一之輔・天どん ふたりがかりの会 無茶ぶリレーSP

「一之輔・天どん ふたりがかりの会」10周年記念無茶ぶリレーSPに行きました。プログラムによれば、「無茶ぶリレー」は古典落語のリレー企画だが、前半から後半へバトンを渡す際、いわゆる「普通」にではなく、ちょっと「無茶な」バトンを渡したら、そのあとの物語はどうなってしまうのか…?という、無茶ぶりのリレーで物語が変わるのを試してみるアナザーでパラレルな企画とのこと。今回は「子別れ」と「芝浜」の2演目に挑んだ。果たして…。

「子別れ」三遊亭天どん→春風亭一之輔

天どん師匠、亀吉から熊さんが近況を訊くと「後添えを貰ったが、その男は飲んだくれで逃げてしまい、連れ子12人と一緒に14人で暮らしている」と教わったところで、バトンを一之輔師匠に。

熊さんは明日鰻を食わせてやる、その12人の兄弟も連れて来い、会いたいと亀吉に約束する。でも、母親が後添えを貰ったことは嘘だった。亀吉は簡単によりを戻そうとするのが嫌で、「所帯を持った」と嘘をつき、父親に「脈がない」と思わせたかったのだ。

辻褄を合わせるために、亀吉は近所を「鰻食べたい人いませんか?」と廻ったら、すぐに12人揃った。で、翌日の鰻屋の二階。学校の同級生や長屋の六さん、源さん、兼さん、駄菓子屋の婆さん、可愛がっている野良犬のペロ…。明らかに嘘であることはばれるが、そこに母親のお徳がやって来て、「まんざら嘘でもない」と言う。

そこには鶴松という二歳の男の子がいて、「この子はあなたと別れたときに、お腹の中にいた子です」。「あのとき、私が身籠っていると言っても、あなたは酷いことしか言わないと思ったから、知らせずに別れた」のだと言う。その上で、ここにいる同級生は亀と仲良くしてくれるし、長屋の皆さんは親切にしてくれる、駄菓子屋の婆さんは臨月のときには大変世話になった、皆のお陰で何不自由なく暮らせている…。

亀吉が嘘をついたのも、「鶴松含めた三人で生きていける。今が幸せだ。心配するな」と言いたかったのだと思うと。まだ、元亭主のことを怒っているということまでハッキリと言う。それに対し、熊さんは「勘弁してくれ」と平身低頭するばかりだ。

そして、「しばらく様子を見よう。もっと俺がちゃんとしたら、迎えに行く」と熊さん。湿っぽくなった鰻屋の二階だが、長屋の衆がパーッとやろう!と言って、和やかな雰囲気になる。そして、三々五々去っていった後、お徳も亀吉も鶴松も、そしてペロまでもが「じゃあ、またね!」と帰っていくという終わり方。

一之輔師匠は前々から「子別れ」に関して、罪深い熊さんをそんな簡単に許してよいのか、疑問に思っていたという。間を置いた方が家族が幸せになれるのではないかと。だから、「子別れたまま、ですね」とエンディングトークで話していたのがとても印象に残った。

「芝浜」春風亭一之輔→三遊亭天どん

一之輔師匠が「よそう、また夢になるといけない」まで、15分程度で手短に「芝浜」全編を演じ、「でも、そんなに簡単に酒をやめて、仕事に打ち込むことができるでしょうか?何か大きな力が陰で動いているのではないか?その真実は、この後…」と言って、天どん師匠にバトンを渡した。

僕の読解力が低いためか、天どん師匠の創作部分はよく理解できなかった。確かなのは、魚勝を更生するために、大家が①財布を拾わせる②酒をやめさせる③働きに行かせるという流れを仕組んだという設定になっていること。芝の浜で50両の財布を拾う前日に、大家が魚勝に「酒をたらふく飲んじゃえ」とけしかけた、芝に仕入れにいく金を女房のおみつに大家が貸した、そして芝の浜に50両の入った革財布を大家が仕込んだ…。

それで3年後に立派に更生した魚勝が大晦日に女房のおみつに酒を勧められ、飲もうとするが、「よそう」と言う…そういうシナリオを大家は描いたのだが、大金が入るとおみつや勝五郎が酒を飲んでしまったり、夫婦で庖丁を持って喧嘩したりと上手く運ばず、その度に芝の浜へ行く前日にタイムリープしてしまう…。3年で更生させる作戦を、もう482回繰り返しているという、そういうバカバカしさで笑わせるという構成?なのだろうか。

天どん師匠の意図するところが理解できないまま終わってしまったのが残念だ。