【大相撲九州場所】安青錦が豊昇龍を下し初優勝、大関昇進へ

大相撲九州場所千秋楽、三敗で並んだ関脇・安青錦が横綱・豊昇龍を優勝決定戦の末、撃破して初優勝を飾り、場所後の大関昇進を確実にした。

千秋楽の朝、ニュースが入った。三敗で優勝争いのトップに並んでいた横綱・大の里が左肩負傷のために休場、結びの一番は豊昇龍の不戦勝が確定した。すなわち、安青錦は本割で大関・琴櫻を破り、尚且つ決定戦で豊昇龍に勝つことが求められた。だが、安青錦は強かった。琴櫻を内無双で土俵に這わせ、豊昇龍を送り投げで倒し、初の賜杯を決めたのだ。

付け出しを除く、序ノ口初土俵からの所要場所で言うと、初優勝は尊冨士の10場所に次ぐ14場所で2位。大関昇進は琴欧洲の19場所を大きく抜いて、史上最速のスピード出世である。今年春場所に新入幕すると、4場所連続で11勝を挙げ、今場所は12勝で優勝。「三役三場所で33勝以上」という大関昇進の目安があるが、安青錦は前頭筆頭、小結、関脇の三場所で34勝。抜群の安定感を審判部も評価したのだろう。終始低く下から鋭く攻め込んで、叩かれても落ちない相撲は、先場所に続いての技能賞受賞も納得である。このまま、この勢いが続けば、その上の番付を早く期待してもおかしくないだろう。

今場所は中盤戦まで横綱・大の里が9連勝と圧倒的な強さを見せて、先場所に続いて優勝するのではないかと誰もが思った。ところが、十日目、十一日目に義ノ冨士、隆の勝に不覚を取り、優勝は両横綱と安青錦の三人で争う展開となった。十三日目には安青錦が大の里に敗れて脱落したかに見えた。ところが、十四日目に大の里が琴櫻に、豊昇龍が安青錦に負けて、千秋楽に再び三人が並ぶ形となった。このチャンスをモノにしたのが安青錦だった。

豊昇龍は初日に伯桜鵬、六日目に若元春に金星を配給したが、後半戦に入ると尻上がりに調子を上げてきた。だが、安青錦には一方的な相撲で寄り切られる。対戦成績は本割で三戦全敗。決定戦でも負けた。今後、苦手意識を払拭する必要があるだろう。先場所の大の里戦に続く決定戦での敗戦、人一倍負けん気の強い豊昇龍としては、来場所以降に課題を残した。

今場所の土俵を盛り上げた力士として、平幕の草野改め義ノ冨士が挙げられるだろう。成績こそ9勝に終わったが、大の里や安青錦を一気の押しで破った相撲はさすが技能賞という内容が光る。十両二場所で通過し、新入幕後も三場所連続勝ち越し。これから益々力をつけて横綱大関を脅かすだけでなく、安青錦の昇進後の有力な大関候補になるのではないか。

琴櫻は今場所も8勝7敗に終わった。大の里を破って優勝争いを面白くしたことは評価したいが、自分から前に出て積極的に攻める相撲があまりなく、受け身に回っているのが気になる。先場所痛めた膝の負傷が癒えないままの出場だと聞いているが、完全に治しての奮起を望みたい。

霧島と一山本がそれぞれ11勝を挙げ、敢闘賞を受賞したが、それほど土俵を盛り上げた印象がない。特に霧島は元大関、来場所には三役に戻るだろうから、大関復帰を目指して大いなる活躍を望みたい。

寧ろ、前頭三枚目で勝ち越した宇良の連日の奮闘や、平幕下位ではあったが幕内最年少の藤ノ川のキビキビした相撲、さらに技巧が冴えた時疾風や正攻法な相撲を見せた錦富士などが土俵を沸かした。小兵の朝紅龍が千秋楽で勝ち越した相撲も気持ちが良かった。41歳になった玉鷲は7勝8敗と惜しくも負け越したが、衰えぬ馬力のある相撲は素晴らしかった。

新十両の藤凌賀が13勝2敗で優勝を決めた。決まり手のほとんどが押し出しという攻め込む相撲で相手を圧倒するパワーは可能性を感じる。幕下付け出しでデビューして5場所。早く幕内の土俵を沸かせる存在になってほしい。