新宿末廣亭三月上席 笑福亭羽光「拝啓 15の君へ」

新宿末廣亭三月上席六日目夜の部に行きました。今席は笑福亭羽光師匠が主任を勤める興行だ。

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羽光師匠の「拝啓 15の君へ」。笑福亭羽光ことナカムラヨシオが主人公で、ノンフィクションが入り混じったSF仕立ての演出で、心に滲みる創作落語だ。エンディング近くではアンジェラ・アキの「手紙~拝啓 十五の君へ~」の三味線演奏が入り、雰囲気をグッと盛り上げていたのが良かった。

ナカムラヨシオは久しぶりに母親の墓参りを兼ねて実家に立ち寄り、押し入れの中から子ども時代の懐かしい品々を取り出す。ビー玉、キン肉マン消しゴム、牛乳のキャップ、ガンプラ、高校の卒業アルバム…。おもちゃのポストが出てきた。中に手紙が入っている。読んでみると、15歳のときに「未来の僕へ」宛てて書いた手紙だった。

悩みはタラコ唇であること、そして口が「漬物臭い」と言われること。ファーストキスはどんな味がするのか、と。友達のいない暗い自分は彼女ができるのだろうか、就職はできるのだろうかと悩んでいることが伝わる。「碧いうさぎ」の酒井法子のような清純派の女の子が好きだ。そして、ハウンドドッグの大友康平のようにロックな生き方をしたいとも書いてある。

ヨシオは昔の自分に返事を書こうと思い立つ。十五の僕へ。僕は笑福亭羽光という落語家になっています。爆裂Qというお笑いをやっていましたが、「エンタの神様」で予選落ちして解散しました。そして、34歳で笑福亭鶴光に入門しました。タラコ唇は気にしなくて大丈夫です。お笑いをやっていると、ルックスは気になりません。口の匂いはおばあちゃんが漬物を毎日のように食べさせていたからだと思います。19歳で彼女ができました。大阪のキャバクラのルミという女性でしたけど。ファーストキスはレモンでもイチゴでもなく、イソジンの味がしました。世の中はバブルで浮かれますが、決してジュリアナで踊らされるようなことはしないでください。

そこから、15歳の自分と現在の自分の時空を超えた手紙のやりとりが始まる。そのとき、現在のヨシオは「これは教えなきゃいけない」と思った。18歳のときに母親が癌で亡くなったこと。これを教えれば、母親を救うことができるかもしれないと思ったのだ。

だが、その後、15歳のヨシオからは音沙汰がなくなった。仏壇の母の遺影を見て、「やはり、過去は変えられないんだ。夢を見ていたのか」と思う。父親が「東京に戻るのか?」と声を掛けた。落語家としてやっていくんだと伝えると、「頑張れ」と言ってくれた。そして、ヨシオが「おとんも再婚したら?もう、おかんは成仏していると思うよ」と言うと、「おかんは自分の息子を誇りに思うと言っていた」と父親が返す。自分は親不孝だったとずっと思っていたから、意外だった。

ヨシオはひきこもりで、何も喋らない子だった。どう接していいのか、悩んだ。だが、ある日からヨシオが変わった。母親に「ガン検診は受けた方がいいよ」などと気遣うようになった。母親に癌が発見されたが、助かることなく天国へ召された。ヨシオは「ちょっとだけ親切にできたのかな。少しは親孝行ができたのかな」と思った。胸がキュンとなった。