「月刊少年ワサビ」ができるまで 視聴者参加型の配信落語はデジタル時代の新しい手法だ

YouTube「わさびのチューブ」で、「月刊少年ワサビ133号」ネット会議①②(2020・04・10&21)本編(04・28)打ち上げ(04・29)を観ました。

12年目に入った、柳家わさび師匠の「月刊少年ワサビ」が、コロナ禍がきっかけとなった配信によって新たな進化をしはじめている。向かい風を追い風にしてしまうというのか、ネガティブをポジティブに変換するというのか、とにかく最近のわさび師匠の取り組みには脱帽である。

過去に三題噺で創った落語を紙人形芝居という形で配信スタートしたことについては、4月20日にこのブログでご紹介したが、月1回継続していた三題噺の創作、披露についても、オンラインであることを利用し、視聴者参加型の番組にしているところに、先見の明があるというか、デジタル時代の新たな落語の有り様を模索しているように感じてならない。と、御託を並べてもしょうがないので、実際に「月刊少年ワサビ133号」ができるまでの過程を追いながら紹介させてください。

3月30日「月刊少年ワサビ132号」開催。「四畳半王者」ネタおろし。

終わりに次回のお題をチャットで視聴者に書き込んでもらい、それを師匠ができるだけ拾いながら、適切なお題を説明を加えながら、3つ選んだ。「テレワーク」「ざわざわ」「春キャベツ」。

4月10日「月刊少年ワサビ133号」ネット会議①「おすすめ資料、ありますか?」開催。

春キャベツ。寒玉(系)キャベツと春キャベツの2種に分かれる。前者は焼きそばなど過熱料理に適している。堅い。厚い。一方、後者は3月から7月初めに出回る(地域差あり)。柔らかく、丸く、小さい。前者とは別物?と思いたくなる美味しさがある。サラダなど生食に適している。庖丁の切れ味も違う。(こういう、農家さん、八百屋さん、主婦の方の目線が欲しかった!と師匠)。モーニング娘のメンバーのユニットで「ピーベリー」というのがあり、MV「キャベツ白書 春編」を観た。映像は寒玉キャベツだった。歌詞も「嫌いだった、キャベツもナスも」とあり、なぜキャベツ白書なのか不明。そういえば、キャベツくんというキャラクターもあるという視聴者からの情報も。

ざわざわ。思い浮かべるのは福本先生の「カイジ」ですよね。/※これについては僕は全く知らなかったので調べた。「賭博黙示録カイジ」1996年「週刊ヤングマガジン」でスタートした漫画。作・福本伸行。「ざわ…ざわ…」という擬音がよく使われ、ネット民の間で多用されるように。その後、破壊録、堕天録と続き、2017年「堕天録カイジ 24億脱出編」がスタート、現在も連載中。/あと、「ざわざわ森のがんこちゃん」Eテレの幼児向け道徳番組(1995年スタート、2015年から「新・ざわざわ森のがんこちゃん」になり現在も放送中)。※がんこちゃんキャラが大人にも人気となり、2017年にBSプレミアムで「がんがんがんこちゃん」全10話放送、好評だったため、18年にさらに8話放送。

設定が、数年億後の地球で、がんこちゃんは恐竜。棲息する森の木の葉や枝が触れあっているさまを「ざわざわ」と表現したのではと。実はこの番組の裏テーマは環境破壊という指摘、鋭い。2000年公開の映画「ざわざわ下北沢」。ぬるま湯的な温かさのある下北沢を離れるという物語らしい。肌感覚で知る下北沢がざわざわ?それとも、単なる語呂?大勢の人々が集まってざわいついているイメージはありますね。それと落ち着きのない心も、ざわざわか。寒気はぞくぞく、鳥肌はぞくっ、という擬音考察も面白い。

テレワーク。情報通信技術を活用した、場所や時間に捉われない仕事。リモートワークはオフィスから離れた場所で働くこと。「情報通信技術を活用」がミソではないかと。テレというのはギリシャ語で「離れたところ」という意味。テレビジョン、テレパシー、テレポート。自宅で働いている、独りでやっている方がテレワークっぽいのでは。カスタマーセンターは、「自宅」「独り」という点で、当てはまるか、あてはまらないかの議論も。アマゾンは配達人がいるから、少しはずれる?データのやりとりを、会ったことも話したこともない人とやるイメージはあるよねと。あと、師匠が電話占い師に興味津々。

4月21日「月刊少年ワサビ133号」ネット会議②「この『あるある』、正しいでしょうか?」開催。

ざわざわ。表がざわざわしていると見に行くけど、大したことない。無理やり、ざわざわした雰囲気を演出しようとするとうまくいかない。開演前のざわつき、客入りが気になる。ざわざわには、大勢の人が集まっているさま、心が落ち着かないさま、の2種類があるのではないか。どよどよ、わあわあ、とは違う。ブルートゥースイヤホンの音漏れが気になる。「ご静粛に!」は2回以上言うことになっている。

春キャベツ。虫がいそうで探しちゃう。平野レミさんいわく「茎を捨てるとき、勿体ないと躊躇する」。擬人化すると、頭が丸い子どもになりがち。外葉の農薬強め。エリザベス女王の襟が外葉に似てる(笑)。切る音や香りに感動する。

テレワーク。テレ会議で、寝ぐせのまま。上だけ正装。昼夜逆転で業務。ちゃんと朝に起きられると自分を褒める。伸びをするだけで、かなりの運動に感じる。一日外出しないと「お!」とちょっと感動する。ダウンロード中に家事をする。心から休息したくてスマホを機内モードにする。

いやはや、わさび師匠と視聴者のやりとりで、噺家は言葉の商売だと痛感した。その言葉のニュアンス。その言葉からイメージされるもの。自然に発した喋りのように見えて、緻密な計算の上に成り立った言葉の魔術師。そんなイメージを持ちました。

4月28日「月刊少年ワサビ133号」 三題噺「理想の雑音」完成、発表!

そして、わさび師匠が創作した噺のタイトルは「理想の雑音」。師匠はネタ作りのために、ファミレスや喫茶店を利用する。その理由は適度な「雑音」がある方が集中できるから。とマクラを振って、本編に。

ネット社会、IT化の波の乗り遅れないように、「わが社も明日から実験的に一週間、テレワークをします。Webカメラやパソコンが欲しい人は貸与します」と部長から発表がある。超アナログ人間の主人公は困惑。通勤の往復の電車の中でノイズキャンセリングイヤホンをしながら、車内の程よい雑音の中で、行きにきょう一日の仕事の段取りをまとめ、帰りにきょう一日の仕事の反省をまとめるのを「ゴールデンタイム」と呼び、習慣としていたが、電車通勤がなくなると、その「ゴールデンタイム」を自宅でどうやって作るのか?に悩む。RPGのラスボス曲、睡眠用講談、ニュース、新国立競技場工事現場音…色々試してみたが、理想の雑音がみつからない。そこで5つの動画、それも落語を同時再生すると、これがいける!スピーカーにつなぐと、仕事がはかどる!だが、彼のアパートの近所の人たちは「何があった!?」と集まってしまう。通報で駆け付けた警察官がやってきて、怒られるかと思いきや…。是非、「わさびのチューブ」でお楽しみください。

で、次回のお題も「そそる」「断捨離」「ビニールシート」に決定。

4月29日「月刊少年ワサビ133号」打ち上げ

居酒屋わさび。缶ビールをあけた、わさび師匠がほろ酔い気分で、視聴者と「反省会」と称して、談笑。チャンネル登録者数が1000人を超えると、スーパーチャット、いわゆる投げ銭システムが導入されるそうで、現在500人は突破しました。頑張れ!三題噺をつくるのに、「歴史は調べなくていい」。キャベツは1850年に日本伝来。横浜で外国人向けに栽培開始。1872年、キャベージという名前がつく。とても大切な作業だが、そういったことに縛られると、納期(ネタおろし)に間に合わなくなる。アイデアのヒントにする、くらいにとどめる。

学校教育の在り方。受験中心。「自分のやりたいことを探す」「ニーズに応える」、そういう勉強をしなくちゃいけない。今、売れているパフォーマーは、受験中心の教育に逆らってきた人たち。現在の法律、100年前に作られた。教育と結婚については見直さないと。

三題噺を考えることは、人間の業を考えることなんだ。作家はある程度の未来予測ができる人たち。「ドラえもん」は、ずっと昔にスマホを予知していた。人間の業を肯定するための道具を考えた。荒木飛呂彦先生の「ジョジョの奇妙な冒険」もそう。星新一先生のSF小説も。反省になっていなくて、すみません!と師匠。だけど、とってもいいことを喋っていらっしゃる。

チャンネル登録が1000超えたら、ラインスタンプ作ろうか、とも。イイネ!「紙人形芝居」も一期5作品の視聴回数がすべて1000超えたら、あのキャラクターの動くスタンプも!

「月ワサ」、初期は三題噺と、古典ネタおろし一席を自分に課していたけど、さすがに大変で、100号を超えたところで、古典ネタおろしを2か月に1回にしたと。そいでもって、練り直しもやっていきたいと。大賛成!!!

「月刊少年ワサビ134号」(そそる・断捨離・ビニールシート)ネット会議①「おすすめ資料、ありますか?」は5月8日に、ネット会議②「この『あるある』、正しいでしょうか?」は14日に開催されました。アーカイブで見ることできます。「134号」の新作発表配信は5月28日の予定です。お楽しみに!

なお、「紙人形芝居」も第三期に入り、「鹿野球」(走馬灯・大腿二頭筋・お鹿さま)、「ゴバァッ!!!」(成りゆき・居酒屋・流れるプール)の2作品配信中。第二期の「第2回紙俳優アワード」もありますので、色々と楽しませていただきます!アーザスッ!