【大相撲夏場所】小結・若隆景がケガを乗り越えて、4年ぶりの復活優勝

大相撲夏場所千秋楽は大関・霧島と小結・若隆景が三敗で並び、優勝決定戦の末に若隆景が霧島を押し出しで下して、実に令和4年春場所以来25場所ぶり、2回目の優勝を決めた。
二横綱二大関が休場する中、土俵を引き締めたのは一人大関として奮闘した霧島と4場所ぶりに三役に復帰した若隆景だった。とりわけ若隆景の復活を思わせる相撲に感動した。令和5年春場所で左膝靭帯を損傷し、一時は幕下まで番付を下げたが見事にカムバック。ところが先場所には右肘の負傷で千秋楽を休場、今場所の出場が心配された。
だが、それを吹き飛ばすように連日右差し左おっつけで下から攻めあげる芸術的ともいえる取り口で土俵を沸かせ、十四日目に優勝争いでトップに並ぶと、本割では負けていた霧島に対し、決定戦では見事な速攻で相手に相撲を取らせず圧倒、優勝を決めた。技能賞で花を添え、大関昇進への起点を作ったのは喜ばしい。
霧島は出場している力士の中で最上位という重圧にも負けず、優勝争いのトップに立ち続けた。途中、中日の豪ノ山戦、十日目の正代戦で不覚を取るも、連敗せずに番付の権威を見せつけた。十三日目の琴栄峰戦では土俵際まで攻め込まれるも、強靭な足腰で見事なうっちゃりを決めて勝利した一番は、今場所の名勝負だったと言ってもいい。審判部は決定戦には敗れたが、「優勝に準ずる成績」として扱い、来場所の成績次第では横綱昇進も視野に入ると示唆したという。まあ、そう焦らなくても結果は必ずついてくるだろう。
上位陣不在の場所を盛り上げたのは、千秋楽までトップと星の差一つで追っていた平幕陣だ。伯乃富士は十四日目に霧島を大熱戦の末に寄り倒し、優勝争いを面白くした立役者だ。令和5年名古屋場所に新入幕で優勝を争ったとき以来の11勝の成績での敢闘賞は嬉しい。また、義ノ富士は前頭二枚目で11勝を挙げて敢闘賞を受賞するとともに、来場所の新三役を確実にした。先場所、入門以来の勝ち越しの連続記録が途絶えたが、将来の大関、横綱を狙える大器である。期待は大きい。
ほかに、宇良は小兵ながら連日図抜けた身体能力で土俵を沸かせて二桁勝利、千秋楽結びの一番で霧島の対戦相手に選ばれたことは高く評価して良い。琴栄峰は惜しくも敗れたが霧島を土俵際まで攻め込んだ相撲は兄の琴勝峰に追いつき追い越せの存在になる器を感じさせる10勝だ。入幕2場所目の藤凌駕はパワフルな相撲で10勝を挙げ、番付上位に躍進すると土俵は益々面白くなると思った。
新入幕の若ノ勝が9勝を挙げた。イキの良い相撲が土俵を沸かせ、気持ちの良い力士だ。解説の琴風さんも「敢闘賞をあげたいくらい」とコメントしていた。翔猿も幕内下位に番付を下げていたが、連日小さな体で小気味よい相撲を取って、存在感をアピールしていた。後半戦で息切れしたのか、4連敗したのは残念だったが、それでも9勝は立派である。
新関脇の熱海富士と琴勝峰も9勝を記録して、番付を維持した。どちらも体格に恵まれており、それを生かして前へ出る取り口になると、滅法強い。安定した成績を残せるようになって、大関の座を狙ってほしい。
横綱・大の里は左肩の負傷、大関・安青錦は右足首の負傷で全休。横綱・豊昇龍は初日の高安戦で右太腿を負傷し休場。三人とも傷を癒して、名古屋場所では出場する見込みというから大いに期待したい。特に安青錦は関脇への陥落が決まっているから、二桁の星を挙げて大関復帰を望みたい。気にかかるのは、大関・琴櫻で十一日目に正代に負けて早々に負け越しが決まると、翌日から休場したことだ。場所前の稽古で腰を痛めたというのが休場理由だが、以前から消極的な相撲が気にかかっていて、精神的な強さを持たないとカド番脱出も危うい気がしてならない。奮起をしてほしい。
現役最年長41歳の玉鷲が2勝13敗と大負けしてしまった。右足を痛めてテーピングをしての出場だったが、最後まで諦めない相撲は館内の拍手を浴びていた。前頭十三枚目だから、十両陥落は必至だが、それでも「土俵に上がり続ける」とコメントしているという。幕内優勝2回の大ベテランの姿を見て奮起している力士も多いと思う。体に無理のない範囲で、力士のお手本として相撲を取り続けてほしいと願う。
十両は一意が12勝3敗で優勝した。令和6年名古屋場所で幕下最下位付け出しで初土俵を踏んだが、すぐにケガをして序ノ口まで番付を下げて再出発。来場所の新入幕は微妙だが、同学年の義ノ富士と対戦する日が早く来ることを願っている。
また、元幕内力士の炎鵬が令和5年夏場所に脊髄損傷し、序ノ口まで陥落していたが、今場所に十両に3年ぶりに復帰。見事に勝ち越した。土俵への執念の凄まじさを見た思いがした。今後、さらに番付を上げて、幕内で活躍してほしい。
伊勢ケ浜部屋の旭富士が三段目優勝。先々場所の序ノ口、先場所の序二段に続いての優勝であり、現在まで負けなしの21連勝中である。十一日目には今場所幕下付け出しでデビューした大森との対戦が組まれ、勝利している。その大森は6勝1敗で幕下優勝を逃している。この二人が近い将来、幕内の土俵で暴れているのを観るのもまた楽しみのひとつだ。

