談春塾 立川談春「五貫裁き」、そして新作ストロング 三遊亭東村山「泉の主」桂伸べえ「かまぼこiPhone」林家きよ彦「憧れのTOKYO」

「談春塾~立川談春独演会」に行きました。「よかちょろ」と「五貫裁き」の二席。
「五貫裁き」。がりがり亡者の徳力屋を懲らしめるのに一番良い方法を越前守は採ったということだろう。風来坊だった八五郎が了見を入れ替えて八百屋をやると言い出した。それを応援する意味でも一両か二両寄進してあげれば良いのに、番頭の佐兵衛は三文、旦那の萬右衛門にいたっては一文しか出さないという。それを正面切って「もっと出せ」と言うのではなく、一文の銭を畳に叩きつけた八五郎を罰して、過料五貫文を言い渡す。その代わり、日掛けで一文ずつの支払いを認め、それを毎日徳力屋経由で奉行に納めさせるというからくりが面白い。
徳力屋はこの裁きで自分が「勝った」と思ったが、それは間違いであった。一文を奉行に届けるのは小僧では許されず、萬右衛門本人、しかも町役人五人組付添いの上と言われて一筋縄ではいかないことに気づく。五人組にも相応の手当を払わなくてはいけない。しかも八五郎は夜明けとともに、早いときには真夜中に徳力屋を訪ね、一文を持って来る。徳力屋を寝かせないという大家の知恵だ。「お奉行さまに納める大事な一文なればこそ、夜も寝ないで持って来た」。これに対し、「奉行もヘチマもあるか!」とキレると、そこに町方常廻りの役人がいて、きつくお咎めを受けてしまうという…。
安らかな眠りがほしい…徳力屋は音を上げる。このままいくと、13年以上こんな生活が続いてしまう。最初は三文、一文の話だったのに…後悔しても、もう遅い。十両で示談にしてくれと八五郎に懇願するも、これを拒まれると、「一体、いくら差し上げたら許してくれるのだ!」と本音が出る。そこで大家はここぞとばかりに攻め込む。「八五郎は乞食じゃない。汗をかいて稼ごうと決心したんだ。使ってこそ、金は価値を生む。ましてや、八五郎の祖父には昔奉納金の件で恩義があるはずだ。糞を食らって、西へ飛べ!」。
徳力屋萬右衛門は「了見違いでした」と初めて自分の非を認め、五十両を払い、八百屋を開業するための店まで用意してやった。商売というのは心掛けが大切で、儲けることばかりを考えてはいけない。そこに人情がなくてはいけない。そんな心得を教えてくれる一席である。
「新作ストロング」夜の部に行きました。
「撃たれた」柳亭信楽/「泉の主」三遊亭東村山/紙切り 林家八楽/「かまぼこiPhone」桂伸べえ/「ロボット長短」林家きく麿/中入り/「憧れのTOKYO」林家きよ彦/「コンクール必勝大作戦」古今亭今輔/「サザザさん」第6話「あゝ入れ墨」坂本頼光/「二人の秘密」弁財亭和泉
東村山さんの「泉の主」。イソップ寓話「金の斧銀の斧」を斜めに切り取った感じ。泉の主が何度も出てきて、お前の斧はどれだ?と繰り返し訊くところ、主が後半嫌気がさしているところが面白い。お婆さんが持たせたハンドクリームで手が滑って斧を泉に落としたり、おにぎりを泉に落としたら主が食べていたり、アレンジメントに可笑しみがあった。
伸べえさんの「かまぼこiPhone」。この人はフラで笑わせる。イタリアンレストランでの合コンでサトミちゃんがパスタをうまくフォークに巻けないで、パスタはカルボナーラなのに語尾が「・・・ボロネーゼ」になっちゃうところは完全に伸べえワールドである。新型iPhone実は蒲鉾板でサトミちゃんのQRコードを読み取ろうとする発想も伸べえさんならでは。「パエリアの前に連絡先を交換」は合コンの鉄則というのも面白い。
きよ彦さんの「憧れのTOKYO」。90年代のバブル華やかなりし頃に憧れる男女の出会いが面白い。コスパやタイパを重視する令和の時代に抗うトレンディなミツグ君とバブリーなユウコさんの恋模様が新橋の焼き鳥屋が舞台というギャップも可笑しい。肩パッド、ポケベル、マークⅡ、ギロッポン、お立ち台、生ハムにメロン…「嗚呼、昭和よ平成よ」と叫びたくなるのが良い。


