銀冶連雀会 田辺銀冶「新吉原百人斬り 八ツ橋楼普請」、そして落語わん丈 三遊亭わん丈「真景累ヶ淵 お久殺し」

銀冶連雀会「新吉原百人斬りを読む」に行きました。田辺銀冶先生が「正直俥夫」と「八ツ橋楼普請」。前講は神田おりびあさんで「リンゴの唄」だった。

銀冶先生の新吉原百人斬りも残すところ2回。きょうは佐野次郎左衛門が妖刀籠釣瓶一心で「百人斬り」を決行する直前の「八ツ橋楼普請」である。

八ツ橋に愛想尽かしをされ、大恥をかかされた次郎左衛門は「もう二度とあんなところに行くか」と思い、佐野へ引っ込んだ。一方、次郎左衛門のことを可哀想に思った幇間の紋久と一平は「あば惣」と渾名される惣吉親分に頼んで、八ツ橋のいる卍屋に客が遠のくよう子分たちが嫌がらせを働く。

卍屋の主人の善兵衛は困り果て、八ツ橋に「我慢して、一晩だけでも次郎左衛門を受け入れてほしい」と泣き脅しをかけた。実は次郎左衛門の父親である次郎吉と若侍の三田三四郎は対立関係にあり、八ツ橋は三四郎の姪という因縁があった。次郎左衛門の松皮疱瘡の汚い顔が嫌なだけではなかったのだ。だが、主人の善兵衛に頼まれると仕方なく承知をする。ただし、中庭に八ツ橋楼を普請してほしいという条件をつけた。

卍屋善兵衛は都淡路太夫を伴って、次郎左衛門を訪ねる。八ツ橋と栄之丞が大変失礼なことをした、申し訳ない、あの花魁は世間知らず、その間夫である栄之丞も元は能楽者だが今はゴロツキ、どうか水に流してください。そして、八ツ橋からの手紙を渡す。そこには栄之丞とはきっぱりと別れた、八ツ橋楼を普請するので、もう一度おいでくださいと書いてある。

次郎左衛門は「栄之丞とは別れた」のか、確認をして、善兵衛が「本当です」と答えると、「間夫は勤めの憂さ晴らし。別れろとは言わないが、卍屋にだけは二度と出入りさせないようにぢてくれ」と言う。そして、八ツ橋楼普請にはどれくらいかかるのかと訊くと、「5000両」。これを聞いて、次郎左衛門は「馬に食わせる金はない。だが、7000両、8000両かかっても、帳尻が合えば払う」と約束した。

早速、善兵衛は店に戻り、見積もりをして普請に取り掛かった。ここには次郎左衛門なりの“仕返し”の算段があった。仕返しは金で苦しめるのがいい。いざ勘定となったらドロンをしよう。佐野家の家督は義兄の惣右衛門に譲っている。俺は二代目都築武助を名乗り、名刀籠釣瓶で仇を討とう。

年が明け、八ツ橋楼の座敷開きは五月五日と決まった。次郎左衛門は蔦屋でどんちゃん騒ぎをした後、卍屋の八ツ橋楼に行き、「一晩だけ」八ツ橋は次郎左衛門に身を任せた。次郎左衛門が夜中に起き、酔い覚めの水を飲んで、厠へ行く。手入れの行き届いた庭を眺めていたら、母屋の長廊下を走る者がいる。栄之丞だ。「あれだけ、きっぱり別れたと言いながら…俺を欺いたのか」。

寝ずの番をしていた禿に「栄之丞が来ているのでは」と問い詰めると、「他人の空似」だとはぐらかされた。もう、許せない。次郎左衛門は帰り支度をして、「百人斬り」に臨む覚悟を決めた…。来月の最終回へと繋げた。

「落語わん丈~三遊亭わん丈独演会」に行きました。「蒟蒻問答」「競馬やめさせたい」「真景累ヶ淵 お久殺し」の三席。開口一番は三遊亭歌きちさんで「やかん」だった。

「真景累ヶ淵 お久殺し」。豊志賀の墓参りに行った新吉がお久に出会い、一緒にお久の伯父のいる下総羽生村まで行こうということになる。途中、松戸宿で男と女の仲になった二人は、流山から渡し船に乗って水海道、そこから歩いてもう少しで羽生村というところまで来た。

土手沿いを歩いていた二人はぬかるみに足を滑らせ、土手下に落ちる。そのとき、お久は置いてあった鎌で膝をザックリと切ってしまい、新吉が手拭いで結んで手当てして、「もう少しだから行こう」と言うと、お久は「びっこになってしまった私は見捨てられてしまう」。それを否定するも、「だって、あなたは不実な人だから…」と言うと、お久の顔半分が紫色になり、豊志賀そっくり。新吉は畏れをなして、「豊志賀」を鎌で斬り付け殺してしまった。そして、我に返ると新吉が殺した女はお久だった…。誰かに見られたらまずい。

その場を逃げようとする新吉の襟首を頬被りをした男が掴む。土手の甚蔵というならず者だ。雷が落ちて、一瞬手を離した隙に、新吉は懸命に逃げた。そして、一軒の灯が点いた家を見つけ、一晩泊めてもらおうと戸を叩く。すると、出てきたのは清蔵という百姓で、自分も雨宿りのためにこの家に逃げ込んだ、この家の持ち主は博奕ばかりしている村の嫌われ者だが、自分は懇意にしているから泊まれるように話してやると言う。

暫くして、その男が帰宅してきた。男が言うには「さっき、土手下で女が殺されているのを見た」。悲鳴が聞こえ、見ると鎌でザクザクと斬られていたという。だが、「自分は雷が怖くて捕り逃がした」と言って、血で染まった鎌を見せる。清蔵は雨が小降りになったので帰ったが、新吉は江戸の人間だと聞いて、「俺も本郷菊坂の生まれだ。訳があって田舎に暮らしている」と男は言う。

そして、「俺の弟ということであれば、この村で暮していける。兄弟分にならないか」と誘う。新吉がやかんの中のお茶で盃を酌み交わした途端、男は「女を殺したのはお前だな!」と強気に出た。男は先程、新吉の襟首を掴まえた土手の甚蔵だったのだ。甚蔵は新吉がお久を殺したのは、お久の懐の金目当てなのではないかと思い、強請ろうとしたのだ。ところが新吉は一文無し、実は殺したのは自分の女房で、豊志賀の霊が乗り移ったと思いこんで夢中で斬り殺した事情を説明する。

路銀もないのか。甚蔵はガッカリするが、新吉は兄弟分になったのをいいことに、「家に置いてくれませんか」と頼む。ここから妙な男二人の暮らしがはじまったと締めて、次回の「お累の婚礼」へ繋げた。