渋谷らくご5月全11公演35高座ナマ配信という偉業。そして、配信落語のあるべき姿の模索は続く

noteで「渋谷らくご」5月全11公演を観ました(2020・05・08~12)

「渋谷らくご」さんが、新型コロナウイルスの感染拡大防止による緊急事態宣言を受けて、予定していた5月公演5日間を中止しました。しかし、その日程で全11公演をオンライン配信するという快挙を成し遂げて頂きました。素晴らしかったです。まずは、その配信が決定したときのキュレーター、サンキュータツオさんのメッセージを書き起こしますね。

どうも、ごきげんよう、渋谷らくごのキュレーターのサンキュータツオでございます。皆さま、いかがお過ごしでしょうか。4日、緊急事態宣言が延長されることも発表されましたが、相変わらず、落語会は主催できません。開催できません。ゆえに色々な演者さんが配信などをはじめています。渋谷らくごとしましても、こういった事態を予測しまして、配信などを前提とした動きをしていたんですけれども、やはり最悪の事態ということになりまして。で、お知らせなんですけれども、5月8日から12日の、従来の第2金曜日からの5日間、渋谷らくごをやります。やりますが、全公演、全高座をオンラインで配信いたします。

こちらですね、先月4月に試験的に三K辰文舎、橘家文蔵師匠、入船亭扇辰師匠、柳家小せん師匠の3人の落語、そして音楽の公演を有料配信しましたけれども、今月もそのような形での生配信となります。そして、有料でございます。最近ではね、無料、YouTubeなどで配信される落語家さんとかも多いですし、またTwitterなどで見られるツイキャスでありますとかね、その他オンラインサロンで配信したりだとか、あるいは連絡をくれた人だけに見られる限定URLを送るとか、そういった形でね、無料で見られるものから有料まで本当に色々な方が配信をはじめていますが、とにもかくにも、業界的にはプロの演者さんの高座を確保する。演者もね、アスリートと同じですから、高座を務めないわけにはですね、維持できないということもありますので。

お客さん側としても、どうしても落語を聴きたい、できれば渋谷らくごのように30分×4人というような、ちょっとディッシュ的な感じで落語会、独演ではなくて落語会として観たいという需要も多いです。ユーロスペース、ユーロライブとも協議をいたしまして、試験的にではありますが、この5日間、全高座配信ということになりました。

まず、全体的な業界でいうとですね、演者さん自身のチャンネルを立ち上げるというのは増えました。しかし、落語会、寄席の定席、毎月毎日やっているようなところで、ずっとすべてを配信するというのが、なかなかできない。やっぱりそうなると、演者さん、特に人気のある演者さんに人気が集中してしまうというか、維持ができないということもあり、より出来る演者さんと出来ない演者さんの差が広がってしまうという。それはあまりにも、ということなので、渋谷らくごとしては全ての演者さんに、やりたいというお気持ち、出たいというお気持ちにお応えできるように、ちょっと環境を整えました。

ですので、演者さんにも様々なパターンがいらっしゃいます。例えば、どうしても高座に出たいという人もいれば、やっぱりお客さんと一緒に作っていくべきものなので、ちょっとできないとかですね、これ、いつまで続くことなのかわからないので、もうちょっと考えたいとかですね、あるいは演者さんの中にはご両親と同居している方もいます。万が一、配信する渋谷のスタジオ、ユーロライブですけれども、こういう往復でもらって、お母さんにうつしたり、あるいは師匠、大師匠という方々にもうつしてしまったりとかしたら、これは目も当てられない、ということころもあります。そうお考えの方もいらっしゃいますので、出てる演者さん、出てない演者さんに対して、あれこれ言うのは避けてくれればと思うんですけれども。

こういった事情も考慮いたしまして、とにもかくにも仕事がないんですね、演芸は。私も含めてなんですけれども。このままだと生活も成り立たない。給付金などの手続きもあったりします。けども、それにしても今すぐ現金がないと、ちょっと助からないという人も出てくるかと思います。これがいつまで続くかもわかりません。逆に緊急事態宣言が解けた後の6月、7月、8月、こういったところも、逆にお客さんの方が自粛をして来ないというのが十分想像つくわけですよね。完全にワクチンができるまでは、人が集まる所には行きたくないという。

しかし、政府が緊急事態宣言がなくなったから補償しない、という形に今後なったらエンタメ産業、これからどんどん痩せ細っていくかと思います。渋谷らくごに関しては、運営するユーロスペース、ユーロライブ、こちら劇場ですので、後がない状態でございます。ですので、できれば、応援していただく意味を含めて、劇場しかり、演者さんしかり、ですけども、本当にね、お客さんの前に出して恥ずかしくない高座を務めて頂けると思います。ただ、お客さんと一緒に作っていくようなタイプのものではないので。本当に画面の前でお酒を飲みながらでも観て頂いて、構わないんですけれども。

演者さんも初めてのことです。われわれも初めてのことです。色々初めてのことが多いので、逆に配信ならではの面白さというのもあるかもしれません。いつもは劇場に来て一緒に楽しむということを目指してきたわけなので、ある意味、今は地方にいらっしゃる方、海外にいらっしゃる方でもオンラインで楽しめるということになっております。noteというサイトがあるんですね、プラットホームと言ってもいいかもしれませんが、noteさんとのコラボによりまして、noteに書かれている記事を購入するという形でクレジット決済、携帯キャリア決済のみになります。各公演のページからご購入いただけます。会員登録とか一切必要ありません。新しいアプリをダウンロードする必要もありません。

8日の初日には花緑師匠や一之輔師匠も登場しますし、今月は特別に菊之丞師匠や談笑師匠も登場します。本当に若手からベテランまで、ありがたい、出たいと言っていただけた演者さん、そして観たいというお客さんもあろうかと思いますが、これはちょっと成り立たない、となると来月はありません。これが赤字になってしまうとですね、やっても意味がないものになってしまうので。出演料はいつもの公演と同じ分だけ払いますので、どれだけお客さんが見ていただけるかわかりませんが、有料オンライン生配信ということになりました。ただし、クオリティは私が保証したいと思います。前説、後説もなるべく私が登場したいと思っていますので、観られるときに、ということでお願いいたします。

今ね、アーカイブ化も当たり前の時代になっている、無料も当たり前になっていますけれども、それに慣れちゃいけなんですよね。どうやってお金にして演者さんに還元していくかということも考えなきゃいけないと思っています。せっかくオンラインなんだから、アーカイブ化してくれないんだという要求をしてくる方が必ずいらっしゃるんですけれども、それは業界全体が痩せ細っていくだけでございますので。まず人を集めるということが大事、ということもあるので、一之輔師匠や菊之丞師匠はね、初めて観るという人のためにオープンで、まず自分のチャンネルで無料公開ということは当然のことなんですけれども、一方でそれをどうやってお金にしていくかということも、これから考えなきゃいけないと思います。

色々と葛藤はあったんです。できればね、一席目だけでも無料で公開したいとかね。色々な人に観ていただきたいというのもあるんですが、まあ言っても、渋谷らくごでリアルに楽しんでも、せいぜい180人来れば、もうお客さんはそれ以上は入れないという所でございます。むしろ、これをチャンスにしていって、普段の劇場よりも多くの人に観て頂けたら、こんなに嬉しいことはありません。ですので、是非是非、万障繰り合わせの上、お友達にもバンバン薦めちゃってください。こういった落語というものに触れる新たなチャンスかもしれない。ひとつ敷居を下げるチャンスかもしれません。一台のモニターで家族で楽しめちゃうんですよ。是非、皆さん、楽しみにしてくださいと思います。料金は普段のライブより若干下げてあります。

演者さんを助けると思って、劇場を助けると思って、そういうお気持ちがある方は買って頂ければと思います。リアルタイムでの有料配信、アーカイブはありません。というわけで、急遽のお願いでございました。サンキュータツオでございました。(以上)

長くなり、恐縮です。ただ、読んで頂ければ、「渋谷らくご」さんの落語ほか演芸への熱い愛情があり、演芸の世界が今、現実に抱えている問題をいかに真剣に考えに考え抜いて、最適と思う選択肢を選んだことがよく伝わってくると思います。何も説明を加えることはないでしょう。そして、5日間、11公演、きちんと配信することができた、素晴らしいです。キュレーターのサンキュータツオさん、ユーロライブさん、ユーロスペースさん、noteさん、vimeoさん、そして何よりも無観客公演に出演された演者の皆さん、本当にありがとうございました。

5月8日(金)桂春蝶「山之内一豊と千代」柳家花緑「火焔太鼓」

外出自粛でワイルドに髭を生やした春蝶師匠。一豊と愛馬との心の会話、やりとりをスローモーションで描く演出が良かった。早速、「千夜一夜の物語」の購入申し込みをFacebookでさせていただきました。花緑師匠、甚兵衛さんの明るいキャラクターが愉しい!定吉が太鼓の埃をはたけと命じられて、ドラマーのように♪ツンチャカ、ツンチャカと叩くところ、師匠らしい。漫画チック落語がいいですね。

5月8日(金)三遊亭青森「バスルーム心中」「お祭佐七」古今亭駒治「十時打ち」立川談洲「締め込み」春風亭一之輔「子別れ」

青森さん、シャンプーとコンディショナーの禁断の恋。聴くたびに進化して面白くなっている。ボディソープの旦那源さんが仲介するのが最高!もう一席は古典だが、僕は「圓生百席」でしか聴いたことがなかった。勉強熱心かつ話芸の才あり!駒治師匠、「十時打ち」は最高ですよね。鉄道オタクのマニア度が高い噺ですが、そうでない人も“すっぽんの谷口”の黄金の人差し指には心奪われるのでは?サゲの鹿児島の老夫婦も最高です。談洲さん、さすが談笑一門!夫婦喧嘩が褒め殺しに!仲の良すぎる夫婦に呆れる泥棒。捻ってます!一之輔師匠、マクラの自称「自粛警察」、イイネ!ラブホテル街を巡回するウソ話が受ける!トムとジェリー、どっちが好き?も。本編の上手さは言わずもがな。

5月9日(土)古今亭志ん五「紺屋高尾」立川談笑「イラサリマケー」入船亭扇辰「蒟蒻問答」玉川太福/みね子「男はつらいよ 寅次郎忘れな草」

志ん五師匠、新作だけでなく、古典がいいですよね。淡々とした、だけどちょっと特徴のある語り口での恋愛の噺、人情噺。久蔵の気持ちになって聴き惚れました。談笑師匠、出た!「居酒屋・改」というより、もはや創作の作品として完成し、定着しましたね。安定した刺激物っていうと、変な言い方かもしれませんが。外国人蔑視と言う奴がいたら、これは外国人労働者への愛情だと言い返したいです。扇辰師匠、渋い!いぶし銀。特に後半、蒟蒻屋六兵衛親方と延暦寺高僧とのちぐはぐ掛け合いの面白さ。「おし、そこひ、つんぼ」が出てくるのはネット配信ならでは。コンプライアンスなんか関係ないぜ。太福さん、寅さん第11作(1973年)。浅丘ルリ子演じるマドンナ、旅回りのキャバレー歌手リリーが寅さんに惚れるの、よーくわかる。

5月9日(土)春風亭昇々「指定校推薦」橘家圓太郎「祇園会」入船亭扇里「叩き蟹」橘家文蔵「試し酒」

昇々さん、無観客は演者にも想像力が要求される、と。笑い声を想像しながら演じることが必要で、それは自分に自信がないとできないこと。そこで新作をかけてきた度胸はすごいです。圓太郎師匠、外出自粛で小学校4年生の子どもに勉強を教えているそう。江戸っ子の威勢のよさと、京都人のおっとりさの演じ分けがお見事!扇里師匠、初めて聴いた噺で、ありがとうございました。最後の方で、「ああ、圓窓五百噺」にあったなあ、と思いましたが、甚五郎モノでも、特に人情噺として優れた噺だと感じました。文蔵師匠、豪快な呑みっぷり。一合目、二合目、三合目と最後の五合目まで、呑み方を変化させている技術もさることながら、無観客だからか、大層、間を大きく取って演じているのに脱帽。

5月9日(土)柳家緑太「パラグライダー体験記」「鷺取り」

「おしゃべり緑太の会」と銘打っているだけあって、40分以上はマクラ(一応、「パラグライダー体験記」とネタの名前がつきましたが)が実に面白いです。実話をいかに観客に愉しく聴かせるか、って噺家さんの腕の見せ所だと思うんです。昔から伝わる古典的な小噺も悪いとは言いませんが、僕は徒然なるままに、だけど、きちんと仕上がっているマクラを話せる人が好きです。市童さんとの浮遊体験、面白かったぁ。

5月10日(日)柳家花いち「だくだく」柳家わさび「亀田鵬斎」柳家小里ん「笠碁」瀧川鯉八「ぷかぷか」

花いちさん、「オラウータンの赤ちゃん」「インドネシアの郵便局員」に続き、最近、「川端康成に似ている」と言われるようになったと。うん、わかる、わかる。仏壇は、「弘法大師様、観音様、マリア様、そしてアマビエ様」、掛け軸には「コロナが終息して安心して暮らせますように」。わさび師匠、YouTubeの映像で「パンダの赤ちゃんのでんぐり返し」が300万回再生になった、それに比べて私のチャンネルは…と、「妬み、嫉みの塊です」と。芸に物差しはない!と興味深い名人論が良かった。落語もコピーじゃダメで、個性が大事。大衆演芸で売れると、その噺家が教材になってしまう。勲章なんか貰わない方がいい。自分が楽しむことが大事で、食っていけない方が芸が伸びるのではないかと。人間はどうしても数値化したがるし、その方が目標を立てやすいというのはあるが、逆にそれを否定した方がいい。懐かしいファミコンの高橋名人の例まで出して熱く語り、極めて平静で奢り高ぶりのない名人譚を。お見事!小里ん師匠、先代小さんのプレーンな落語をそのままにご提供いただき、感謝。鯉八師匠、そう、師匠なんですね!おめでとうございます!まさに「なんかいいことないかなあ」であり、「いいことなくてもいいよね」の現代であります。

5月10日(日)立川談吉「死神」三遊亭遊雀「堪忍袋」三遊亭粋歌「夏の顔色」隅田川馬石「粗忽の使者」

談吉さん、「暗い噺を軽く」演じる。呪文は「パルス!」のみ。短い方が優れていると。古典も新作も両方面白い、もう真打でいいんじゃない?というような高座。遊雀師匠、YouTubeというのは伯山から教わった、でも、まさか自分がやるとは思わなかったと。登録者が500を超えて、大型旅客機の満席と同じ!と。久しぶりに電車に乗り、山手線で乗り物酔いしそうになったとか。堪忍袋の表現を鯉八師匠の真打披露目の手ぬぐいを使う気遣い!粋歌さん、ある意味、「なにもないことの素晴らしさ」を表した噺は、現在にピッタリ。SNS疲れの孫や、インスタにアップが日課のおばあちゃん。現代社会の人間関係への切り口、最高!馬石師匠、先日出演した、やはり無観客のAbema寄席で「王子の狐」をやったので、兵庫の実家のお母さんに連絡し、それを聞いた弟が観た。「あの狐の噺、あたし、好きだから」。おそらく「安兵衛狐」と勘違いしている、だけど落語なんてそんな程度でいいんじゃないかと。御意!

5月11日(月)神田鯉栄「寛永の三馬術~誉れの梅花 愛宕山」古今亭文菊「明烏」

鯉栄先生、車内アナウンスの「田端の君」の続編、聞きたいです!クロネコヤマトの配達の男性にときめく乙女心!妻もわかると言っていました。それも、3人いるんだけど、そのうちの1人にだけ、印鑑がないふりして、ボールペンを受け取り、サインするという。もう!文菊師匠、気取りキャラ、きょうは少なめ。やっぱり観客がないと、やりがいがないよね。古今亭の暖簾を大切にした志ん朝師匠オマージュっぽい高座。

5月11日(月)立川笑二「青菜」柳亭市童「高砂や」柳亭小痴楽「粗忽長屋」柳家小八「紺屋高尾」

笑二さん、隠し言葉がなかなか呑み込めない植木屋に対する旦那に対し「あきらめましたね」という台詞がグッド!強引なお屋敷ごっこを進める植木屋が愉しい。建具屋の半公の「いいよ、植木屋で」もグッド!市童さん、本寸法!でダレずに聴かせる実力がすごい。喉もいいので、気持ち良い。「高砂や」を、最後のはやすみのえに着きにけり、までしっかりと言うご隠居が最近見当たらないので、なおさら良かった。小痴楽師匠、テレビやラジオに放送禁止用語はなくて、自粛用語なんだそうで、と。その通り!だから、むしろ自由かな、と思えるネットの方がAIが反応してすぐに配信中断とか、削除とかをしてしまうかもという指摘も鋭い。イイネ!小八師匠、久蔵の告白に真に迫るものがあった。「あちきは主の正直に惚れんした」、「久はん、元気?と言ってください」。すごみがありました。

5月12日(火)雷門小助六「抜け雀」蜃気楼龍玉「大坂屋花鳥」

小助六師匠、名人譚をじっくりと。龍玉師匠、「嶋衛沖白浪」からの一番メジャーな抜き読み。この部分は一話モノとして成立するから、先代馬生から代々、金原亭に受け継がれているのが嬉しい。また、この手の噺は、龍玉師匠の手にかかると痺れる。そして、満足感。愛する男、路上強盗殺害の梅津長門を十手たちの目をくらまし、放火までして逃してやる花鳥花魁。ドラマチック!

5月12日(火)立川寸志「おすわどん」立川吉笑「明晰夢」春風亭百栄「天使と悪魔」古今亭菊之丞「幾代餅」

寸志さん、珍しいネタをありがとうございました。歌丸師匠が掘り起こしてかけていたことは存じていましたが、実演は聴いたことがなく嬉しかったです。「反応なしで、シレッとできる」ネタとおっしゃっていましたが、小板橋喜八郎の聞き違え、落語っぽくていいですね。吉笑さん、何回か無観客落語をやったが、反応がないから、どうしてもどんどん押しの芸になり、声を張るようになり、「声が飛ぶ」ようになってしまったと。声がかすれるというのとは違うのかしら?将棋のオンライン対局、オンラインの戦闘ゲーム、外出自粛の過ごし方エピソードも面白い。擬古典、マトリョシカのようなメタ落語。いつ聴いても愉しい。百栄師匠、高座に上がるところから可笑しい!あたりをキョロキョロしながら、挙動不審な感じで座布団に時間をかけて座る。第一声、「誰かに追われているような気がして」。寄席が懐かしいと言って、楽屋口の味も素っ気もない鉄の扉、かび臭さ、変色したビニル傘がたくさん刺さった傘立て、色物の師匠の汗が滲みた長襦袢が吊るしてあるハンガーのすえた匂い、と列挙していくのは百栄師匠のユーモアセンスでしか表現できない可笑しさだ。ちょいちょい、小さいギャグを入れて「ほら、なかなかつまらないでしょ!」とか、圓朝を「落語中興のラ!…シ?…ソ!」とぼけて、芝浜の三題は「ブランコ?ハンモックに1ドル札?あと、なんでしたっけ?」。もう最高だ!菊之丞師匠、古今亭のお家芸をきっちりと。

コロナ禍によってはじまった配信落語。無料、アーカイブ対応当たり前と思われたら困る。演者は食っていくために、喋る、読む、唸る。ボランティアではないのですから。やっぱり、寄席やホールの座席に座って、ナマの高座を聴きたいです。早く、そういう日が来ることを待ちわびています。それまでの「つなぎ」ですから。

繰り返しになりますが、キュレーターのサンキュータツオさん、ユーロライブさん、ユーロスペースさん、noteさん、vimeoさん、そして何よりも無観客公演に出演された演者の皆さん、本当にありがとうございました。