「男はつらいよ」全作浪曲化に挑戦! 玉川太福の世界

日本橋社会教育会館で「玉川太福 男はつらいよ 全作浪曲化の挑戦」を観た。(2020・02・24)

山田洋次監督の「男はつらいよ」が去年、第1作公開から50周年を迎え、暮れに第50作「お帰り 寅さん」が公開された。その映画の浪曲化に挑戦しているのが、玉川太福である。この日は、第13作「寅次郎恋やつれ」(ネタおろし)と第9作「柴又慕情」が口演された。どちらも、マドンナが吉永小百合の作品である。

太福さんが「男はつらいよ」の浪曲化に取り組んだきっかけは、2016年11月。もともと太福さんの師匠の福太郎の芸の上での叔父にあたる玉川桃太郎師匠のために第1作を大西信行さんが浪曲台本を書いた。最近発売された「浪曲師 玉川太福読本」によると、第1作公開から数年の頃で、桃太郎の口演を吹き込んだ8トラックが発売され、太福さんのところにも音源があり、「是非、演ってみたい!」と、山田監督に「上演許可願い」の手紙を書いたところ、「是非、おやりください」とのことだったので、木馬亭でゲストに活弁士の坂本頼光先生を迎えて開いたところ、満員盛況で、「ほかの作品もやらないの?」とお客様に言われ、新作を手がけようということに。竹下恵子がマドンナで、ウィーンが舞台の第41作「寅次郎心の旅路」(僕はこの記念すべき太福オリジナル第1作には不思議と縁がなくて、去年8月にようやく聴くことができた)

僕が太福さんと知り合って、最初に「男はつらいよ」シリーズを聴いたのは、調べてみたら、驚くことに2017年1月の渋谷らくごで、「寅さん故郷に帰る」。大西先生の第1作は帰郷編と恋愛編の二つに分かれていて、前者のほうだ。ちなみに後者は「恋する寅さん」として、僕は2018年5月に道楽亭で開かれた「玉川太福五夜」の第三夜で聴いている。

太福さんが本格的に「男はつらいよ」全作浪曲化に取り組みはじめたのは、2018年から道楽亭でスタート。1月に第2作「続・男はつらいよ」、4月からは松竹に正式な公認をもらい、山田洋次・朝間義隆共同脚本となった第7作以降を浪曲化することになり、「奮闘編」を。その後。第8作「寅次郎恋歌」第9作「柴又慕情」第10作「寅次郎夢枕」第11作「寅次郎忘れな草」第12作「私の寅さん」と続いている。途中、太福さんの出身地新潟からの要請があり、第31作「旅と女と寅次郎」(マドンナは都はるみ)を口演している。NHKラジオ「すっぴん!」インタビューに、2018年5月に出演いただき、パーソナリティーの劇作家・宮沢章夫さんが絶賛したのを覚えている。

山田洋次監督も「メロディである節がストーリーを伝え、啖呵でセリフを語る浪曲スタイルが『男はつらいよ』の世界にピッタリとあう」とコメントして、太福さん自身も「評判が良いのはオリジナル(映画)が面白いんだから、考えてみたら当然」と書いている。

だけど、そんなに簡単な作業でないことは、考えてみればわかる。100分以上の作品を30~40分にまとめなければいけないこと、登場人物が多いこと、ち密に計算された脚本を単純にカットできないことは想像に難くない。「浪曲師 玉川太福読本」によると、やはりマドンナとのやりとりを中心にして、大好きなお茶の間シーンは泣く泣く削るとか。単なるダイジェストとか、あらすじの羅列にならない工夫とか、色々と腐心している太福さんだが、楽しい作業だと取り組んでいるのが嬉しいし、何より我々観客がその成果を享受できる喜びはひとしおだ。

国民的映画「男はつらいよ」が、浪曲によって、さらに泣き笑いの人間ドラマになる。太福さんが生来持つ「人としての温かさ」が高座に現れている。次の口演は、5月16日。第14作「寅次郎子守唄」。楽しみ!