国友忠の偉業、沢村豊子という宝~浪曲映画二日目

渋谷ユーロライブで「浪曲映画 情念の美学」二日目を観た。(2019・06・23)

僕の家庭はテレビで時代劇を観る習慣がなかった(大河ドラマは例外)ので、水戸黄門も、暴れん坊将軍も、大岡越前も、名前だけは知っていたが、そのエピソード(ほとんど創作のフィクションだが)は、落語や講談で大人になってから知った。銭形平次も同様で、一番なじみのあるのは「ルパン三世」の銭形警部という(笑)。

浪曲「銭形平次捕物控 雪の精」を奈々福さんがネタ出ししていて、まだ浪曲で銭形平次って聴いたことないなぁ、と思ったのと、曲師・沢村豊子師匠との対談が1時間たっぷりあるというので、楽しみに出かけた。

沢村豊子。昭和12年生まれだから、僕の母と同い年だ。なのに、現役でバリバリ、その三味線さばきと浪曲師との阿吽の呼吸は天下一品。僕が浪曲を聴くようになってからは、奈々福さんの相三味線でよくお目にかかる。11歳のときに福岡から「踊りの師匠に入門させる」と半ば騙されて東京に出てきたが、浪曲師・佃雪舟にその才能を見込まれ、この世界へ入ったというのは有名な話だ。

今回の5日間のフェスが開催されたのは、浪曲師・国友忠の生誕100年を記念したものだと、きょう知った。豊子師匠と奈々福の対談1時間のプログラムは、実際はこのフェスの主催者が豊子師匠の人生を辿るインタビューとなり、これが実に面白かった。国友忠は野村胡堂の小説「銭形平次捕物控」を浪曲として創作、連続ラジオ小説として5年間放送したそうだ。月曜から土曜まで5日間毎日、それが5年続いたというのだから、すごい。それが後にテレビドラマ化されて、大川橋蔵や北大路欣也が主演してヒットしているが、その基を作った人なんですね!

その5年続いた連続ラジオ浪曲「銭形平次捕物控」の曲師を勤めたのが、豊子師匠。その後、村田英雄や三波春夫、二葉百合子など、後に演歌歌手としてメジャーになっていく人たちの曲師もやっている。浪曲界の宝であり、生き字引だ。兎に角、国友先生との思い出はいっぱいあるので、晩年、中国残留婦人の帰国問題解決に大いに貢献したことや、国本武春や奈々福などの後進の指導をしたこと、2005年で86歳で他界するまでの国友先生について涙を流しながら話していたのが印象的だった。

奈々福が披露した「銭形平次捕物控~雪の精」は、100分ある大作で、今回は30分で「ちょうど、時間となりましたぁ~」。この続きを聴きたい人は、9月14日に亀戸文化センターで、完璧版一挙口演があるとの告知で高座を下がった。早速、この口演がある「奈々福なないろ」のチケットを購入してしまったよ!