四月大歌舞伎 通し狂言「裏表先代萩」

四月大歌舞伎昼の部に行きました。「廓三番叟」と通し狂言「裏表先代萩」。

「裏表先代萩」は時代物の名作「伽羅先代萩」を基に、仁木弾正や政岡が活躍する場面を“表”、下男小助による大場道益殺しの一件を“裏”にして、時代物と世話物を交互に見せて展開する趣向が面白い。8年前に七代目尾上菊五郎が主演して以来の上演で、今回は息子の八代目菊五郎が仁木弾正、政岡、小助の三役をしっかりと勤めていて良かった。

僕は時代物より世話物が好きというのがあるからかもしれないが、「裏」の部分を大変興味深く拝見した。二幕目「大場道益宅の場」と大詰第一場「問注所小助対決の場」だ。

足利家乗っ取りを企む仁木弾正と与する医者の大場道益・宗益兄弟の悪事。足利家を相続した幼君鶴千代を毒殺するために、毒薬の調合を打ち合わせする。褒美として弾正より足利家の極印の付いた二百両をすでに受け取った宗益が道益に渡す。そして、宗益は鶴千代に差し上げる菓子に毒薬を仕込むべく、屋敷に向かう。

道益の隣の下駄屋に奉公している下女のお竹に道益は惚れていて、何度も口説いているが上手くいかないという伏線だ。お竹は花売をしている父親の佐五兵衛が以前奉公していた旗本から二両用立ててほしいと頼まれていて、親孝行してあげたいと思っている。道益の下男・小助がお竹の相談に乗って、道益に二両借りたい旨の手紙を書くことを勧め、お竹は手紙を道益の枕元に置く。

目を覚ました道益は手紙を読んで、手元にある二百両から二両を渡す。そのかわり、俺の願いを叶えてくれとお竹に抱きつく。だが、お竹はこれを振り払い、慌てて逃げて行った。この様子を窺っていた小助は忍び込み、道益を殺害して懐から大枚の金子を奪う。このとき、ちぎられた襦袢の袖のこの金を包み、縁の下へと隠した。だが、この金を犬が掘り出して、佐五兵衛の花籠へ入れてしまった…。

そして、問注所での道益殺しの吟味。吟味役の横井角左衛門は大場兄弟とは旧知の仲で、自分の上司である山名宗全も加担する鶴千代毒殺の企みが露見しては一大事と、道益殺しの現場に残されたお竹の下駄、それに借金を頼む手紙の切れ端を証拠に、お竹こそ真犯人と決めつける。

だが、もう一人の吟味役である倉橋弥十郎が現れて、状況は一変する。弥十郎の許に、お竹の父の左五兵衛から渡されたものがあるという。花籠の中にあった血汐の付いた片袖に包まれた百九十八両。それに、お竹から受け取った二両。いずれも同じ足利家の極印があり、合わせて二百両になる。

なぜ一介の医者である道益がこれほどの大金を所持していたのか。これが仁木弾正以下の足利家乗っ取りを狙っていた一味を断ずる材料になり、幕府評定所において鶴千代の家督相続が認められる一端となった。

さらに、血汐の付いた片袖は、小助の襦袢ということも明らかになり、小助は罪状を認め、お竹の道益殺しの疑いは見事に晴れた。善悪含む主要三役を見事に演じた八代目菊五郎、あっぱれ。また、大場道益と弾正妹八汐の二役を勤めた坂東彌十郎も良かったし、悪を成敗する倉橋弥十郎の中村勘九郎も格好良かった。