女流で、新作で。いま一番ノッテいる粋歌の才能~粋歌ヨコハマサロン

横浜にぎわい座のげシャーレで「粋歌ヨコハマサロン」を観た。(2019・06・29)

三遊亭白鳥師匠の新作落語に「落語の仮面」シリーズ全10話がある。美内ずずえ先生の人気漫画「ガラスの仮面」を下敷きに、演劇の世界を寄席の世界に置き換えたもので、大変に面白い。この「落語の仮面」を、子ども時代から「ガラカメファンだった」という三遊亭粋歌が、白鳥師匠の許可をもらって、3年前から高座にかけている。現在、第5話まで持ちネタにした。今年は第6話も習得したいとしている。

白鳥師匠の作品を他の演者が演じることで知られているのは「任侠流れの豚次伝」全10話。古典落語の名手・柳家三三が全10話に挑戦したのをはじめ、落語以外の演芸でも、講談では神田鯉栄が、浪曲では玉川太福が全10話踏破を目標にそれぞれ、講談化、浪曲化している。また、単発で第3話の「流山の決闘」は、別名「任侠流山動物園」と呼ばれる人気演目で、喬太郎師匠や一之輔も得意としている。

その一方で、この「落語の仮面」については、粋歌だけが取り組んでいる。何の取柄のない女の子・寺島花ちゃんが、落語を作る才能だけは突出していて、それを伝説の女流落語家・三遊月影に見いだされ、落語家として成長していく物語。花はもちろん、月影師匠、ライバルの女流落語家・立川あゆみほか、才能を妬み意地悪する楽屋の女流落語家等々、様々な女性を演じる場面が多く、「これは粋歌のために作った作品ではないか!」と思えるほどに、フィットしている。

白鳥作品独特の過激で危ない楽屋ネタギャグなどを、粋歌は独自の演出でマイルドに仕上げ、それがまた良い味わいを醸し出している。この横浜にぎわい座で行われている独演会も第一回から「落語の仮面」第1話をかけ、今回の第4回は第4話。NHK新人落語コンクールで優勝し、「笑点」の座布団運びに抜擢され、人気者に。地方の落語会ではお決まりの笑点メンバーの楽屋話をマクラで笑わせ、本編は小咄をちょっと演るだけで、莫大なギャラを貰えるため、次第に花は慢心してしまう・・・だが、ある事件がおきて落語界から追放され、原点を求めて旅に出るところまで。主人公・花がテレビ業界で天狗になるところを白鳥師匠は肝にしたが、粋歌はあえて「そこはあまり過激にしないで、花ちゃんが本来持つ純粋さを大切にした」と言っていた。

粋歌独自の「落語の仮面」は、これからどのように進化し、発展していくのか。粋歌のオリジナル新作は世の中のトレンドをテーマに様々な人間模様を描く才能に溢れ、こちらもどんどん評判があがっている。8月からは隔月で、らくごカフェでの勉強会「新作びゅーびゅー」がスタートする。再来年の真打昇進を見据えた彼女の取組みにこれからも注目していきたい。