談春塾 立川談春「九州吹き戻し」、そして二葉、研鑽!桂二葉「粗忽長屋」

「談春塾~立川談春独演会」に行きました。「替り目」と「九州吹き戻し」の二席。

「九州吹き戻し」。商家の若旦那だが、芸事全般において器用で、遊び尽くした上で幇間になり、それも飽きたからと江戸を出て、西へ西へと旅をした喜之助。肥後熊本に着いたときには、とうとう一文無しになった。江戸屋という旅籠を見つけたので、「これも縁」と思い、代官所にしょっ引かれるのを覚悟で逗留したら、何とこの宿の主人が江戸にいた頃によく知っていた成駒屋の旦那だった。

主人は喜之助が食通で、自分でも庖丁を持ち、あの八百善も太鼓判を押したという腕前を見込んで、この宿の料理人として働かないかと誘い、喜之助もこの話に乗る。さらに、筆も立つから寺子屋をやり、踊りも玄人はだしなので教える、さらに口が立つから幇間もやるという…まさに「芸は身を助く」を地でいく喜之助は、すっかり売れっ子になり、九州中にその名が轟き、肥後熊本の江戸屋は大繁盛となった。

喜之助は三年、江戸屋で頑張った。気がつくと祝儀は百両に達した。祝儀は貰うたびに主人に渡していたが、これは喜之助の働きで稼いだのだから喜之助のモノだと主人は言うが、喜之助は欲のない男で、「給金は別にきちんきちんと戴いている。店の者たちで分けよう」とまで言う。そこで、主人は「もう少し頑張って、二百両貯めなさい」、そうすれば分家して商いを始めることができると提案した。

だが、喜之助は百両貯まったなら、「江戸へ帰りたい」と考えた。主人に「母親が夢枕に立った。一旦戻って親孝行したい」と言うが、二親とは死に別れたことを知っている主人はその嘘はお見通しで、「さては里心がついたね」。江戸へ帰ることを認めてやり、貯まった百両は手を付けずに江戸へ帰れるように、奉加帳を作って「母親の病気見舞い」という名目で寄付を募り、二十両集まると、これに五両を足してやり、二十五両の路銀を用立てしてやる。何と優しい主人だろうか。

気が逸る喜之助は九ツで出立してしまう。熊本城を拝み、港に出ると、二千石積みの大船の船員たちが囲炉裏を囲んで茶碗酒を飲んでいるところに、いつもの調子の良さで仲間に入れてもらい、すっかり気に入られた喜之助は江戸への三百五十里を船で向かう許しを得ることに成功する。

出航した船の上での船頭と喜之助の軽妙なやりとりが、談春師匠のこの噺の聴きどころだろう。船頭に「愉快な男」と可愛がられ、日本全国を廻っている海の男から「その土地土地独特の女郎の呼び名」を教えてもらうところは、真骨頂と言っていい。

やがて玄海灘で疾風に遭い、船は転覆するが、喜之助は奇跡的に助かり、桜島に打ちあがる。そして、命からがら肥後熊本へ戻って来た喜之助は江戸屋主人と再会する…。下手な噺家が演じたら退屈になってしまうだろう噺だが、巧みな話芸によって、かえって新鮮で興味深い高座になるところ、さすが談春師匠である。

「二葉、研鑽!~桂二葉独演会」に行きました。「粗忽長屋」と「景清」の二席。開口一番は三笑亭夢ひろさんで「雑俳」、ゲストは桂九ノ一さんで「天災」だった。

「粗忽長屋」。まめでそそっかしい男が実に可愛い。粗忽というより、純粋なアホ、キラキラした目で真っ直ぐに突き進むキャラクターは、そのまま二葉さんの人間的魅力に直結するように思える。

行き倒れと聞いて、「はじまりますか。何時から?きょう、やるんですか?」と問い、くたばった死骸を見せられ、「なんで、ここに寝てはるの」。死んでまんねんと言われ、「誰がこんなことをやった?あんたがやったんか」と噛みつく。

死骸の顔を見て、「熊公(くまこ)や!」。「身寄り頼りのない可哀想な奴ですねん」と言うと、じゃああなたが引き取ってくれませんかと訊かれ、それよりも「とりあえず当人を連れてきましょう。並べてみて間違いなかったら、安心して引き渡せるでしょう」。清らかな目でこう言われると、「そうしてください」と思わず言いそうである。

長屋に駆け付けた男は熊公に対し、「暢気に煙草を吸うてる場合か!」。「お前も因縁だと思って諦めろ。お前は昨夜、天満宮で死んでんねん!」に、熊公が「死んだ心持ちがしない」と言うと、「図々しい。初めて死んで、心持ちなんか判るか!お前は死んだのを気がつかないで、帰ってきたんや!」。

そして、「これからお前の死骸を引き取りに行くんや」と言うと、熊公は「照れくさい」と返すが、「本人が本人のモノを引き取るのに、照れくさがるな」。さらに「随分と世話になったんや。ちゃんと礼を言わなきゃ駄目だぞ。誰ぞに先に引き取られたらまずい」。

そして、天満宮に引き返すと、世話役に「はじめは死んだ心持ちがしないなんて言っていたが、やっと納得してくれた」と説明し、熊公と二人で死骸を運ぼうとするから、世話役が引き止めようとすると、「本人が間違いないと言っている」と自分の考えが揺るがない真っ直ぐなキャラクター、本当に可愛いのである。