)わびる(ビル)。歌若師匠、サラッと。

富丸師匠、永遠のマンネリズム。伸先生、ディスイズ、マジック!太福、熱湯風呂、ぬるーい風呂、身の危険を感じる電気風呂!遊喜、甚兵衛さんに「意味なんかどうでもいい。音で覚えろ」と言う女房。それを、推測できてしまう先生、愉快。東京ボーイズ、ダメな私ねぇ。松鯉先生、天保六花撰の河内山宗俊は芝居では当代松緑のおじいちゃんの松緑、勘三郎、それに前進座の梅之助が良かったと。で、河内山の悪だくみをたっぷりと。大満足。主任まで体力持たず、この中入りで退場。ごめんなさい。

そして、8日に末廣亭へ。昼夜で観たかったので、昼夜入れ替えにより夜席が入場できないと嫌なので、その旨を木戸に伝えると、昼席入場の際に、夜席の整理番号が配られ「5番」でした。

(昼の部)桃月庵あられ「子ほめ」林家扇「松竹梅」柳家小菊/粋曲 壽二ツ目昇進 彦星改メ林家彦三「鴻池の犬」桃月庵白酒「粗忽長屋」ホームラン/漫才 入船亭扇好「寄合酒」林家正蔵「一眼国」仲入り 伊藤夢葉/奇術 初音家左橋「片棒」林家鉄平「代書屋」林家正楽/紙切り 扇遊「蜘蛛駕籠」仲入り 春風亭一之輔「かぼちゃ屋」ロケット団/漫才 春風亭正朝「星野屋」吉原朝馬「六尺棒」鏡味仙三郎社中/太神楽 桂南喬「天狗裁き」

あられさん、バリトン声を抑え気味になってきて良い。扇さん、首を傾げる。小菊師匠、艶っぽさ満載。彦三さん、おめでとうございます!師匠・正雀仕込みの噺、「よく聞いてくださいませ~」が芝居噺っぽくていい。白酒師匠、極めて冷静に。勘太郎先生、病気からの復帰、嬉しい。杖もなく、以前の高座に。入院顛末記を。扇好師匠、サラッと。正蔵師匠、15分高座での古典、磨いていらっしゃる。

夢葉先生、久しぶりの鞭!左橋師匠、次男坊のお祭り騒ぎ、実に愉しく。鉄平、一行抹消!正楽師匠、挟み試しで相合傘と線香花火。ご注文で、松竹梅を切る正楽師匠、寄席再開、あじさい。やっぱり、「寄席再開」を切ってもらいたかったんです。お客様がマスクをしているところまで、細かく。扇遊師匠、紫綬褒章!

一之輔師匠、抜けるような青空、かなたには入道雲、空でトンビが輪を描いた、そんな夏の昼下がり。ロケット団、コロナネタ満載、これはテレビじゃ絶対できない、それが寄席の最大の魅力。三浦さんのセンスが大好きだ。正朝師匠、きっちりと男と女の騙し合い。朝馬師匠、若旦那は懲りないね。仙三郎社中、寄席の吉右衛門、観られました!南喬師匠、天狗が襲い掛かるところと、女房が起こすところのギャップが楽しい。

(夜の部)林家ひこうき「狸札」柳家やなぎ「子知る」ダーク広和/奇術 壽二ツ目昇進 三遊亭ぐんま「初天神」柳家はん治「ぼやき居酒屋」ニックス/漫才 林家彦いち「保母さんの逆襲」仲入り 圓太郎「強情灸」林家ペー/漫談 龍玉左龍「英会話」五街道雲助「新版三十石」仲入り 林家木久蔵「幇間腹」すず風にゃん子金魚/漫才 林家きく麿「首領が行く!」入船亭扇辰「団子坂奇談」翁家社中/太神楽 柳家喬太郎「路地裏の伝説」

ひこうきさん、フレッシュ!やなぎさん、やったー!久しぶりの「どうして、僕だけ伊勢丹メンズ館なの?他の兄さんや弟たちがイトーヨーカ堂なのに」。ダーク先生、研究熱心は続く。ぐんまさん、おめでとうございます!さすが、白鳥門下。屋台に並ぶ群馬県の名産品。群馬物産展か!金坊の泣き叫びも、サイレンのように響き渡る!はん治師匠、桂文枝作品。ニックス、お姉さんがコロナ太り。でも元々太っているので、わからない(笑)。彦いち師匠、グーチョキパーで何作ろう!お題をもらって、林家正楽~(笑)。換気のための中入り。

圓太郎師匠、左腕に乗せた灸の塊が熱そう!ペー先生、ルージュの伝言を歌って終わる。左龍師匠、芸協の師匠がよく演る噺。有坂勉こと金語楼師匠の作品。雲助師匠、普段カッコ良い師匠の、この滑稽さが魅力!ここで、本来の中入り。木久蔵師匠、幇間と若旦那が同列に見える。にゃん金先生、トイレタイムに。きく麿師匠、ネタに入る前に雲助師匠の物まね。「若竹は突き抜けそうに伸びていく」。真打昇進披露口上に並んでくれて、言ってくれた言葉の詳細が分からず、同時昇進の龍玉師匠に聞いたら、教えてくれたと。その他、先代圓歌師匠、はん治師匠の物まね、上手い!新作の小学生の任侠を気取った「でっしゃりかいの」のフレーズが爆笑。

扇辰師匠、怪談噺っぽく進め、サゲが何ともバカバカしいのがイイネ!翁家社中は和助さんと小花さん。喬太郎師匠、前にあがったきく麿、扇辰の噺を当意即妙にクスグリに入れるのが寄席ならでは。「町内の蕎麦屋の娘がかじった赤ん坊の腕の骨で、よく出汁がでているだろう」、「白幡二中の怪談、あそこの1組と2組が血で血を洗う抗争をしていたとは!」。楽しい9時間でした。

コロナ禍をきっかけに、配信落語が花盛りだけど、やっぱり、噺家さんのナマの顔を見ながら楽しむのが、良いにきまっている。だけど、完全に収束するまで、我々は油断してはいけない。だからこそ、「ほどの良い」楽しみ方で、「こっそり」と寄席に行くくらいがいい。しかめっ面していては高座は楽しめないので、頭の片隅に「自制」と書いたお札を貼っておいて、あとは心を開いて寄席に行こう。しばらく、そういうマナーを心得て演芸を楽しみたいと僕は思っています。