SWA傑作選

SWA傑作選に行きました。テーマは「あの日 あの時…」だった。

柳家喬太郎「路地裏の伝説」(2005年4月初演)

昭和39年生まれの僕としては、懐かしい事象やモノがいっぱい出てくるのが嬉しい噺だ。ネッシー、なんちゃっておじさん、口裂け女、鳩サブレ、GOROにスコラ…。主人公のお父さんの法要に昔の同級生たちが集まって、ワイワイガヤガヤするのも昭和テイストなのだろう。でも、まさか“風邪ひくなおじさん”が自分の父親だったとは!日記を読んで初めて知る衝撃が面白い。

春風亭昇太「空に願いを」(2006年5月初演)

足の遅いフリタ少年が同級生の嫌がらせで運動会のリレーのアンカーにされてしまう…。そのことに対して、父親は「小学生に良いことなんてあってたまるか!」と言い、母親も「挫折なく育ったら、ろくな人生が待っていないわよ」と励ます。僕も本当にそう思う。祖父のイグレシアスに教わって、毎日雨乞いの儀式をやってきたことが、運動会で走る能力を高めた。そういうことって、意外と人生においてあると思う。

林家彦いち「身投げ自演」(2011年7月初演)

落語家になって22年の紅葉亭どんぐりはいつまで経っても、「噺家としての了見がなっていない」と師匠から厳しいことを言われている。「文七元結」のようにいっそ吾妻橋から身投げしようかと気の迷いを起したら、本当に死んでしまって…。幽霊になって判る“生きていることの素晴らしさ”を伝えようとしているのだと思う。

三遊亭白鳥「鉄砲のお熊」(2011年11月初演)

月影村の子供たちが十数年経って、それぞれの道を歩んでいた。時次郎は夢が叶って、中村夢之丞という女方の人気役者に、おみつは女相撲で活躍して横綱を狙う地位に、だがガキ大将だった長吉はマムシの権造という山賊に成り下がっていた…。おみつは時次郎と再会、そして長吉と対決。おみつの勇気は時次郎だけでなく、村人たち皆を奮い立たせた。「女房になってくれ。俺は歌舞伎なんかやめる」と言う時次郎を、おみつは叱る。「あなたは子どもの頃、死んでも歌舞伎役者になると言ったじゃないか!」。そして、おみつは「私の夢は横綱になることだ」と言って、故郷で見せる土俵入り。いつまでも夢を捨ててはいけないというメッセージがこめられている。