まんじゅう大帝国、見~つけた!
国立演芸場で「第489回花形演芸会」を観た。(2020・02・22)
2018年度(2018年4月~19年3月)の花形演芸大賞を受賞したのは動物ものまねの江戸家小猫先生だった。そこで銀賞を受賞した芸人が、翌年度(2019年度)のレギュラー出演者となり、年2回の高座のチャンスを3年間与えられる。さらに、その高座が審査され、金賞の対象になる。また、金賞受賞者は翌年度の大賞の対象になる。ややこしいシステムの説明だが、小猫先生は2016年度銀賞、17年度金賞、18年度大賞とトントン拍子に受賞した極めて稀な例で、それも色物でいうと、爆笑問題、ポカスカジャン以来の色物の大賞ということで注目された。
今回の出演でいうと、小辰と雀太は2018年度、馬るこは2017年度、頼光は2016年度銀賞受賞者。ちなみに、頼光は2018年度金賞受賞している。美るくとまんじゅう大帝国は受賞者でない枠からの出演で、デビュー20年以内の芸人に年1回のチャンスが与えられ、そこで銀賞を狙うというわけだ。
なんでこんなにクドクドと説明しているかというと、この日のまんじゅう大帝国の漫才が非常に面白かったからだ。お恥ずかしい限りだが、僕は初めてこの漫才コンビの名前を知り、初めてその高座を観た。衝撃だった。普段テレビのお笑い番組を観る時間も余裕もない僕は、あとでプロフィールを調べて、なるほど!と思った。2016年コンビ結成、アマチュアなのにM1グランプリで3回戦まで進出して周囲を驚かせた。2017年プロデビュー。以来、お笑いライブでは人気だそうで、それも納得の実力を観た。
2人とも大学の落研出身。ボケの竹内一希は日芸。ツッコミの田中永真は東京理科大。大学落研の選手権「策伝賞」や「てんしき杯」で優勝、準優勝などの実績がある。この日に披露した、「アメリカンジョーク」は、普通の出来事をいかにもアメリカンジョーク風のリズムで竹内が喋り、それを田中が突っ込むというスタイル。徐々にバージョンアップしていく。これが文章では表現できないほど面白いのだ。田中の突っ込みが、実に知性的で、いわゆる定型の「ナンデヤネン!」的なものとは一線を画す。
日常にあった出来事をやりとりするうちに、なんでもおなじみの古典落語になってしまうネタも最高だった。さすが、落研出身。しかもリズムとテンポが絶妙。そして、わかった。爆笑問題の事務所、タイタン所属なんだ。このリズムは、ちょっと大先輩である爆笑問題に似ていて、さらに知性があるところもよく似ている。別に爆笑の大田さんは、「何も教えているわけじゃないし、勝手にやればいい」とコメントしているらしいけど、これは落語の世界に似ていて、入門した小三治師匠からはほとんど教わっていない三三が、二ツ目から真打になるときもそう言っていた。楽屋袖から芸を盗む。師匠に芸が自然と似てしまう。芸とは改めて教わるものではないのだということがわかる。もしかしたら、爆笑問題以来の花形演芸大賞を漫才が獲る日がいつかくるかもしれない。(※その後、まんじゅう大帝国は2019年度花形演芸大賞銀賞受賞が決まりました。)
ちなみに、雀太さんの「八五郎坊主」も桂枝雀DNAを感じたし、小辰の「いかけや」も扇辰師匠の端正さを感じた。
それと、もはや貫禄ある真打の馬るこ師匠の「八幡様とシロ」は、「元犬」の改作で、あまりも八幡様が全編に出てくるので演目名をこうしたという説明がマクラであった。僕は前々からその演目名だけは知っていたのだが、ようやくその高座に巡り会えて嬉しかった。すでに、末廣亭などで主任をとる実力も人気も兼ね備えた噺家なんだけど、なかなかしっかり聴く機会がなくて。これからは、もっと聴かなくてはと思った次第。手元にはミュージックテイトで購入した自主制作のCD(「青菜」と「禁酒番屋」を収録)があるのだけど、近日中に下北沢である独演会にいくので、馬るこ師匠の魅力は改めて書きたい。
林家彦星「無学者」
三遊亭美るく「半分垢」
入船亭小辰「いかけや」
まんじゅう大帝国
鈴々舎馬るこ「八幡様とシロ」
ゲスト)柳亭左龍「名刀捨丸」珍品!釈ネタらしい。
坂本頼光「豪勇ロイド」
桂雀太「八五郎坊主」