国語辞典サーフィン

NHKラジオ第一「国語辞典サーフィン」選の3本を聴きました。

■1年でいちばん忙しい季節

取り上げられた言葉は「年末」。僕は街頭インタビューの人とほぼ同じで、「クリスマスから大晦日くらい」をイメージした。早くても12月20日過ぎからだろうと思う。クリスマスイブからの一週間という感じだろうか。

「年末年始」という表現になると、ちょっと「年末」の意味が狭められる気がする。サラリーマンをしていた時代は、29日から翌年1月3日までが公休扱いだったから、狭義の年末は29日~31日の3日間だろうか。

多くの国語辞典は12月のまるごと一カ月を「年末」と定義しているようだ。実際、今年の新語・流行語や今年の漢字の発表は12月第1週だそうだ。出版業界でも新年号の発売に間に合わせて、前倒しの原稿締め切りが設定される。いわゆる「年末進行」だ。そういうことで言うと、サンキュータツオさんが言うように「11月までが今年で、12月はカウントされない」、そういう感覚が現代社会においては浸透しているのかもしれない。

「年の瀬」というと、ちょっとニュアンスが変わってくる。「川の瀬」から派生した言葉らしく、慌ただしいという意味合いが強まってくる。押し迫る年の瀬…と言ったりするが、押し詰まる年の瀬という表現もあるらしい。こちらはもっと慌ただしい印象だ。落語の「掛取り萬歳」は大晦日の出来事。一年間の借金が積もり積もって、まさに「大つごもり」に支払いを済ませないと年が越せない。そんな切羽詰まった語感がある。

そう言えば、年末ジャンボ宝くじの販売は12月21日までだった。銀座を歩いていたら、宝くじを買い求める長蛇の列が出来ていて、「大安?」と思ったら、その日が最終日だった。勿論、当たり番号の抽せんは大晦日なのだが、落語の「富久」にも出てくる昔からの風俗を考えると、やっぱり12月中旬くらいからは年末と思って行動しておいた方が良いのかもしれない。

■トッピングは大丈夫です

「飲みにいきませんか?」「いや、大丈夫です」。これは誘いに乗っているのか、それとも誘いを断っているのか。どっちなんだよ?という日本語が最近増えているという。「あいつ、ヤバイよ」は、いけてないの意味なのか、カッコイイの意味なのか。僕の中でのヤバイは前者であって、後者の意味で使うことはない。「大丈夫です」も「ヤバイ」も若者言葉によって反対に意味が含まれるようになったために複雑だ。

国語辞典における「大丈夫」は、まず1番目に「しっかりとして危なげない」の意味が出てくる。その次に「差支えがない、問題がない」という表記があるという。応答に用いられ、「おかわりいかがですか」「痒いところはありますか」の質問に「結構です」「ありません」の意味で使われることもあると書き足されている辞書もあるそうだ。拒否、否定という意味が含有しているから難しい。

名鏡国語辞典が一番突っ込んでいると紹介された。勧誘を遠回しに拒否する言葉。気遣いはいらないという意。そこに「本来は不適切な使い方」と書き加えている。この“遠回し”というのが、古来からある日本人の婉曲表現として使われ出しているところが悩ましい。人間関係を円滑に進めるため、相手をなるべく傷つけまいとする気持ちから生まれた用法なのだろう。

女の子をドライブに誘うとき、「大丈夫です」と言われたら、これは勿論断られているのだと判るのだが、ここはハッキリと「ごめんなさい」と断ってほしい。そんな忌々しさがつきまとう言葉である。

■団らんの中で食べるもの

取り上げられた言葉は「おでん」。大根、こんにゃく、玉子などを薄味の出汁で煮込んだ料理。日本全国で通用する言葉だと思うが、関西では「関東炊き」とか「関東煮」という。関西では僕がイメージするものと違うおでんが存在するのだろうか。名古屋だと赤味噌で煮込んだおでんが一般的だから、それと区別しているのだろうか。

ちなみに、おでんという言葉は田楽から派生した女房言葉だそう。髪のことを「かもじ」と言ったり、鰹節のことを「おかか」と言ったり、女官が使った隠語だそうだ。

ところで、国語辞典ではどんな具材が表記に入っているのか。7冊の国語辞典で調べたら、こんにゃくは7冊全部に入っていたそうだ。2位が大根とちくわで、4冊。僕の中ではおでんと言うと、練り物を鍋で煮込んで食べるというイメージがあって、大好きなちくわぶは勿論、さつま揚げ、はんぺん、ゴボウ巻、イカ天…と枚挙にいとまがない。柳家小ゑん師匠の「ぐつぐつ」が聴きたくなった。

最近ではニューウエーブとして、ロールキャベツやトマトなどもありますよねえ、と番組で盛り上がっていたけど、個人的には外したいなあ。ロールキャベツはロールキャベツとしてシチューと一緒に食べたいし、トマトが入っちゃうとポトフになっちゃう気がする。