一龍斎貞鏡修羅場勉強会「関ヶ原軍記 大谷刑部首塚の由来」、そして俺のカジカザワ 柳家喬太郎「鰍沢零」

一龍斎貞鏡修羅場勉強会に行きました。「幡随院長兵衛 芝居の喧嘩」と「関ヶ原軍記 大谷刑部首塚の由来」の二席。前講は神田山兎さんで「南総里見八犬伝 序開き」だった。

「大谷刑部首塚の由来」。湯浅五助と藤堂仁右衛門の男と男の約束に深く感じ入る。小早川秀秋の裏切りによって完全な劣勢となった豊臣勢の大将、大谷刑部吉継は業病を患って両眼の視力を失い、敵方に醜い首を晒したくないとの思いから、九寸五分を腹に突き立て、家来の五助に介錯を頼んで最期を遂げた。

そのときの遺言は墓も回向も要らぬ、敵方の物笑いにだけはなりたくない、自分の首をどこかに埋めてほしいというものだった。五助は刑部の片袖で首を包み、埋める場所を探すが、そのときに敵方の藤堂高虎の家来、藤堂仁右衛門に見つかり、勝負を挑まれる。五助は卑怯とは思ったが、馬上の相手を突いて落馬させ、その隙に逃げた。必死に逃げた。美しき眺めのツツジ咲き誇る丘を見つけ、「ご成仏ください」と木の根方に刑部の首を埋めた。

手を合わせ、落涙しているところに、背後から先程の藤堂仁右衛門がやって来た。勝負を挑む仁右衛門に対し、五助は「そなたを真の武士と見込んで頼みたい。わしの首が欲しいだけか?それとも主君である大谷刑部の首も欲しいか?推察通り、この木の根方に埋めたばかりだ。わしの首だけ取って、この根方を掘り起こすことはしないでほしい」。仁右衛門は「約束する」と答えた。そして、両者相見え、五助は仁右衛門の槍が胸元に刺さり、果てた。仁右衛門は約束通り、五助の首だけ持って、戦場を去った。

仁右衛門が五助の首を家康に差し出すと、大層感服され、「手柄話を聞きたい」。「この首は五助本人から貰いました」と言って、大将である大谷刑部の首の在り処は誰にも伝えぬ約束をしたと語った。家康が「刑部の首を掘り出し、持参せよ。褒美は存分に遣わす」と言うが、仁右衛門は「申し上げることはできません。口が裂けても言わぬと約束しました」。

なおも家康が「わしの命に背くのか」と言うが、仁右衛門は「約束は約束。違えることはできません。男子一生の誓いは破れませぬ」。家康は「仁右衛門、覚悟をいたせ」と、槍で胸板を突くが、仁右衛門は穂先を見つめて「突かば突けい。本望だ。湯浅五助は真の武士だった。わたしも真の武士でありたい。ご存分にいたしませ」。

この言葉を聞いて、家康は槍を収めたという…。武士の一分というものであろう。湯浅五助と藤堂仁右衛門の男と男の約束に深い感銘を受けた。

「俺のカジカザワ」に行きました。三遊亭円朝作「鰍沢」を題材に古典・新作・改作を織り交ぜて味わってみようという企画。2015年に喬太郎・扇辰・小満んで「鰍沢 零・壱・弐」で公演がおこなわれたとき、「鰍沢」の前段になる創作を喬太郎師匠がされて、それも客席から三題噺のお題をもらって、「祭囃子・猫・吾妻橋」から創作された高座が強く印象に残っていて、もう一度聴きたいと思って出掛けた。

「平林」三遊亭東村山/「鰍沢零」柳家喬太郎/「鰍沢」入船亭扇辰/中入り/「鬼コロ沢」三遊亭白鳥

喬太郎師匠の「鰍沢零」。吉原の遊郭、熊造丸屋の月之兎花魁と生薬屋高麗屋の手代の伝三郎との出会い。伝三郎はいたって堅い性分で、若旦那に無理やり連れて来られた設定だ。月之兎花魁の相方は当然、若旦那だから、他の女郎が伝三郎の相手をするのだが、指一本触れない。

若旦那が月之兎花魁に伝三郎を紹介して目が合ったとき、両者ともに電気が走った。つまり、一目惚れだ。以来、伝三郎は熊造丸屋に来るが、女郎とは遊ばず、月之兎がちょっとの時間を作って、他人の目を盗んで会っていた。手代という身分だから、そうそう通える金など持っていない。数か月に一度くらいの頻度だ。

月之兎は「芯から惚れている」証に愛玩していた猫のタマを、伝三郎が店にいる間は伝三郎に預けた。櫛や笄を預けるというのはよくあるが、生あるものを預けるとは余程惚れていたのだろう。自分だと思ってくれ…ということだろう。

しばらくして、若旦那が月之兎花魁を身請けすることが決まった。月之兎を若旦那が妻として迎えるとなると、伝三郎と月之兎はひとつ屋根の下で暮らすことにある。そんなことは耐えられないと月之兎は言う。そして、「一緒に逃げてくれ」と言う。御法度の足抜けだ。伝三郎も月之兎の覚悟を知って、伝三郎の出身である甲州身延へ逃げようと決めた。私も法華、ちょうど良いと月之兎。

祭りの日に、吾妻橋で落ち合おう。もし、見つかったら、仕方ない。一緒に死のう。二人は固く約束し、月之兎は「これが私の真心だ」と言って、タマを懐に託す。この世で所帯を持てなければ、あの世で所帯を持ちましょう。そう言って、約束の期日を待った。

その約束の日の刻限。吾妻橋で伝三郎が月之兎を待っていると、そこに若旦那がやって来た。「誰を待っているのだ?」と詰問する若旦那。懐にいるタマを目敏く見つけて、「俺はお前の主だ。後足で砂をかけるようなことをされたら困る」と釘を刺す。お見通しなのだ。

橋の両端から風体の良くない男たちがやって来て、伝三郎を取り囲む。若旦那は「月之兎は渡さないよ」とハッキリ言う。すると、タマは大川の中へ飛び込んだ。伝三郎も後を追うようにして大川へ。そこへ月之兎が駆け付け、「伝さん!」と叫ぶと、持っていた匕首で喉の下を掻っ切り、大川へドボン!と身を沈めた。

悲しい結末を迎えたわけだが、この後の「鰍沢」では伝三郎と月之兎は心中のし損ないをして、身延に落ち延びたことになる。甲州の山奥でひっそりと暮らしていたわけだが…大川屋新助が吹雪で迷い込んで訪ねてきて、また運命は大きく変わるのだ。面白い。